第59話 とある乙女たちの恋バナ (アルマリア&ラフィア)
「ぐぇ……」
「お、おぇ……」
倒れ込んで一向に起き上がらない男2人。
痛みに顔を歪める。
腹に力を入れて我慢しても我慢できないほど痛い。むしろ触ったり、動いたり、考えたり、何をしても痛みが増幅する。
対してアルマリアとラフィアはつまらなそうに見下ろしていた。
勝敗は一目瞭然だ。
「しょ、勝者——アルマリア様&ラフィア様」
審判が宣言するも、観客やこれから2人と
試合はもう6戦目だ。連勝に連勝を重ねている彼女たちの強さを前に唖然としているのだ。
中には名の知れたギルドの一員もいた。力自慢の獣人やドワーフもいた。だが、彼女たちに傷一つをつけることなく、一瞬で倒されてしまった。
クロウたちと同様、アルマリアとラフィアも
2人は顔も身体もいい。
白い清純な肌にくびれる所とふくらむ所がはっきりした体つき。
体中むしゃぶりつきたいとよからぬ妄想をした者もいるだろう。
だが、その綺麗な手は残酷なまでに相手の骨や体を傷つけた。
流石にリゾート地という清潔な場所ということもあり、多少の手減はしたのだろう——血は出さないように。
「じゃあ次は〜」
楽しそうにアルマリアが周囲を見渡すと、皆悲鳴を上げて逃げてしまった。
「あー、待ってよー! そっちから勝負吹っかけた癖にーっ!」
「まぁまぁアルマちゃん、いいじゃないですか。私たちの目的はあくまでも癒し。休暇を堪能しにきたんですから」
客の怯えっぷりにスタッフも苦笑い。
アルマリアとラフィアに
場所は変わって施設内にある雑貨屋。一通り欲しいものを買い終えたアルマリアとラフィアは、外のベンチでレモンティーを飲みながら涼んでいた。
「たまにはこうやってゆっくり休むのもいいけど……暇だねー」
「ですね。普段は魔物や悪人を捌いていますから」
「うんうん。それをしないと落ち着かないというかー、もはや日常みたいになってるよねー」
『それを日常にしないでくれ』
傍を通る観光客、誰もが思った。
「まぁ冒険者ですから当然だとは思いますけど。それにしてもオルリゾには色々な施設があるみたいですけど、アトラクション系はクロウさんと一緒に行きたいですし……暇だから恋バナでもする?」
「ん! するー!」
一旦レモンティーを置き、アルマリアから話す。
「まずは経緯を話したほうがいいよね。ウチは幼馴染に裏切られて奈落の底に落とされたー」
今では過去の笑い話のように語るアルマリアだが、奈落の底で体験したことは思い出すだけで吐き気がするものだ。
「クロくんと会った時にはラフィアもいたし、ルルさんやロフィアさんやフェルさん、あとガルガとホルスもいたよねー」
「あの時のアルマちゃんは壊れかけていてすごく心配しました」
「あはは〜。まぁ魔物に片腕持っていかれて目を潰されて散々だったし、裏切られて結構精神的にダメージ受けてたからねぇ。今はあんなクズ野郎のこと、なんとも思わないけど」
「そのクズ野郎さんは今頃どうしてるんですかね。野垂れ死んでいるといいですけど」
「残念ながら王都で騎士やってるらしいよ。なんかコネがあったみたいな?」
「それは是非とも王都に行った際に潰したいものですね。私の大切なアルマちゃんに酷いことして、のうのうと生きてるなんて許せませんから」
「あはは〜、ラフィアは怖いなぁ」
「次は私ですね。私は義理の父親からの暴力に耐えきれず、おねぇと脱走してきました」
「その父親は今も探してるの?」
「んー、どうでしょう。探してるかもだし、新しい養子でも取ってるかもしれませんね」
「ウチの大切なラフィアに暴力なんて酷すぎるー! 見つけ次第始末するね♪」
ひと笑いし、次はクロウの話題へ。
「ウチら、クロくんに助けられてギルドに入って、そこから一緒に過ごしていくうちに好きになったっていう経緯だけど……クロくんの好きな仕草とか行動とかある?」
「私は髪を触る仕草ですかね。クロウさん、髪が長くてよく触覚を指でくるくるして考えごとをしてるじゃないですか。あれが堪らなく好きなんです。あとたまに髪をかきあげたりするのも」
「そういえば昨日、水かけた時に髪かきあげてた?」
「そうなんです! あのあげた時に出るニキビひとつないおでこがまた良くて〜。このままだと私の癖で日が暮れちゃいますね。アルマちゃんはなんですか?」
「ウチは腹筋かなー」
「腹筋ということは……クロウさんの裸をよく見てるということですね」
「そそ、そんなに頻繁には見てないよ!? 水かけた時にシャツが濡れて筋肉が透けて見えて……それいいなーと思って。……あとたまにお風呂場で鉢合わせる時とか」
後半ボソボソと呟くアルマリアの言葉をしっかり聞き取り、ラフィアはニッコリと笑う。
「アルマちゃんは筋肉フェチですか」
「クロくん限定だけどね! あの腹筋がバキバキに割れそうなギリギリのラインが好き。ガルガとホルスのは板チョコ過ぎて逆に嫌いかな」
それからもクロウのことについて語り合う2人。その表情はどんな事より楽しそうだ。
「クロウさんが誰か1人しか選ばないって言ったら私たちは争うことになるのかな」
「うーん、どうだろう。クロくんだしね。鈍感だからまずは分からせるところから始まりそう」
「確かに。みんなで誘惑作戦ですね。そういえば、前にクロウさんがギルドを抜けると言っていた件から随分経ったけど……大丈夫かな」
「それはルルさんが簡単に許すわけないから多分、大丈夫でしょ。クロくんは一生ウチらと一緒。そしてウチらもクロくんとずっと一緒」
「うん、そうだよね。私たち10人で
崇拝レベルで慕っているアルマリアとラフィア。しかし、クロウが本当にギルドを抜ける気でいると知ったなら……どういう反応をするのやら?
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