アプローチ5

あの休日出勤の日から、

俺はhanaさんに喜んでもらいたくて

コンビニスイーツを色々買うようになった。


普段から甘いものは好きで食べるけど

じっくり選んで買うわけではないし

レジに行く前に通って

美味そうだと手に取っていただけ。


それがどうだ。


帰りにコンビニに寄り、

スイーツコーナーに一直線。


一通り品定めして、

翌日に備える。


朝。

出勤前にコンビニに寄り

これまたスイーツコーナーに一直線。


新発売!と書かれていたら手に取って

商品名をじっくり見る。

「ふわふわクリームのイチゴショート」

「ミルクたっぷりシュークリーム」

「とろーりクリームのたまごプリン」


ほぅ…今はクリームが推しなのか。


どれも好きそうだけど、今日はこれにするか。


そして冷蔵庫に置いておく。


休憩のたびに

hanaさんがいないか確認する。


そしてたまに会えたら、

「お疲れ様です!」


「お疲れ様ですー」


「ちょっといいっすか?」


「なんだろなー?」

にこにこついてくる。


「これよかったら」


「え!いつもありがとうございます!」

ほっ。


「いえ、こちらこそ

本当にいつもありがとうございます」


「あの、1つだけなんで…」


「あ、これですね?」

しーっ。

そうそう。


「hanaさんだけなんで」


「えー嬉しい。ありがとうございます!」

手を頬に当てて、にこにこしてる。

よかった。

今日も喜んでくれた。



本当は、1つしかないから内緒とか

そんなのどうでもよくて

ただ、 しーっ の仕草が見たいだけだったりする。


そして、

hanaさんだけなんで って

もう言わなくても分かってることをあえて言うのも

なんかもう好きなんだろうなって

自分でも気づいている。



甘いものアプローチなんて

姑息な手段だとは思うけど


連絡先すら知らないオレに

できることなんて限られていて


一言でも多く話したいけど

キッカケなしでは話せない臆病者だから。




そして今日も仕事を終えると

コンビニに向かうのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る