アプローチ6
毎日せっせとスイーツを買っては
会えたら渡して、会えなかったら自分で食べる。
プリンばっかりも飽きるだろうから
たまにわらび餅とか、ケーキにした。
どれも喜んでくれるし、
夕方会えたときには、
「美味しかったです!」って
律儀にお礼まで言ってくれて。
そんな事言われたら、またすぐ買ってしまう。
男は単純だ。
コンビニに寄れなかった日には
自販機付近で少しウロついてみる。
hanaさんに会いたくて
会えたら何か買ってあげたくて。
ほんとに毎日何かしら助けてもらっている。
「ありがとうございます!
また何か買っておきます!」
「え!そんなのいいですよー!」
そんなやりとりが定着してきたある日。
いつものように
「また何か買っておきます!」と言うと
「いや、いいです!ほんとに!
仕事だし、いらないですよ!」と
いつもと違い、少し困った感じで断られた。
あれ?
「…いらないっすか…?」
「はい!大丈夫です!」
この大丈夫は不要な方の 大丈夫です。 だ。
突然絶たれたアプローチ手段。
何がいけなかったんだろう。
やりすぎたかな。
嫌われたかな…。
もうコンビニに寄る事も、
スイーツを選ぶ事も、
あのしーっ を見ることも、
できないのか…。
腑抜けの重い体で、仕事をする。
そして次の日。
ミスだらけで工場長にめちゃくちゃ叱られた。
「お前!これどうなってんねん!
ちゃんと確認しろよ!」
「すみません…」
「1回設計行って、確認してこい!」
「…はい、すみません。」
設計か…
hanaさん、いるかな…
「失礼します…」
「お疲れ様ですー!…え!どうしました?!」
心配そうに駆け寄ってくるhanaさん。
ついこの前まで、そうやって
ついてきてくれていたのに…。
「ミス連発して、やらかしました…」
「あぁ、そうなんですね…。
大丈夫ですか?何かありました?」
その表情はもう 心配です と書いてあるような。
ふっ。
可愛らしい人だな。
「いや、ちょっと落ち込むことがあったんですけど、もう大丈夫です。ありがとうございます。」
「え???大丈夫なんですか?」
きょとん。
「はい、大丈夫です。」
ミスした部品の確認をしてもらって、
お礼を言って戻ろうとしたとき
「あ、待って」
hanaさんがデスクから何か取り出す。
「はい!元気出してくださいね!」
3つのチョコレート。
「あ、こんなに?」
「はい!頑張ってるからご褒美です。
っていうのは建前で、最近太っちゃって。えへへ。
食べてくれると助かります!」
あ、そうか。
だから…
「あざす!いただきます!」
「ふふ。いつもと逆ですね」
小声でこっそり俺にだけ。
しーっと口に指をあてて。
いたずらっぽく笑う。
決して嫌われたわけではないと
確信できた。
太ったから、甘いものいらないって
そーゆーとこも、可愛い。
アゲて落として、またアゲて。
次は何をしてあげようか。
彼女の笑顔を見たいがために
それだけを考える日々が
しあわせだ。
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