第2話 天使は無敵である

 背中を突かれたのでその方を見れば……可愛らしい女の子が立っていた。


「どうしたのユマ?」


 今にも泣きそうな灰みがかった青緑色のツインテール女の子。

 これ以上泣きそうになられても困るので優しく声を掛ける。


「にぃにやめちゃうの…… ?」


 この子はユマルマ。

 僕は短くしてユマと呼んでいる。


 このギルドの最年少にしててんし要員である。そのため、みんなから可愛がられている存在だ。


「例え話だよ」


 こんなにも可愛い子が目をウルウルさせた状態なら普通はテンションバク上がりである。

 しかし僕は冷静に対処した。

 だって期待してないから。

 不細工な僕にこんな可愛い子が懐くとも思わないし、好きになってくれるとも思わない。

 前世で読んだラノベじゃあるまいし。


「た、例え話でもやっ……!」


「おっと」


 ユマが座っている僕に抱きついてきた。

 幸い小柄だったのでそれほど重みはなく、抱きしめることに成功する。


「いや、いや……っ」


「ユマさんユマさん。そんなに頭を横に振らないで。地味に僕に髪が当たって痛いから」


 頬にペチペチ当たってるから。髪の毛って当たると結構痛いよね?


「ふふ、ユマ様は甘えたがりですね」


 いやフェルは微笑ましく見てないで助けて欲しいのだけど?


「………はぁ。僕が悪かったよユマ。今後、言わないから」


「うぅ……ほんとぉ…… ?」


 次は冗談ではなく、本当に抜ける時に言うつもりだから嘘ではないよね。


「本当、本当。だから落ち着いてね」


 試しに頭を撫でてやると嬉しいそうにしていた。


「にぃに…… ♪」


 僕に体を預けて、上機嫌な様子だ。


 一件落着かな?


「というか、みんなも今の話は冗談だから気にしないでね。ほら、お喋り再開してー」


 フェル、ユマに続きまた誰かにツッコまれると面倒なので先に言っておく。


 最初のように賑わい始めた始めたメンバー達。


 この件は冗談では言ってはいけないな。

 言う時は本当に抜ける時にしよう。


 そう反省しながら再びコーヒーを啜った。

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