アプローチ8

あれからほぼ毎日

手洗い場で会えたら

何かしら飲み物を買っている。


hanaさんも

俺を見つけると

「あっ!」と笑顔で駆け寄ってきてくれるように。


手懐けた……と言えば聞こえが悪いが

そう言っても過言ではない。


見えない尻尾が見えそうだ。


駆け寄ってきてくれるあの瞬間に

たまらなく幸福感を得られる。


「今日は何にしますか?」

「ミルクティーで!」


これも刷り込みの1つなのか

俺は俺で

会社以外でも

このミルクティーを見ると

hanaさんを思い浮かべる日々。


相当やられてるな。俺。



「ありがとうございます♪」

「いえいえー」


なんてことない、みたいな返事しながら

今日のミッションを無事に終えて

幸福感に浸りつつ現場に戻る。


工場長が待っていて

「おう!」と手をあげられた。


「お疲れ様です…どうしました?」

何かミスしたのかとビクついていると


「オフィスラブはやめとけよ~」と

ニヤニヤしている。


「はっ…!え?お、オフィス…」

らぶ?

誰が?俺が?


「こないだのアレは何やー?

俺が飲み物買ってんのに

まーーーた渡してたやろ?hanaちゃんに」


あ。

見られてた。


「あー…ははは。

いや、手洗い場で会ったら買うルールなんで」

俺が一方的に作ったルールだけど。


「ははは!何やそれ!

まぁまぁまぁ…」

なだめるように肩を叩かれ、

「いいねぇ。オフィスラブー♪」


鼻歌交じりにどこかへ行ってしまった。


ほっ。

よかった…。


ん?

よかった?

何が??


バレなくて?

ごまかせて?


どっちにしろ


それって


俺が


hanaさんのこと





好きだってことだ。

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