第40話 たまたま生まれが皇子なだけですよね?
もちろん、相手が皇子だからと言ってミラナリアが列を空ける理由にはならない。生憎、ミラナリアは魔物に襲われていた公爵でさえも理由がなければ助けようとしない人間なのだ。そんな彼女の頭の辞書に忖度などという言葉など存在していない。
そんな彼女に皇子だからと言って果たして列を空けるのだろうか?いな、断じて否だ。そんなことは天地がひっくり返ってもあり得ない。
「はい?どうして私が列を退かないといけないんですか?みんな、並んでいるんですからあなたも欲しいのであれば列に並んだらいいじゃないですか。」
「なっ、なんだその口は、僕はシュバイン皇子だぞ!その僕にそんな口を聞いてただで済むと思っているのか!」
まさか、ただの平民にそのようなことを言われると思ってもいなかったシュバインは分かりやすく、ブヒブヒ言い、怒っている。
「皇子なら人間の模範となる行動くらいとれないんですか?まったく、こういう貴族は口を開けば偉いんだぞって、別にあなたはたまたま皇族に生まれただけで何もしていませんよね?
むしろ、そこら辺にいる子供たちの方が働いているんですから、あなたよりもよっぽど有能なんじゃないですか?」
あまりの定番の態度ともいえる皇子の反応にミラナリアはついうっかり口を滑らしてしまう。そんなついうっかりにミラナリア本人も気が付いたが、すべては後の祭りだ。
目の前の人間は見たこともないほど、顔を赤くしており、プルプルと震えている。頭の血管なんてなぜ未だに切れていないのかというくらい、浮き出ている。
「き・さ・ま!この僕をここまでコケにしたやつは初めてだ!覚悟はできているんだろうな、生きては返さんぞ、お前の家族、知り合い、恋人、全員を殺してその首をお前の前に並べてやる!
泣いて謝っても、もう遅いぞ!僕の言うことを聞かなかったから悪いんだ、絶対に、絶対に一人残らず殺しつくしてやるからな。」
いままで思い通りにならなかったことがなかった皇子はミラナリアに出会ってしまいついに我慢の限界を迎えてしまった。
そんな彼がとる行動など、他の身分をひけらかす人間同様、殺意を向けるだけだった。
「あちゃ~、やっぱりそうなっちゃいますか。これだから、こういう種類の人間は嫌なんです。すぐに殺すとか言うんですから、命はもっと大切にしましょうよ。」
ミラナリアが無意識に皇子を追加で煽ってるとそんな彼女の元に、怒鳴り声が聞こえる。
「ミラナリア!こんなところで何をしているんだ!勝手に屋敷を抜け出しやがって、また問題を起こしたな。君はどれだけ問題を起こせば気が済むんだ。」
そう、その声の主は公爵であった。彼の登場がミラナリアにとって吉となるのか、凶となるのかはまだ分からない。
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