第5話 イメージの下がった彼女
「今日の委員会って何するんだっけ?」
「来週の金曜日に学校に献血の車来るらしいので、献血してくれる生徒を募集するって話じゃないですか?」
「あぁ、そう言えば去年もあったな。献血すると図書カードとか貰えるんだよ」
「まぁ、血を抜かれる訳ですからね。多少は何かないとやる気も起きませんよ」
武川のいう通り委員会は献血についての話だった。
各クラスで事前に希望者を募って今週末までに提出するようにということだった。
「面倒だなぁ……」
「仕方ないですよ、保健委員ですし」
「まぁでも早めに終わって良かったわ。友達待たせてるからよ」
「先輩って友達居たんですか?」
「居るわ。もしかしてボッチだとでも思われてた?」
「はい、クラスでは空気なのかと」
「そんなキラキラした目でぐさっと来る事を言うな」
まさか後輩の女の子にボッチだと思われていたなんて……なんか普通に傷つくなぁ……。
俺と武川は委員会が終わり、途中まで一緒に教室に戻っていた。
するとタイミング悪く、うちのクラスのカースト上位層連中が二階にあるクラスから一階に下りて来た。
うわぁ……武川と一緒に居るところ見られたらなんか言われそうだなぁ……普通に無視してどっかに逃げたい……。
ここは奴らが俺に話しかけづらくなるように、何か武川に真面目な質問をして「俺たち今忙しいですよ」という空気を醸し出そう!
しかし、急に真面目な質問って言ってもなぁ……あぁヤバイ!
奴らがコッチに向かって来ている!
早くしないと!
「た、武川!」
「ん? なんですか先輩?」
「お、お前って……好きな奴とか居るの!?」
「え? えぇ!?」
しまった……ミスって凄い変な質問をしてしまった。
なんで急に好きな人の話しとかするんだよ、絶対に不自然だろ!
うわぁ……これはまずいぞ、下手したらカースト上位連中に絡まれるプラス武川に会話の下手な陰キャだと思われてしまう……と俺は思っていたのだが……。
「なぁ、帰りにゲーセンよって行こうぜ!」
「良いな! 行こうぜ!」
「行く行く~みんなでプリ撮ろうよ」
なんと、カースト上位層の連中は奇跡的にも俺をスルーして行ったのだ。
良かったこれでからかわれることは無いぞ!
しかし、問題は武川だ。
このままでは武川の中で俺が会話の下手な陰キャ童貞だと確定してしまう!
いや、童貞は本当だが……とにかくさっきの質問は無かった事にしよう。
「あー悪い。変なこと聞いたな、忘れてくれ」
「……居ますけど……」
「え? マジ?」
前言撤回。
後輩女子の色恋が気になるので会話を広げよう。
「マジかで!? 誰? 同じクラスの男子とか? もしかして同じ委員会か?」
俺はラブコメが好きだ。
もちろん現実世界の恋愛とラブコメが全然別なことも知っている。
しかし、人の恋愛を見ているのは好きだ。
だって、面白いんだもん。
人の恋愛は自分に被害が無い、それに上手く行ったときはなんだか自分も嬉しくなって見ていて楽しいのだ。
そんなんだから俺は他人の恋バナというのがメチャクチャ好きだ。
「お、同じ委員会です……」
「マジか~誰だ誰だ~? もしかして委員長とか? それともあの一年のイケメン君か?」
顔を真っ赤にして応える武川。
まさかあの武川が恋をするなんてなぁ……なんだか俺まで少しドキドキしてしまう。
やはり知り合いの恋愛というのは面白い。
ここは年長者である俺が武川の力にならないとな!
さて、それでその好きな相手は誰なんだ?
「石嶋!」
「え?」
俺が武川と話をしていると、俺達が向かっていたのと逆方向の廊下からなんと堅山が俺の名前を呼んで歩いてきた。
え?
なんで?
さっきまであのカースト上位層の連中と一緒に居たんじゃ……てかあんまり話たくないなぁ、この数日であんまり堅山に良いイメージないし。
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