アプローチ1

復帰初日とは思えないほど、

あちこちでhanaさんの名前が聞こえる。


なぜ、事務所の1人の女性が復帰しただけで

離れた現場に活気が出るんだろう。


「あー!hanaさんにこれ頼も!」

「こっちのやり方も確認しとこか」

「ちょっと内線するわ」


現場とはいえ、事務所との連携は不可欠だが

どうやらhanaさんが主にその橋渡しになっているらしい。


「坂下!これhanaさんにお願いしてきて」

「え?俺っすか?」

「渡せば分かると思うから」

「わかりましたー…」


渋々事務所に向かう前にトイレでも行くか。


ガチャ


「あ、お疲れ様です」

あ、hanaさん。


「お疲れ様です、あのー…」

書類を両手で差し出すと受け取ってくれて


「誰かに渡すんですか?」


「あ、いえ!hanaさんに!」

「あ!私?笑」

ふふふと笑っている。


「んーと…あ!出荷ですか?」

パッと顔をあげて目が合う。


ドキ。


「ん?すいません、渡したら分かると聞いたんで」

「えー、わからないんですけど!」

クスクス笑っている。


なんとなく、わかる。

この人と話していると、心地いいのだ。

これは…好かれるだろうな。


「また確認して出直します!」

「え!そんなのいいですよ?

わざわざ持ってきてくれたのに。

こちらから確認しておきますね」


この人は気遣いがすごい。

相手を不快にさせない振る舞いと言葉選び。

にこやかな表情。


そういえば、育休明けなんだよな。


「hanaさんのお子さんて、女の子ですか?」


「男の子と女の子ですよ」


「え?!2人もいるんですか?」


「はい!男の子4歳と女の子6ヶ月です」


「わー…大変っすね」


「そうですねーもう大変ですよ~」

でもその表情からは、大変でツライというより

大変だけど楽しいとか、幸せとか、

そーゆー感じがする。


幸せなんだろうな。


「仕事大変ですけど、頑張ってください!」

「ありがとうございます」


にっこり会釈。


応援したくなるってこーゆーこと。

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