アプローチ4

土曜日は休日出勤日なので

基本的にみんな休む。


ただ、俺は仕事が遅れているので

出勤せざるをえなくて

憂鬱な朝。


自販機前で一服してから…。

自販機で何買うかなー…。


ぼーっとしてちっとも頭が働かない。


「おはようございまーす」


!?


「あっ、おはようございます…

今日…土曜日っすよ?」


「ふふ。たまには土曜日も出てますよ?」

hanaさん。

朝からいい笑顔だ。


「あ、そーだったんですね…すんません…」

余計な一言だったか…?


「ほんとはみんな出たくないですよねっ!」

いたずらっぽく笑って、

前を横切っていく。


キラリとキレイな髪がなびいて

柔らかな香りがした。


「…あっ」

今日昼飯後に食べようと買っておいた

アレを渡そうかな。


いや、急に渡すのも不自然か?

こないだのお礼とでも言えばいいか…?



しばらくして、もうすぐ昼休みというときに

自販機前でhanaさんを見かけた。


チャンス!!!


咳払いをしてから、駆け寄る。

「お疲れ様です!」


「あ、お疲れ様ですー」


「なんか飲みますか?」


「え?いいんですか?」


「はい、どうぞ!」

100円投入。


「わーい!ありがとうございますー!」


たかが100円でこんなに嬉しそうにして…

めちゃくちゃいい子だな。


「あ、ちょっと待ってて…」

急いで冷蔵庫から、アレを取り出す。


「これ、よかったら。」


「え!なんですか?…わぁ!プリン…」


「こないだのお礼です。甘いの好きですよね…?」


「はい!めっちゃ好きです!」

えぇ…知ってます。

そして、もう1回聞きたい…そのフレーズ。



「あのっ、1つしかないんで、

hanaさんだけなんで…」


指で しーっ とすると、くすっと笑って


「わかりました!しーっですね?」

マネしてくれた。

可愛い…。


「いただきます!ありがとうございます!」

めちゃくちゃ笑顔。


「いえ、いつもありがとうございます」




嫌々だった休日出勤も

悪くないな。


新たな楽しみを見つけた瞬間だった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る