アプローチ2
GWおわり。
連休明けの初日はもうダルくて仕方なかったが
なぜか仕事に行くのが楽しみだった。
今日は彼女に会えるかな。話せるかな。
婚外恋愛なんて大それたものではないけど
日々の楽しみのひとつになっているようだ。
口下手な俺は面と向かって話すのが苦手だ。
特にキラキラしている女性は
俺のような男に話しかけられたくないだろうと
こちらから避けるクセのようなものがついている。
その様子に気付いてなのかどうなのか
俺を見下すような視線を感じることも多い中、
hanaさんからは微塵もそんな様子は感じられない。
社内の誰に対してもフレンドリーで笑顔。
かつ、頼み事をしても丁寧に対応してくれて
こちらのミスがあったとしても嫌な顔をしない。
会社に着くと掲示板の前に数人が集まっている。
「おざーーす」
「あ!おざーーす!異動っすよ!」
「ん?誰が?」
掲示板には人事異動が貼りだされていて
そこには俺の名前があった。
「…え…まじか…」
今までは出荷部門だったのに
移動先は加工部門。
俺にできるわけないだろ…。
絶望感に打ちのめされた。
しかも本日付。
どーゆー采配だよ。
異動が命ぜられたらまず、事務所へ行く。
それが決まりらしく、重い足取りで
事務所へあがる。
「失礼します…」
部長と課長が待っていて、
今日の流れと明日からの職務内容について
指示された。
「期待してるからね」
席を立つと同時に笑顔で発せられた言葉に
押しつぶされそうな気持ちになる。
あぁ、胃が痛い。
昼休み、コーヒーを買いに自販機に向かうと
hanaさんがいた。
「お疲れ様です」
「お疲れ様です。異動ですね?」
今日もにっこり
「そーっすよ…できるかな…」
「加工部門ですもんね。
うちの部とも関わり多くなるので
できることがあれば手助けしますね」
「あ、ありがとうございます…」
「ふふ。異動って不安ですもんね」
「hanaさんは異動あったんですか?」
「はい!事務所から設計になりましたよ」
「あ、元々は事務所だったんですね」
「そうです。お局と折り合い悪くなっちゃったから」
「え?そんな理由で?」
「表向きは違いましたけどね。
でも自分でもそこは間違いなくて。
あれ以上一緒に仕事はできなかったですねぇ…」
女同士のいざこざ、か。
恐ろしい。
「でも、私元々設計に携わりたくてCAD始めたから、寧ろ異動は嬉しかったんですよ!
事務所にいても現場の人達の悪い話しか聞かないし、なんか現場を蔑んでて好きじゃなかったから。実際設計に異動してから、現場の人達ほんとに優しくて、たくさん助けてもらったんで!」
その瞳に偽りはなく、
その口調から現場への尊敬すら感じられる。
「hanaさんにそんな風に言ってもらえたら、
現場もそりゃ頑張りますよね。
上手いっすね…」
そりゃモテるわ。
「上手いってー!
そんな風に受け取らないでくださいよー」
「加工でも一緒に頑張りましょうね!」
可愛らしくガッツポーズをして
戻っていった。
「一緒に…ねぇ…」
hanaさんと話すと、
なんだか励まされる。
癒される。
不思議な人だな。ほんと。
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