第4・5話 狼と鷲の痴話喧嘩

あるじ、是非俺に!」


わか、是非わたしに!」


 挙手している中で一際目立つ男が2人。


 俺って言った男がガルガ、わたしって言った男がホルスである。

 この2人は超絶イケメン野郎。

 つまり不細工である僕の天敵。


「僕1人で充分———やっぱり2人くらいお願いするよ……」


 1人で充分って言おうとしたら隣にいるルルににっこりした表情で見られた。


 ニッコリしているものの、後ろからドス黒いものが出ている。

 まるで「同じことを2度も言わせんな」と言ってるようだ。


 フェルといい、ルルといい、なんで笑っているのにあんなに怖いのだろうか? 女の子って怖い。


「男女1人ずつお願いするよ」


 公平が1番だよね。

 

 僕の指示で女性陣は集まって話し合いを開始。


 一方、男性陣はというと……。


「主に相応しいのは俺様だろうが!」


「どう考えてもわたしだ!」


 険しい顔で歪み合っていた。


 ガルガとホルスの相性はすこぶる悪い。喧嘩なんて日常茶飯事だ。


「テメェとはここで決着をつけないとなぁ……」


「ふん、貴様にわたしの力を思い知らせる時がきたようだな」


 突如、眩い光に包まれたと思えば、ガルガは狼にホルスは鷲に変身していた。


 この2人はいわいる獣人変化トランス・ビーストと呼ばれる種族である。


 この異世界には狼や鷲のような魔物は普通にいるが、人型に変身出来る獣人変化トランス・ビーストは非常に珍しい存在だ。

 野獣としての絶大な力を持ちながら更にそう上をいく力を持つと言われている。その圧倒的な力から最強種と呼ばれるほどの存在だ。


 で、その最強種モードを室内で出さないでほしいのだけど。


「あのー。2人とも。ほどほどに————」


「グラァァァア!!」

「ギェェェェェ!!」


 仲裁に入る僕の言葉を無視して争い始めた。


 リーダーの言葉を無視するとか、もう僕の立ち場ないよね?


「………部屋にいるから決まったら呼んでね」


 こいつらはもう放置して、僕は部屋でくつろぐことにしよう。

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