第9話 乱入者

 水晶から放たれる淡い光が部屋に満ちている。


「これに触れればグリモアを出せるわ。グリモアについては、知ってるわよね」


「いや、知らない。解説してくれるなら助かる」

 

 いわゆるゲームのチュートリアルってやつだな。


 本当にゲームならチュートリアルなしの手探りで始めるのもいい。一回死んでもコンテニューすればいいんだから。


 でもここはゲームのようであってゲームじゃない。多分、一度死んだらそれまでだ。


「わかったわ。グリモアはね、あなたの能力を具現化したものなの。体力や魔力、適正、スキルがわかるわ。魔術を使うにも魔道具を使うにも必要になるから、冒険者になるためには必須のアイテムね」


「なるほど」


「素養がなければあなたに能力や適性がなければページには何も書かれないわ。でも大丈夫。成長すればページも次第に埋まっていくの」


「ふむふむ」


「さ、あとはグリモアをみながら解説しましょう。この書類に名前記入して」


「ありがとう」


 おぉ、羽ペンだ。初めてみた。それこそゲームの中でしかみたことないぞ。


 でも書きづらいなこれ。細くね? ペンは太い方がいいんだけど、まぁそうも言ってられない。


 俺は自分の名前を漢字で、椹木幸多と書いた。


 字が汚いのは突っ込むなよ。書き慣れないペンなんだから仕方ないだろ。


「書き終わったぞ」


「はいはい」


 クリスは俺の書いた書類に目を通さず、そのままトレーに置く。


「さ、準備はいい?」


「おう」


 と自信満々に言いつつ、俺は緊張していた。


 さてどんな結果になるやら。楽しみでもあるし不安でもある。


 でもこれでよかったかもしれねーな。女神の加護とかもらってたら勝ち組確定だっただろうし。それはつまんねーよ。


「よし」


 俺は意を決して水晶に両手で触れる。


 すると、水晶が輝きだした。


「っ!」


 思わず眩しさに目を背けるが、両手はそのまま。冷たい感触がする手のひらから、何かが入り込んでくる感覚がする。


 俺の能力が具現化したものが、グリモアなんだとすれば。今この水晶は俺の能力を測っているわけだ。


 さぁなんでもこい。と思っていたら光が収まった。


「おぉ」


 目を見開くと、空中にふわふわ浮かんでいる本がある。


 これが俺のグリモアだ。俺はさっと両手で取った。


「さ、次は冒険者のランクね。下からカッパー、シルバー、ゴールド、プラチナ、ダイヤモンド、アダマンタイト、オリハルコンの6ランクよ。判定は私たち組合がグリモアの成長度合いを見て行うわ。とゆーわけで、あなたのグリモアを見せて」


「ん、わかっ━━━」


「マリア!」


 俺がグリモアを渡したその時。


 バーンと大きな音を立てて、誰かが部屋に入り込んできた。


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