残響の雨

七星北斗(化物)

プロローグ 音楽性の違い

「もっと、俺の音を聞いてくれ」


 全身の血が滾る。


 止まない雨、観客の熱は最高潮。


「もっとだ。もっと熱を、最高を俺に感じさせてくれ」


 雨音、声、楽器の音。止まない歓声。


 演奏が終わると、雨は止んでいた。


 しかし、そこには残響が残っていた。


 今日、僕はそんな夢を見た。


 心臓が激しく脈打ち、手汗が酷かった。


 音楽は好きだ。しかし、僕にはそんな才能はない。一応軽音部に入っているが、ほぼ幽霊部員だ。


 友人の斗夢且巣(とむしゃじょう)。通称、トムソースは教室に入り、おはようと挨拶をする。


 そして僕が座る席の目の前までくると、グラビア雑誌を広げる。


 女子から白い目で見られているが、気にした様子もない。


「トムソース、いい加減僕の席に、グラビア雑誌を広げるのは止めてくれ」


「んー?嬉しいだろ?」


「嬉しくない」


「そうか?まあ、むっつり紳士のお前が、軽音部になかなか来てくれないから、俺は暇なんだよ」


「誰がむっつりだ。それに軽音部は名前だけで、音楽活動をなにもしていないじゃないか」


「だから暇なんだよ~。俺だってたまにはギターを弾きたいけど、誰も相手をしてくれなくてな」


「だったら、吹奏楽部にでも入部すればいいだろ?お前はギターよりも、バイオリンの方が上手いんだから」


「俺はバイオリンよりも、ギターの方が好きなんだ」


「どうせモテたいからだろ」


 トムソースは苦笑しながら、言葉を紡いだ。


「バレたか」


「バレバレのバレンタインデーだ」


 トムソースは、クラスの中で、息の合う数少ない友人だ。


 二人は、そんな会話の掛け合いに、笑いが込み上げると、声をあげて笑った。


 ならばと、トムソースは提案を切り出す。


「だったらさ、学園祭でバンド組んで、天下取らねーか?」


 その提案への答えは言うまでもなく、僕の答えはノーだった。

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残響の雨 七星北斗(化物) @sitiseihokuto

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