告白に関する形而上学的疑問。

「なぁ、告白ってさよく分からない物だと思わないか?」下校中、私の隣を歩く幼馴染みの浅間は唐突に疑問を投げかけてきた。彼が疑問に思ったことはこういう風に投げかけてくるのだ。


「どういうこと?」私の返答はいつもこう。すると彼は更に詳しく疑問を言ってくれる。


「だってよ、好きだって告白してもさ、だから何なんだよってならないか?相手に好きだと知ってもらってもそこから何につながるんだ?」


「うーん確かに一理あるけど、好きだって言われた側が言った側に対してそれなりに好意があれば大体返答も決まってくるでしょ。」


「でもそれは告白という物事の構文が共有されてる場合であってそうじゃ無かったら『はいそうですか』って言って終わりでしょ。俺はそういう事を言いたいんだ。」


「まぁ、確かにね。でも告白というモノを知らない人、日本の学生で知らない人居ないでしょ。よしんば知らなかったとて『なのでお付き合いしてください』って付け加えれば万事解決じゃないの?」


「それで解決するなら良いんだけどさ……」どこか悩んでるような、そんな表情を見て私はピンと来た。多分浅間は誰かに恋してる。で、どう告白したらいいか悩んでるのだろう。そんな姿を見ていると少しばかりいたずら心が湧いてきた。


「なに〜?もしかして浅間には好きなでもいるの〜?」なんて聞いて見ると顔が赤くなってきた。図星かなぁ?


「バッ……!!そんな訳無いだろ!」なんて返して着たけど耳まで真っ赤にして。『居る』って言ってるようなモノじゃない。


「顔に書いてあるよ!居るって!まったく、昔から浅間はウソがつけないのね!」


「悪かったな!」そう言うと浅間ぱぷいと顔を背けてしまった。なんだかこういう姿を見るとかわいらしいと思ってしまう。


「ごめんごめん!ちょっと照れてる浅間がかわいくてね!」


「全く……。大体、そっちこそどうなんだよ?」


「えっ?」


「好きな奴、居るのか?」


「私は……今は居ないかな。」そう。今私には明確に好きな人は居ない。まぁ、どっちかといえばというなら居なくは無いけど。……その中に浅間が入ってる事は秘密にしておこう。


「居ないのか。じゃあ。」浅間はそういうとひとつ深呼吸をした。そして、


「俺、高尾のことが……その、好きだ。……だから、あれだ。……俺と、付き合ってくれないか?」……突然、あまりに突然だ。まさか浅間が好きな相手が私なんて、知らなかった。気が付かなかった。


「ええっと……冗談とかじゃ、ないよね?」


「当たり前だっ!冗談なんて言うわけないだろ……。」赤い顔をして浅間は反論する。


「ははは……。じゃあ返事しないとね。」


「ど、どうなんだ……?」とても不安そうな表情で私の顔を覗き込んでくる。こうなってしまえば実のところ返事は決まっている。なら、さっさと安心させてやろうじゃない。


「うん。付き合おう、私達。」そういうと、浅間は表情を綻ばせた。それを見た私はなんだかどきっとしてしまった。もしかして、今更浅間に恋をしちゃってたりして。


 私はまだ明確に浅間の事が異性として好きと感じている訳ではない。でも、もしかしたらこれからとても好きになるかもしれない。それならそれで私の方から『告白』をしてもいいかもしれない。私はそんな事を思っていた。

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