第4話 後輩登場、しかしただの後輩のようだ
*
「はぁ~やっぱりラブコメはフィクションに限るよなぁ~」
家に帰った俺はこの前購入した漫画を読んでいた。
もうあいつらに付き合うのも疲れた。
やっぱりラブコメは良い。
見ていて面白いし、主人公とヒロインの掛け合いなんかも面白い。
こんな恋愛はリアルではありえない。
「リアルはもっと厳しいもんな」
そう言いながら俺は先ほどの出来事を思い出す。
いくら暇だからって二日連続で同じ奴にドッキリなんて仕掛けるか?
まったく、もう付き合ってられん。
ちゃと謝って来たし、堅山さんはあいつらとは違うと思ったけど、ひょっとしたら一番ヤバイ奴なのかもなぁ……。
「あ、読み終わっちまった。さて、次々……」
俺はそんな事を呟きながら次回の巻に手を伸ばす。
漫画の中ではヒロインが主人公と仲良く放課後の時間を満喫している。
二人でゲームセンターに行ったり、カラオケに行ったり、する主人公。
何が目立たないどこにでも居る普通の高校生だよ、完全にリア充じゃん。
でも面白いんだよなぁ……俺もこんな青春送ってみてー。
そんな事を考えながら俺はページをめくる。
「清高! ご飯出来たわよぉ!」
「はぁーい!!」
ちなみに俺の家の家族構成は両親と俺だけ。
一般的な家族だと思う。
母さんが飛び切り美人とか父さんがイケメンなわけでもない。
そうさ、この普通こそがこのリアルの世界で俺に与えられた役割なのだ。
間違っても美少女から告白されたり、綺麗な先輩から可愛がられたりなんてことはあるわけが無い。
しかし、翌日から俺の状況が少しづつ変わっていった。
「昨日もお袋がまりとっつぉを作ってよぉ。もう流石に飽きたっていったら今度はシュークリーム出してきやがって、口の中が甘いんだよ」
「井岡のお母さんお菓子作り好きだもんな」
翌日、俺はいつものように学校で井岡と下らない話をしていた。
クラスではいつも通りカースト上位層が騒ぎ、中層の俺達は仲の良い友人とお喋り。
下位層は一人でスマホを見てニヤニヤしていたり、同じ下位層の奴らと話をしたりしている。
「昨日のカラオケやばかったよなぁ~吉田歌上手過ぎ!」
「すげーだろ? 結構歌ってるからなぁ」
「てかアンタら歌いすぎ、私ら全然歌えなかったし」
「そうだよぉ、マイク握って離さないんだもん」
「わりいわりい! 今度から気を付けっから」
吉田を中心としたカースト上位層の方々は今日も元気そうだ。
うちのカースト上位層はコミュ力の高い三人の男子と容姿の良い三人の女子で成り立っている。
吉田が中心に居て、いつもあいつらがクラスのイベントでは中心に居た。
流石は中学時代は陸上部のエースだっただけはある。
容姿もカッコ良くて、他のクラスにも友達が多い。
現在彼女は居ないらしいが噂ではあの堅山と出来てるんじゃないかと言われている。
「そうだよ……俺の居場所はここだ」
「何言ってんだ?」
「いや、なんでも無いよ」
そうだ、決して俺なんかモブがあんな主人公様達の中に入ることはない。
俺は普通で良いんだ。
このまま何事も無く、平和に学園生活を終えて卒業する。
そんな事を考えていた放課後……。
「あ、悪い俺今日委員会だ」
「マジかよ、そんなもんサボっちまえよ」
「いや、流石にまずいわ。お前も知ってるだろ? 保健委員の担当の先生、口うるさい池崎(いけざき)だからさ」
「あぁーそうだな、じゃぁ待っててやるからさっさと帰って来い」
「悪いな、じゃぁ終わったらスマホに連絡する!」
「おう」
井岡にそう言って俺は委員会に向かった。
俺は保健委員会に属している。
とは言ってもそこまで目だった活動をしているわけではない。
今日の委員会も恐らくただの尿検査のお知らせとかそう言う感じだろう。
そう思いながら俺は委員会が行われる教室に向かった。
「あ、先輩やっときた」
「ん? あぁ、武川(たけかわ)か早いのな」
「まぁ、一年生は教室から近いんで!」
俺に挨拶をしたこの一年生の女子生徒は武川楓(たけかわ かえで)。
今年入ったばかりの一年生なのだが、同じ中学でその時も知り合いだったということもあり、唯一俺が仲が良いと呼べる女子だ。
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