虐げられる女性2






 私の手を引いてくれる人がいる。優しく、でも力強く手を握ってくれるその人に、とても安心感を覚える。手を見つめれば、自分より一回り大きくて長い指を、彼は私の指に絡めている。紺色の長袖の先に広い肩、男の人の割に色白で、木々の緑のように青々とした長い髪が、その人の頬に影を落としている。その髪の隙間から見える瞳はとても優しくて、その瞳を見て、思わず胸が高鳴る自分に気がつく。

 私と目が合うと、その男の人は優しく微笑んだ。

「いつ、産まれるんですか」

 低いけれど、とても優しさの感じられる声だ。その問いに私は小さく頷く。

「母の話だと、きっとあと三ヶ月だろうって」

 答えながら私はお腹をさする。自分のお腹はいつものそれと違って大きく膨らんでいた。手のひらで感じる自分のお腹は、そこに新しい命が宿っていることを知らせていた。その感覚に胸がいっぱいになる。

「僕と、あなたの子――か」

 隣の人が、そう言って嬉しそうに微笑む。その顔を見て微笑む自分も、きっと彼と同じ表情をしているのだろうと思った。

「どちらに似るでしょうね」

「ふふ、きっと、あなた似だと思う」

 そう答えて上を見上げようと頭を上げた時、視界の隅に入る髪は光を浴びてつやつやと黒く輝いていた。






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