第18話 もう一つの呪い
「ごちそうさまでした」
「それも幸多さんの世界のあいさつですか?」
「そうだよ。いただきますと同じ意味さ」
俺はマリアから水の入ったコップをもらって一息つく。
「幸多さん。これから先に進むにあたり、一つお願いが」
「なんだ?」
「これからモンスターが出現するエリアに突入しますが、幸多さんは戦わないでもらえますか?」
「どうして?」
「その、申し上げにくいのですが……洞窟内で高威力の魔法を使われると、生き埋めになってしまうので」
「あー……」
そうだった。
俺の最低魔力行使量は999。つまり、魔法を使う際に放出される魔力の量が桁外れなのだ。
バスケットボール大の火球を飛ばすファイヤーボールの魔力量が10だとマリアはいった。つまり俺がファイヤーボールを撃とうとしたら、単純計算で大きさがざっと100倍になるので、その大きさはもはや太陽だ。
そんなもんを狭い洞窟内で使えばどうなるか。モンスターは倒せるだろうが魔法の威力が強すぎて洞窟が崩落しかねない。
つーか、
「俺まだグリモアの内容確認してなかった」
「せっかく休憩中なので、みてみましょうか」
「そうだな」
俺は腰のホルスターからグリモアを取り出し、適当にページを開いた。
相変わらず見慣れない文字なのに内容はわかるな。不思議なもんだ。
「おー、俺の名前が書いてある。身長、体重ってこれガチの個人情報じゃんか」
「はい。なので冒険者組合における身分証にもなるんです」
あっさりしてんなぁマリア。やっぱり異世界だ。俺がいた世界だったら個人情報の取り扱いは厳重にしなきゃいけないのに。
俺は感心しつつ、さらにページをめくった。
体力と魔力はさっきクリスが言った通り、9999というチートステータス。さらに、
「お、バッドステータスの蘭だ」
さっき冒険者組合で問題になった最低魔力行使量の記載がある。やっぱり999だ。
それともう一つ。クリスが言ってたバッドステータスが、
「魔力回復阻害か。マリア、これは何なんだ?」
「自然に回復する魔力の量が減少するバッドステータスです。通常、魔力量の大きさに比例して魔力回復量は多くなるはずですが、こちらが少ないと回復に時間がかかってしまいます」
「ありがとう。俺の回復量は……一時間ごとに10か。これって少ないのか?」
「はい、大分……前にこられた勇者様は一時間ごとに600以上回復されてました」
まじかよ。めちゃくちゃ減らされてるじゃん。
待てよ? 俺の最低魔力行使量が999なら、一回使った魔力が戻るのに100時間かかるって計算だよな。
いや長すぎるだろ! 四日以上かよ!
あんの女神、まじで嫌がらせみたいな呪いかけやがって。
「あの、幸多さん? 大丈夫ですか?」
「大丈夫だ。問題ない」
思いっきり歯軋りしてたけど、あえてスルー。さ、続きを読もう。
そろそろ使える魔法が載ってるページに差し掛かるぞ。
「うおっ!」
眩いばかりの光が本から溢れ出しす。
「幸多さん!?」
「マリア! これは一体!?」
俺もマリアも事態が飲み込めず、ただ悲鳴をあげる。
とんでもない勢いだ。手元が爆発したみたいな感覚。
これ、どうすりゃいいんだよ!
「きゃあ!」
次の瞬間、ゴゴゴゴゴと地面が揺れる音がする。
マリアは悲鳴をあげたが、俺はこの現象を知っている。
地震だ。
いやこのタイミングで地震とか勘弁してほしいんだけど!
「あ」
ピシリ、という亀裂音がしたかと思うと、足元の感覚が消えた。
「うおおおおおおおおおお!」
落ちると思った瞬間に落ちていく。しかも上から瓦礫とかが降ってくる始末。
あ、俺死んだわ。
「ぶ、物理保護!」
マリアが呪文を唱えたのが聞こえ、俺は意識を失った。
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