アプローチ3
異動になってから1週間。
自分でもびっくりするくらい覚えられない。
これは、やばい。
加工部品の品番の確認がどうしても苦手だ。
品番と形状が一致しない。
なんでだ?
図面を見ても、品番は合ってるのに
形状は全然違う。
「…あっれ…ぇ…?」
もう絶望的な声しか出ない。
胃が痛いし、不安しかない。
…迷ったけど、1人でやってても解決しない。
「失礼しまー…す」
訪れた先は設計部。
hanaさんがすぐに気付いて駆け寄ってくれる。
「お疲れ様です!どうされました?」
「これなんすけど…」
差し出した部品と図面を受け取る。
「ん?坂下さん?これ、違いますよね?」
「そーなんすよ…」
「あ、いえ。この部品の図面はこれじゃないです」
「え?でも品番…」
「品番は同じですけど、違う機種なんです」
「え?」
「ちょっと待っててくださいね」
くるりと振り返り、
奥から違う図面を取り出してコピーしてくれる。
「はい!こっちですね!」
にっこり。
「あ、ほんまや…」
「品番だけだと分かりにくいので、
機種コードで参照してくださいね。
これ持ってます?」
一覧表を渡される。
「いや、持ってないです…」
「持ってなかったんですか!
それは…大変だったでしょう?」
ええ。ほんと。大変すぎました。
「ありがとうございます…すいません」
「いえいえ!お役に立ててよかったです!」
にっこり。
こんな初歩的なことを聞いても
この笑顔で教えてもらえて
めちゃくちゃ救われる。
あぁ、島さんの言ってた意味、
こーゆーことだったのか…。
「いやほんま。hanaさんすごいな…」
心から声が漏れた。
「えぇ?急にどうしたんですか?」
笑ってる。
「いや、助かりました!ありがとうございます!」
「いつでも来てね」
にこっと笑ってヒラヒラと手を振る。
そーゆーオンオフが絶妙なところも。
「いや、ほんとにすごい…」
初めの印象は疑わしいものだったのに
いつのまにかまんまと
hanaさんのことを頼りにしている自分がいた。
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