第三章 [悪の華]


テキサス大学ダラス校


 リチャードソン市に本部を置く州立大学である。世界的な半導体開発や製造、研究機関の一部として設立され、博士号を持つ大学院生のみであったが、学士取得学生の増加に伴い学生寮が設備された為、今現在新しい設備が立ち並ぶ。

メインキャンパスは広大な敷地面積を誇り、敷地内には洒落た「自然科学工学研究室ビル」、その手前にオアシス噴水が続き、その周りの両端には針葉樹の木々が植えられている。



 屋外の会場に二十名ほどの学生が集まっていた。


大きな白いテントが張られ、下地には青のグランドシートが敷かれていた。

折り畳みイスに学生たちは座り、足元には通学用の少し大き目なカバンが置かれていた。



「今から三十分程、休憩時間と致します。午後からは講演と致します。開始時刻は十四時三十分からです。尚、午後の講演は自由参加となりますので、

 宜しくお願いいたします。」と年齢が三十代後半の女性教授は言った。


その女性教授は、髪型がポニーテール。黒のテーラードジャケット、白のブラウスにペンシルスカートレースを着こんでいた。


「ヘクター教授、午後の講演も受けてもいいですか?」


「勿論ですとも!」教授はニコやかに女子生徒の髪を撫でた。髪を撫でられた女子生徒は嬉しそうに、他の学生達に自慢している様子であった。



「ヘクター教授。」と青いキャップ帽を被った年齢が二十代後半の男が呼び止めた。


「間もなく幼稚園に着くとの連絡が入りました。」二十代後半の男が言った。


「そう。こちらから連絡するまでは待機と伝えなさい。」


「分かりました。」


「あ、ザビーン君。テントの撤去とスクリーンの準備をスタッフに言っておいて。」


「分かりました。」 




アーリントン・エレメンタリースクール



 幼稚園には歴史的標識が掲げてあった。設立年月日や改修工事を行った年月日、公共事業促進局(WPA)の資金援助、施設の追加、初代の創立者、など


 真正面から、その建物を見ると、横長で白い外壁と青い屋根。とても大きな窓が、建物の中央から左右の外壁に三つずつ配置している。

建物の中央は奥行きに窪んでおり、その箇所に正面玄関のドアがある。中央の窪んだ箇所の高さが三メートルと仮定すれば、平均的な階高だと思われた。

建物の中央の窪んでいない建物上部にはアーリントン・エレメンタリースクールと刻まれていた。


今までスクールバスが通ってきた道が賑やかだったのに対し、一転して、静寂な雰囲気へと変わった。


「け!嵐の前の静けさって感じだな。」体格が痩せ型の男が言った。


「教授からの伝言だ。連絡するまで待機と。」体格が太っている男が言った。


「分かった。」黒のパーカーの男がカーテン越しから、チラリと外の様子を伺う。


「気にいらねーな。」黒のパーカーの男が言った。


「どうした?」体格が太っている男が言った。



「警察どころか、猫の子一匹いない様子だ。」黒のパーカーの男が言って運転手に近寄った。


「学校に電話しろ。」MP5を運転手に突き付けた。

「早く掛けろ!」


運転手は携帯から学校へ電話をする。


<お客様がお掛けになった電話番号は、お客様のお申し出により現在おつなぎできません。>


「あわわわ。」運転手は口をパクつかせた。


「貸せ!」運転手から携帯を奪った黒のパーカーの男は携帯を耳にあてた。


<お客様がお掛けになった電話番号は、お客様のお申し出により、、、。>


「ふざけやがって!」運転手の携帯をバス床に投げつけた。


<お客様がお掛けになった電話番号は、お客様のお申し出により、、、。>



「まるでゴーストタウンではないか。」体格が太っている男が言った。


「バスから外に出て、学校を覗いて見るか?」体格が痩せ型の男が言った。


「外に出るな!罠だ。FBIの罠かもしれない。」黒のパーカーの男は言った。



バートンハウス

 

 高級住宅の感じがする水色の屋根の白い建物はモーテルであった。駐車場にジャガー・XJ220を止めたナリサは「Jaguar」と刻印された後部トランクから

ライフルケースを取り出した。勿論、外部からライフルケースを見ても、そう見えない工夫がされていた。


 モーテルに入ったナリサはホテルフロントの呼び鈴を鳴らす。内装はとても綺麗で茶色を主体とした温かみさえ感じた。フロントマンが来た。


「カガミ・ナリサ様ですね?お部屋は二階の一番南側、S201号室となっています。」フロントマンが言った。


「一泊分、前払いしておくわ。チップも取っておいて。」ナリサはフロントマンに渡す。


「あ、そのケース?」フロントマンは言った。


「ギターを仕舞ってるの。勿論、ヘッドホンを付けて練習するので安心して。」ナリサはニッコリしながら言った。


「あ、ごゆっくりと、おつろぎ下さい。」フロントマンが笑った。



S201号室に入ったナリサは、ダブルベットにライフルケースを寝かせて携帯に電話する。



<ランディだ。>

「バートンハウスに居るわ。一番南側の部屋、S201号室からスクールバスはどの方角?」



<四時の方角だ。>

 ナリサはライフルケースから距離測定器を取り出し、窓の内側からスクールバスを探す。



<ノースセンターストリートにスクールバスが停車しているはずだ。>

「確認したわ。スクールバスの正面から捉えた。」



「ちょっと待ってて。」ナリサは”Do not Disturb”のプレートを外側のドアノブにかけて、ドアロックをして、ライフルケースからSR-25を取り出した。



 浴室を覗くと、珪藻土タイルのバスマットが敷いてあった。


 耐熱テーブルマットが敷いているテーブルスタンドを窓際に移動させ、更に浴室の珪藻土タイルのバスマットを耐熱テーブルマットの上に敷き、

その上にSR-25を置いた。


 窓の内側にSR-25の銃口がくるように調整する。弾丸を発射したときの硝煙と熱によって、屋外から発見されるのを防ぐ為であった。

後は銃声の問題が残っているのだが・・。その時は「ヘッドホンが抜けてリズムマシンの音が漏れた。」と誤魔化すつもりだ。


 距離測定器でスクールバスまでの距離を測る。「え?二百十五メートルじゃん。」SR-25は五百メートルに零調整されてるので、ライフルスコープのエレベーションノブのキャップを外す。手持ちのコインを使って一目盛り1/4ダイアルを左へカチカチ合わせる。二百メートル先では1.5インチなのでダイアル数は六クリック。


 本当は試射するほうが良かったのだが、バレルを少しでも傷めたくなかったから。



<もしもし?>ランディ捜査官の声が聞こえた。

「準備OKよ。」

<少し待ってくれないか?>ランディ捜査官が言った。

「・・・。」



「何かトラブルでも?」

<スクールバスの運転手から学校に連絡があった。学校側で着信拒否を設定している。>



「その回線はまだ使えるの?」

<恐らくな。運転手も子供達も限界に達していると予測される。>



「それね。」

<ん?>ランディ捜査官は聞き返した。



「決行時刻は、、十六時ジャストで。」

<分かった。>




テキサス大学ダラス校


 学生達から一斉に声援と口笛が沸き起こる。

 モハメド・ヘクター教授が壇上に上がった。


 「最初に御免なさいね。私の方から午後の講演開始時刻を、十四時三十分と言っときながら、十五時になってしまって。

それでもこうしてたくさんの学生達が参加してくれて。とても嬉しい。午後からは堅苦しい授業ではなく、アバウトで行きましょう!」


 会場は白熱した声援に包まれる。


 「私からのお願いです。携帯等の使用はご遠慮ください。」


 学生達は笑いに包まれた。


 「それから白いテントを取っ払いました!これには理由があって・・。」


 学生達は固唾を飲んだ。


 「私と、ここに居る皆様とマジックアワーを見るためなんです!」


学生達から一斉に声援と口笛が沸き起こった。


「教授。」壇上裏からザビーンが声を掛けた。


「あ、、ちょっと待ってて下さい。」ヘクター教授が壇上から降りて裏に回る。



「どうしたの?」

「そろそろリセットのGOサインを。」


「もう少し日没まで待ちなさい。マジックアワーを見るまで。最高のクライマックスと忘我の境が待ってるの。」


「分かりました。」



「御免なさい、皆様。お待たせしちゃって。ザビーン君にお買い物頼んだら、間違えたみたいで!」


モハメド・ヘクター教授が頭を下げた。


 「構わないですよ教授!」

 「ザビーンとはどういった関係なんですか?」


 学生達はモハメド・ヘクター教授に質問した。


 「ザビーン君は私の専属運転手なんです。」モハメド・ヘクター教授は笑いながら言った。

 

 それから背負ったキャメル色の多目的リュックを下し、ニッコリ微笑みながら話始めた。


「今から、私の発明品をみんなにお見せしちゃいます!」


 会場の学生たちは興味津々にその様子を食い入るように見る。

 

 モハメド・ヘクター教授は、キャメル色の約 幅二十四(底部分二十九)×高さ三十六×奥行き約十五(cm)の多目的リュックから圧力鍋を取り出す。


「教授の手料理っすか?」会場は大爆笑した。


「なかなか惜しいところをついてますね!」モハメド・ヘクター教授は圧力鍋の蓋を開けて、スマホからスクリーンに写るように手元を動かしながら説明した。


「この圧力鍋には直径二十センチ、高さ三十センチの円柱形が二個入ってます。」

「円柱形二個には、銀白色の金属が入ってます。」


「先生の手作りの発明品とか?」


「正解です!花火の実験っと思って頂ければいいです。」

「これを携帯電話と直結。圧力鍋に入れ蓋を閉めます。」

 

 会場は、いきなり重い空気に包まれた。そして一斉にどよめく。


 「あら、何かわかったかしら?でも静かにして下さい!講義の途中です!」モハメド・ヘクター教授は、右手の人差し指を口元に添える。


学生の一人が携帯を取り出し「911」に連絡しようとした。


 「さっき言わなかったかしら?携帯等の使用禁止を。」

 「言う事聞かないと誤爆するわよ。銀白色の金属は放射性物質なのだから!」

 

 モハメド・ヘクター教授は微笑みながら、そのいびつな「汚れた爆弾」にキスをする。そして右手を挙げた。何かの合図のようである。

 ザビーンと四名の学生に紛れていた仲間が教授を取り囲んだ。それはバリゲートのようだ。


会場はパニック寸前である。


「この五人は私の大事な教え子です。」

「そして私が携帯番号を掛けたら、このいびつな「爆弾」は爆発。どう?今日の素敵な講演会。」

「歴史に残る、最高の日になりそうよ!」

 

モハメド・ヘクター教授は満身の笑みを浮かべた。



バートンハウス


S201号室


ナリサは、風向きリアルタイムを客室内の電話から流す。


<十五時五十八分>ランディ捜査官の声が聞こえた。

「スクールバスの状況は?」


<変わりなしだ。>

ナリサはSR-25を取り出し、マガジンに五発弾丸を装填する。


”南の風二メートル”風向きリアルタイムから流れる。

「風力が向かい風二メートル。風が弾丸に与える影響はゼロ。」


<十五時五十九分>ランディ捜査官の声が聞こえた。


 ナリサは静かに息を吸い込み、ゆっくりと息を吐く。SR-25には二脚(ハイボット)に、レールハンドガードを介してる為、力が銃身に掛からず最高の精度を発揮する。


ライフルスコープの照準の中心にバスを捉える。勿論バスの正面からである。暗視装置 JGVS-V八をONにする。


暗視装置には第一世代から第三世代があり、その原理は可視光(星の光や月の明かり)によって、光電子増倍管を増幅させる。


その有効視認距離は星明かりで千五百メートル、月明かりで二千七百メートルとされ、ナリサが選択した第三世代の暗視装置「JGVS-V八」に於いては有効視認距離が二十五%増加している。


<決行、十秒前、九・・。>



アーリントン・エレメンタリースクール


スクールバス


「そろそろ教授からのGOサインがくるはずだ。」黒のパーカーの男が言った。


子供達は座席にうずくまり運転手は泣き崩れる。


”プルル”携帯が鳴る。


「な、、なんだこれは?」体格が太っている男が言った。


「どうしてこいつの携帯が鳴ってる?」体格が痩せ型の男が、バス床に投げつけられた運転手の携帯を拾い上げ耳にあてがう 


「もしもし?」体格が痩せ型の男が携帯に出た。


<お客様がお掛けになった電話番号は、お客様のお申し出により現在おつなぎできません。>


「野郎!」体格が痩せ型の男が運転手に組みかかろうと後部座席に移動する。



ベネットは小さな手を合わせてお祈りした。


(きっと神様が助けてくれる!お母さんが守ってくれる!)


ビシッ!


 それは鈍い音であった。通常のタングステン鋼よりも更に貫通力を高めた弾丸は、バスの窓ガラスを割り一人のテロリストに命中する。


「え?」体格が痩せ型の男は胸のあたりを押さえた。何か赤いモノがベットリ手の平を覆う。


「へへ、やっぱり居たじゃねーかよ。腕の立つ奴が・・よ。」体格が痩せ型の男はバス床に倒れこんだ。


 一瞬、テロリスト達には何が起こったのか分からなかった。しかし横たわる体格が痩せ型の男と割れた窓ガラスを見て、黒のパーカーの男が叫んだ。


「伏せろ!狙撃だ!」


ビシッ!


 「やっぱり居たんだ、、取り柄の一つや二つ、、、。」呆然と立ちすくんだ体格が太っている男は、伏せる事無く体格が痩せ型の男の横に倒れこんだ。

 


---「あなたはどう動くかしら?爆弾に?それとも、人質の子供?」ナリサが呟く。

 ナリサが装備している「赤外線レーザーサイト」の光源は肉眼で捉える事が出来ない。---


 黒のパーカーの男はベネットを身代わりの盾にしようと駆け寄る。


---「やっぱりね。」ナリサは引き金を絞った。---


ビシッ!

 

 銃口から発射された7.62x51(FMJ)NATO弾は、スクールバスの窓を貫通し黒のパーカーの男の口に命中する。

真っ直ぐに入角した弾頭は膨大なエネルギーを炸裂させ、凄まじい空洞現象を起こし、あらゆる生体組織を粉砕していく。

やがてその膨大な空圧によって、頭蓋骨は破裂し大きいクレーターを形成し、即死したのかも分からない状態で、黒のパーカーの男はバスの床に倒れた。


 スクールバスの運転手は両手で後部座席を覆うように子供達を守っていた。


---「よく頑張ったわね。あともう少しの辛抱よ。」スコープ越しで、その様子を見たナリサは微笑んだ。---





バートンハウス


S201号室


 「クリア。」ナリサはそう言って、SR-25をライフルケースに仕舞い部屋の後始末をする。


<ご苦労様、よくやってくれた。>ランディ捜査官の満足そうな声がした。


「通信終了。」ナリサは携帯を切り、S201号室を出た。


 パトカーや救急車のけたたましいサイレン音がモーテル内まで響く。


宿泊客の何人かも不安そうに携帯や他の宿泊客に何かを話し込んでいる様子であった。


「チェックアウト。」ナリサはフロントマンに言った。


「凄く激しかったですね。」

「え?」ナリサはフロントマンに聞き返した。


「リズムマシンのドラムの音ですよ。」


「あ、御免なさい。練習に夢中になって、ヘッドホンが外れていたことに気が付かなくて。」ナリサが言った。


「構いませんよ。またのご利用お待ちしています。」



 バートンハウスを出たナリサがXJ220に乗り込もうとしたとき、一台のヘリがホバリングしながら降下してきた。ヘリからランディ捜査官が降りナリサに近寄る。


 「任務は成功したようだな、お疲れ様。」


表面上は笑っているが、心から喜んでいるようには見えない。


ナリサのその予感は的中した。


 「緊急事態だ!」

 「テキサス大学ダラス校が、恐らく同じテロリスト達によって、占拠されてる模様だ!」


 「・・・・。」


 「詳しい話はヘリで。」ランディ捜査官はナリサをヘリに誘導した。



ハイジャックされたスクールバスに爆弾処理班の車が止まり、入念に爆弾を除去していく。


やがて子供たちが、そしてバスの運転手が警官数人に支えられ、バスから降りてきた。


 その様子を見守りながら、ナリサはSH-3 シーキングに乗り込んだ。


 SH-3 シーキングは双発哨戒ヘリコプターで、アメリカ海軍が対潜哨戒・対艦攻撃・捜索救難などの目的で運用してるが、場合によっては、兵員輸送・通信・要人輸送で採用されている。内装は衛星電話・ホワイトハウス直通電話などの装備が取り付けられている。


 機内に、ノートパソコンが置いてあり、そこに何人か映っていた。


 赤いネクタイで黒のスーツ姿の男が言った。


「私はFBI長官特別補佐官のウィリアム・シャーマン。そしてこちらが、エネルギー省(NEST)のトーマス・パーカー氏だ。」

「どうも。」


「・・・・。」


「先の任務は大統領を初め、大変感謝している。改めて礼を言う。さて次の問題が発生した。」

「テキサス大学ダラス校が、複数のテロリスト達によって占拠された。場所は屋外で学生十五名ほどが人質になっている。」


「・・・・。」


「これまでの情報によれば、その中のテロリストの主犯と思われる、モハメド・ヘクターが手製の”放射能兵器”を所持している。」

「起爆に携帯電話が使用されている・・との情報だ。」


トーマス・パーカーが話した。

「私から、この「汚れた爆弾」について説明しよう。」

「汚れた爆弾、即ち”放射能兵器”には原料となるウラン235かプルトニウム239が必要である。原子力発電所はウラン235かプルトニウム239に中性子を照射する事によって、核分裂を起こし、これが連鎖エネルギーの源となる訳だ。最もその連鎖反応を遮断させるのに水を張って、中性子の動きを抑制させる。」


ウィリアム・シャーマンが話した。

「今回の一連の事件は、核兵器に分類される爆弾ではなく、放射能物質を大気中に大量に飛散させる爆弾だ。しかし放射能物質には変わりがない為、

物質によっては”死の灰”を長期に渡って降らせる兵器も存在する。まあこれらは物質の核分裂によって誘発され、副産物となって核物質が生まれるため、脅威であることには代わりがない。」


「・・・・。」ナリサは黙って聞いていた。


「知っていると思うが、時限式だと起爆装置を炭酸ガスで凍らせ、除去することは可能だが。」ランディ捜査官が言った。


ウィリアム・シャーマンは言った。

「しかもテロリスト達は、主犯を守るかのように取り囲んでいる。そして十五名ほどの人質がその場に居合わせてる。」

「猶予も許されない今回の事件背景が漠然としているが、どうしてテキサス大学で学生を人質にする必要があったのか?」

「それは、半導体などテクノロジー分野に対抗しようとヘクター教授が”放射能兵器”を使う事によって、同等の対価を得ようとする反社会風刺が、この様な結果を招いたのではないのか?と私は推測している。」


「強硬手段に出た場合、主犯格のモハメド・ヘクターが倒れる前に起爆されればお仕舞いだ。」ウィリアム・シャーマンは付け加えた。



「でも完全に密着はしてないでしょ?」ナリサが尋ねる。


「勿論、そうだが。」とウィリアム・シャーマンは応えた。


「せいぜい、近寄れる距離は百メートルが限界、そこからの狙撃になるわね。」ナリサが言った。



「現場にはすでに、ジョーイ・ニコラス大尉を向かわせている。どうか引き受けてもらいたい。」



「わかったわ。」

「今から言うものを、大至急準備して。」

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