第10話 時には長いものに巻かれることも大切ですよね!
「私としても仕事に見合った報酬がもらえるのであれば問題ありません。それで、結局あなたが提示できる報酬とは何なのですか?」
ミラナリアにとってはそこが大事だった。余生を怠惰に送るためにはそれなりのお金や暮らす場所などが必要だ。
「それなんだけど、一人暮らし用の少し大きな家とかはどうかな?大きな屋敷であれば管理が大変だけど、それなら君も管理がしやすいのではないかい?」
自分の家を持てるというのはミラナリアにとって非常に興味深い提案だった。自分だけのマイホーム、それは誰にも邪魔されない自分だけの最高の空間であるからだ。
ミラナリアはそれだけで彼の提案を承諾するべきか迷うほどだった。しかし、そんな迷っている彼女の反応を公爵は不服だと感じたのだろう。彼はさらに条件を追加してきた。
「なら、もう一押しだ。結界を張る報酬として、毎年金貨1000枚を支払おう!さすがに、私もこれ以上は限界だよ。」
「はい!契約します!」
毎年金貨1000枚も支払われると聞き、ミラナリアは即決する。自分だけの住処に毎年の安定した収入。しかも、その収入はミラナリアからすれば大した労働ではなく、実質、不労取得と変わらないものだった。
こんなうまい話を断わってしまえばこの先ずっと後悔してしまうだろう。ミラナリアはメロロ王国を追放されて日も浅いうちに余生を怠惰に過ごすための方法を見つけ、大満足だった。
一方、結界を張ることができるというでたらめな力があれば魔物におびえる国民を守ることができる上に、自国を訪れる商人たちも増加する。公爵にとってこんな人材を逃してしまえば国王から何を言われるか分かったものではなかったのだ。
もちろん、彼自身もミラナリアに力があると言って利用はするかもしれないが、決して理不尽な扱いをするつもりはなかった。そして、自分から今回の依頼を持ち出したのだから、彼女に手を出そうとする貴族がいれば全身全霊で彼女を守ると考えていたのだ。
ミラナリアはこの依頼を受けたことによって思いがけず、公爵の庇護、住処、収入と怠惰な生活に必要なものをすべて手に入れることに成功したのだ。
そう、この契約は公爵にとってもミラナリアにとってもメリットしかない提案だったのだ。
「よし!この話を受け入れてもらって助かったよ。今回の契約は私から言い出したことだからね、もしも、この国の貴族や他国の貴族が君に干渉しようとすれば私が全力で守ると誓うよ。」
「それは予想外のオプションですがありがとうございます。私に干渉しようとするのであればメロロ王国の国王が一番に考えられますが、その時は約束通り私のことを守って下さいね。」
「あぁ、それなら問題ないさ。あんな国の王族がいくら吠えようが我が国の国力の方が圧倒的に上だからね。最悪、戦争でも仕掛けてこようものなら返り討ちにしてやるよ。」
彼との出会いによってミラナリアは最強のパトロンとボディーガードの両方を手に入れたのだ。
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