第49話 〈癒しの地〉オルフェンリゾート〜え、めっちゃ凄いんだけど!!
〈癒しの地〉オルフェンリゾート
周囲を3つの島が囲んでいるリゾート地。出入りするのは主に観光客で、それも基本的にお金持ちか金を積んだ者のみ。それ以外はそもそもリゾート地の場所を知ることすらできないという。
着替えどころか、荷物は無し。手ぶらでいけるとか。
「オルリゾとは随分羽振りがいいものだねー」
「依頼主にチケットを頂いたんですよ」
テレポート屋のおじさんが羨ましそうな声を上げる。それだけでどれだけオルリゾに希少価値があるか分かる。
「じゃあお代はちょっと上乗せしときやすね」
なんでだよ、と言いたいところだが、タダで泊まるし、今回はいいだろう。
代金を渡し、一箇所に集まる。
そしておじさんが魔法を唱える。
「『テレポート』!」
そんな声と共に、光に包まれ目を閉じる。
やがて目を開けると——圧巻だった。
「「「「ようこそ、〈癒しの地〉オルフェンリゾーへ!!」」」」
左右に別れて10人ほどずつ、色んな種族のイケメンと美少女が色とりどりの衣装で出迎えてくれた。
真正面には美しいビーチ。周りには高そうな建物がずらり。完璧なまでの景観や自然環境だ。
「すご……」
その全てに圧倒される。
思わず、呆然と立ち尽くし、見惚れる。
そんな僕にスーツが決まったイケおじが近づいてきた。
「わたくし、オルリゾートの責任者、サトダと申します。お先に代金か招待チケットを頂きます」
「あ、はい」
封筒からチケットを10枚、サトダさんに渡す。
「プレミアムチケットですね。これ以降は代金を収集致しませんので」
代わりにこれを付けてくださいと腕輪を渡された。腕輪式パスポートらしい。
「それと、大変申し上げにくいのですが……今の皆様の格好だと施設にお入れすることはできません。ここは癒しの地、仕事を忘れ、ただひたすらに癒しを求める。なのでそう言った普段の格好だと……」
確かに行き交う人は皆、ラフな格好をしている。でも手ぶらで良いって言ったからこれしか服がない。
「よろしけれあちらの方で私達でコーディネートをしてもよろしいでしょうか?」
それを察したのか、サトダさんが提案してくれた。
……この男、出来る!!
お言葉に甘えて頼んでみることに。
5分程度でそれぞれに似合う服を選んでくれた。
白シャツの上にアロハシャツを羽織り、サーフパンツとサンダル姿に着替えた。
うん、休みを満喫するって感じでいいね!
「腕輪には島の施設やイベント情報が記載されておりますので御確認下さい。あと、食事や施設を利用するときも全てフリーパスになります」
サトダさんが次の説明をする時だった。
「ま、待ってくれ! ワシはオルリゾのために5年間も金を貯めたんだぞ!」
「お客様申し訳ありません。以降の滞在は新たに代金が発生致します」
「あと1日くらい良いじゃないか! ほら、子供たちのこんな目を見てもお前はそう言えるのか!」
「うるうる」
「うるうる」
「申し訳ありません。規則なので。『テレポート』」
あ、消えた。
「キャサリン! 君も一緒にここを出るんじゃなかったのか!」
「いつそんな約束をしたのよ」
「あんなに愛し合ったじゃないか! それに僕たちの結晶だって君のお腹に宿っているだろう?」
「あんな雑魚射精で孕むわけないでしょ。私、サキュバスなのよ」
「雑魚射精……ふはは、ふははは! シャセイの聖剣と呼ばれる僕を怒らせてしまったようだねぇ。今更謝ってももう遅いぞ? 今晩、泣き叫ぶまで君を孕ま——」
「さよなら『テレポート』」
シャセイの聖剣とか嫌な二つ名だな。
「あぁぁぁぁぁぁぁ!! 星が0個に!!」
「『テレポート』」
すごい雑にテレポートされていってる。
滞在期間が終わった人たちが駄々をこねてるみたいだ。
見なかったフリをしていると、サトダさんが言う。
「このリゾートのスタッフたちは、お客様に求められたらなんでも致します。故に居心地がいいのですよ。……もちろん、セックスも」
最後の方は僕にだけ聞こえるように言った。
なんでもとな。サービスも完璧とはそれはお高くつきそう……。
「ちなみ代金はいくらくらいに……」
「人気の一週間コースですとお一人1000万エンですね」
「い、1000万!?」
「ご心配なさらなくても、皆様から預かったチケットは一週間コースと同等の価値があります」
って、ことはこのチケット1枚が1000万エン。10枚で……1億エン!? フェルが言っていた通り、売ったら2ヶ月ほどは遊んで暮らせるどころじゃない……。しかもプレミアが付いてもっと跳ね上がるんじゃ……。
あのおじさん、なんていい物をくれたんだ! たくさんお土産買って帰ろう!
「ここでの説明は以上でございます。また分からないことや補足説明はエリア内にいるスタッフがするので」
説明が終わると、スタッフたちがパッと整列し、微笑んだ。
サトダさんが言う。
「では心ゆくまでに〈癒しの地〉オルフェンリゾートをご堪能ください」
その頃、ギルドハウスにて。
「あれ、今日は随分と静かなんですね」
依頼を終えたセリスが受付で暇そうに新聞を広げたゾイズに話しかける。
「ああ、多くのギルドが休暇を取ってるようだからな。ちなみクロウたちはオルフェンリゾートだとさ。他のギルドもいくつか行っているようだが……」
「オルリゾか。あれはいいものだ」
「そういやお前たちも行ったことがあるんだっけ」
「まぁ一週間と短かったですが」
「一週間でもバカ高いって聞くぞ、あそこ。2ヶ月後にはギルド対抗闘技大会があるし、それに向けてのリフレッシュも兼ねているのだろう」
「……ルルシーラにとっては絶好のチャンスというわけか」
「ん? なんか言ったかセリス」
「ふふ、なんでもありませんよ。ただ、何事もなく、無事に帰ってくるといいですね」
「無事もなにもただの休暇なんだから、当たり前だろ」
「さぁ、どうでしょうねぇ」
セリスの意味深な言葉にゾイズは首を傾げるのであった。
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