第5話 倉庫
由美子たちが通っていた白南中学校は、城山の跡に建てられたこともあり、その地形から辺りには民家はない。さらに学校のさらに上部へ行くと昔から有名な心霊スポットが点在し、自殺の名所という噂も絶えなかった。
日中は明るく雰囲気の良い学校も部活動が終わり、体育館の灯が消える頃には大人でも怖くなるような静寂と暗さをまとう山に変貌する。そのためなのだろうか、先生たちも部活動が終わると同時に残業も切り上げて早々に帰ってしまうのだ。そして夜7時過ぎには人影すらない不気味なエリアになる。
ある秋の日の夜、一部の生徒しか知らない秘密のドアをサトシは音もなく、開けた。このドアは校舎に併設している小さなポンプ室の中にあった。普段は用務員のおじさんくらいしか立ち入らないし、プールを使う夏場しか動かないこともあり、まさか鍵なしで校舎に入れる秘密のドアがあるとは思いもしないだろう。
サトシは入学当時に一人で校内を探検していた時にポンプ室に入り、何気なく開けたドアが一階の階段の踊り場に繋がっているのを偶然発見した。その時は無邪気に喜んでクラスメイトにも話したが、誰も関心を示さなかったため、この秘密のドアを実際に使う生徒はサトシ以外にいなかった。もちろんその秘密を知ったところで、不気味な夜の城山まで登り、ましてや校舎内に忍び込む猛者はそうはいないだろう。
サトシはポンプ室に入り懐中電灯を点けて秘密のドアを探した。ドアノブに手をかけ、懐中電灯を消してからゆっくりとドアを開けた。そして階段の踊り場から一旦廊下に出て辺りを見渡した。そして人の気配がないことを確認すると、ドアに戻って、手を差し出して囁いた。
「よし、シュウ、大丈夫」
シュウはサトシの右手を両手で握り、勢いよく校舎に入った。その勢いでサトシは倒れて二人は抱き合う形になった。覆いかぶさったシュウはおでこをコツンとしてから、キスをした。長い長いキスだった。しばらく唇は離れなかった。もう止まらなかった。舌を絡めてくるシュウ、サトシの下半身は燃えるように熱くなっていた。
夜の校舎の床は冷たい。二人は唇を重ねたまま立ち上がり、美術室へと向かった。もう何度も来ている二人は慣れたもので、真っ暗な校舎を迷うことなく進んだ。そして美術室に入ると、その奥にある倉庫の前でシュウはいつものように懐中電灯を点けた。サトシは胸のポッケから銀色の小さな鍵を取り出して、なるべく音を立てないようにして、鍵を開けた。と同時に油絵の具特有のオイルの匂いがした。この匂いを嗅ぐと、サトシは思い出す。
この鍵は美術部の女性部長だったY先輩から預かっていたものだった。サトシはこのYから入部したての中学一年の頃から性の手ほどきを受けていた。その場所こそ、サトシとシュウが忍び込んだ倉庫だった。窓のない倉庫は内側からの鍵が掛けられるようになっており、また、鍵を持っているのは顧問の先生か部長のYだけであった。
「今日も、する?」
Yはキャンバスに風景画の下書きをしているサトシの横に座り、誰にも見られていないのを確認してから耳元でささやく。サトシが頷くと、Yは部員に聞こえるように「部室の掃除、手伝って」と指示をしてサトシを連れ出す。鍵を開け、油絵の具のオイルの匂いが充満する倉庫に入り、ドアを閉めてから、内側からカチャリ…と鍵をかける。それがYの性欲のスタートスイッチだ。
いつものように上着を脱ぎ、そして白いブラウスの前ボタンを外すと、いきなり胸がはだけて見える。Yはサトシを誘う時、事前にどこかでブラジャーを外してくるらしい。まだ13歳のサトシは何回見ても慣れずにそれだけで勃ってしまう。
そして、背もたれのないモデル用の椅子にサトシを座らせると、決して大きいとは言えない乳房を吸えと言わんばかりに差し出し、サトシの顔に無言で近づける。サトシはズボンを下ろさずに、チャックに手を掛けてすでに大きく反り立った包茎のモノだけを外に出す。若いだけにすぐに精液が溢れてきてパンツを汚してしまうのを避けるためだ。
同時にYもスカートの中に手をやり、ブルーのパンティを脱ぐ。と言っても片足だけ外すのだ。そしてサトシに乳首を吸われながら、自分の割れ目を弄る。
「上手、上手よ」
やがて吸われながら自分の指でイキ果てると、そのクリトリスを擦っていた指でサトシの猛る棒をシゴくのだ。その指はびしょびしょで、右の掌、そして肘までもが濡れている。Yはいつも果てる時に
「くぅ〜」
と呻きながら、小水をプシュッと漏らしてしまう。Yの割れ目から溢れ出た愛液と透明な小水にまみれた右手でサトシの棒を握るのだ。
「ふふ」
Yはサトシの真正面にしゃがみ、満足した顔でサトシの目を見つめながら、右手で包茎の皮を優しく剥いてゆく。
「先輩…」
お互いのいやらしい透明な液で棒全体を濡らしながら、びゅるっ、びゅるっと音を立てながら右手を上下させて、同じリズムでシゴく。数回往復してもらうだけですぐに白濁した液が勢いよく飛び出る。Yは慣れたように用意していたティッシュで受け止めた。サトシはいつも背もたれがあれば良いのにと思いながらのけぞって果てる。
二人がイキ果てるまで、全てが終わるまで5分もかからないから部員たちにも不審がられない。さすがに中学生ということもあり、二人は最後までしたことがなかった。コンドームも今ほど簡単に買える時代ではなかったし、サトシにもその勇気はなかった。いつもサトシがイッた後にティッシュで優しく拭いてくれるYだが、不思議とキスはしてくれなかった。
サトシはそれが不満だった。もう一つ不満だったのが、Yは先に倉庫から出ていってしまうことだ。
「鍵、よろしくね」
サトシはいつも誰か入ってこないか心配になりながら薄暗い倉庫でYが漏らした床を雑巾で拭き、ティッシュをズボンのポッケに入れて鍵を閉めてトイレに向かう。自分の精液が染み込んだティッシュを便器に捨てて証拠隠滅を図る。マグマのような性欲はスッキリするが、雑巾を一人トイレで洗うのは何だか情けない気持ちになる。
お疲れさん、と先輩部員が声を掛けてくれる。サトシは一瞬ビクッとするが、油絵の具などで見た目にも汚れた雑巾だけにまさか部長のYの小水が染み込んでいるとは思わないだろう。
その後、Yが美術部を引退する夏まで性のレッスンは続いた。サトシはYが卒業した2年の春に美術部を辞めて帰宅部となった。ただ、倉庫の鍵はサトシがYから預かったままだった。一度、鍵の所在について騒ぎとなったようだったが、サトシは黙っていた。Yもサトシに鍵を預けていることは誰にも話していなかったようだ。
鍵は一年ほど自宅の机の引き出しに入れていたが、シュウとの密会のためにサトシは持ち歩くようになっていた。
続く
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