第39話 皇子の進撃

ミラナリアがしばらく列に並んでいると、余程人気なのか自分の後ろにも徐々に人が並んでいく。そんな人気の列の先に何が待っているのか、ミラナリアは次第に楽しみになっていく。


しかし、そんな楽しみはとある人間の出現によって消えてしまうのであった。


「おい、平民ども!さっさと列を開けろ。僕は皇子だぞ、ほらどけ!僕はお前たちと違って忙しいんだ。時間がないがうまそうな匂いをまき散らしているからな。この僕が食ってやろう。ほら、僕に道を開けろ。」


ミラナリアが列の先に何があるのかと想像していると先ほどの声が後ろから聞こえてくる。どうやら、どこかの皇子が自分の身分をかさにきて住人達を脅しているようだ。


しかし、そんなことなどミラナリアには関係がない。そもそも、貴族であろうが、王族であろうが、列に並んでいる人間を抜かそうとするのが罪なのだ。行列に身分など関係ないと思っているミラナリアは愚かな皇子もいるものだと呆れつつ、自分には関係ないと再び想像を膨らませる。


「なんだよ、せっかく俺たちが並んでたのに。皇子だからってでかい態度をしやがって。この国の貴族なんか誰一人こんなことをしている人を俺は見たことないぞ。あんな奴がいる国なんてきっとろくでもないんだろうな。」


「しっ、聞こえるわよ。いくらこの国の貴族がやらないからって相手は帝国の皇子なのよ。ここでからまれたら何をされるか分からないわよ。最悪、殺されるかもしれないし、目をつけられて気が付いたら攫われているかもしれないんだから。ここは言うことを聞いていたほうが良いわ。」


既に列に並んでいた人間が皇子に聞こえないようにそんなことを口にしながら列を開けていく。脅しによって列を開けさせることが悪いと言っても相手は皇子なのだ。そんな人間に目をつけられれば何をされるか分からないと、どんどん列が開いていくのだった。


そんな彼らの思いも知らずにミラナリアが列を待っていると急に列が無くなっていくではないか。


「あれ?皆さん、並ぶのをやめたんですか?並んでないのであれば私が次に進ませてもらいますよ?」


前にいた人間がいなくなったため、ラッキーと思いながらもミラナリアは列を進んでいく。


通常であれば、ミラナリアの行動は何も問題が無い。なぜなら、前にいる人間がいなくなったのであれば自分も列を抜けなければならないなんて言うバカげたルールなどないからだ。


しかし、そんな彼女の行動を許せない人間がいたのだ。


「おい、貴様!僕は皇子なんだぞ!僕が列を空けろって言っているのに、いうことを効かないなんていい度胸をしているな。殺されたいのか!」


そう、ミラナリアの後ろから話しかけてきたのは、先ほどからミラナリアが他人事と思っていた皇子だったのだ。

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