想いの波 第9話
ファーストストーリー 幕末 記憶の海
桐沢、よほど此処の海が好きなんだな
ああ
土佐藩にて-------
お前が桐沢宗光か
はい
お前の噂は聞いておる
剣術に長けていると
なんでも、飛燕の剣という技があるらしいな
一度、見てみたいものだ
わが藩の強者を5人ほど呼んだ
手合わせしてみなさい
わかりました
城内の敷地にて
それでは私からお願いします
ああ
ス フ
申し訳ないのですが、一人では物足らないです
4人まとめて手合わせさせてもらえませんか
ほお、大した自信だな
よかろう
殿、それは
あまりにも、私達を馬鹿にしております
まあ、よい
桐沢、命を落とすかもしれなが構わないか
構いません
よし
仕方ない、いくぞ
やあ、おお、たあ
ス ス サ
ジャキ ザ
ううう
あと一人か
飛燕の剣を味わうといい
ヒュウ
スパ スパ ザク
うううおお
なんと
殿
素晴らしい
師範、彼の飛燕の剣とはどういう技だ
あの技は右から左へ斬って
すぐさま、しゃがんで
左から斜め上に切り上げます
最後にそこから真下に打ち下ろす
三つの剣の流れです
まさに流れるようだったな
桐沢殿に褒美をやってくれ
は
海が桐沢の記憶を呼ぶ-------
桐沢さん
また、海に行きませんか
ああ
どうして、いつも寂しそうな目をしているのですか
私がそばにいても駄目なのでしょうか
そんなことはない
私の想いは届かないのでしょうか
いや、そんなことはない
桐沢さんは、最近どうして私に笑顔を向けてくれないのですか
以前はあれだけ楽しそうにして下さったのに
何かあったのでしょうか
疲れているだけだ
波が寄せて
帰っていく
そういうことかな
どういう意味ですか
意味は分からなくていい
分からない方がいい
桐沢さん
私を優しく抱いてください
いや、帰る
どうして
波が静かに帰っていく
お兄様
どうした
誰かが、お兄様に手紙を渡すようにと
これです
わかった
...................................................................................................
桐沢
この間は私の弟子たちとの勝負はあっぱれだった
しかし、師範である私に恥をかかせてくれたな
お主の存在は土佐では、いや私にとっては邪魔なんだよ
お前の大事な人は城の近くの蔵にいる
どうやら、里江という女だぞ
私のそばにないる
取り戻したければ私と勝負しなさい
だが、それが出来ればの話だがな
周囲には多くの兵がいる
このような少ない人数ではないぞ
では、待っている
.....................................................................................
待っていろ
俺が助けに行く
セカンドストーリー 昭和高度成長期 髪の香りとともに
宮地友恵様
お手紙ありがとうございました
今日、東京に到着してアパートも借りました
よろしければ、大作さんの入院している病院を
教えて頂けませんでしょうか
友恵さんともお会いしてお話をお聞きしたいです
突然の手紙で申し訳ありません
病院の入口にて---------
すみれさんですか
はい
私が友恵です
大作さんとお会いしたいです
でも・・・
辛いと思いますよ
目も見えないのですね
はい
それでは、私は静かにしています
大作さんを見ているだけで十分です
わかりました
それでは行きましょう
はい
病院にて
大作さん
友恵さん
あれ、今日はもう一人いるの
友達かな
はい
君の名前は
大作さん、ごめんなさい
彼女は言葉が話せないの
そうだったんだね
ごめんね
大丈夫ですよ
うなずいますから
なんだか、すみれさんの髪の匂いがする
大作さん・・・
どうしたの、友恵さん
急に静かになって
そういえば、お友達の人は泣いているの
タッタッタッタ
どうして、走っていったの
ちょっと、待っていて下さいね、大作さん
友恵さん
もう・・・
これ以上無理かもしれません
友恵さんが大作さんを支えてあげて下さい
いえ、大作さんが好きなのは
すみれさんです
明日、きちんと本当のことを話しますから
いえ、駄目です
辛いですけど、頑張って下さい
私は大作さんの身の回りの世話をします
すみれさん
でも、大作さんが退院してからはどうしますか
その時は・・・
友恵さんがそばにいて挙げて下さい
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
サードストーリー 現代 守るべきものとは
あ、風船が窓から
鍵を開けて取りに行こう
お兄ちゃんにわからないように
ああ、飛んでいっちゃった
お兄ちゃんがボクシングチャンピオンになる前から
外に出ていなかったから
散歩しようかな
ただいま
咲子
あれ、いないぞ
何処に行ったんだ
探さないと
どこだ、咲子
どこだ
おい、こら
てめえ
なんだと
あそこで沢山の人が喧嘩をしている
止めないと
おじちゃん達、喧嘩はいけません
誰だこいつ
相手にするな
そうだな
うああ
こらあ
やめて、警察を呼びます
なんだと、女の子だと思って黙っていたが
裸にでもしてやれ
そうだな
お嬢ちゃん
洋服を脱いでごらん
嫌です
ほら、誰か捕まえろ
今日はお嬢さんと遊ぶか
そうだな
今日は停戦だな
おい、和樹じゃないか
よお、佑介
練習は終わったのか
ああ、しかし
妹がいなくなってな
お前にしか言っていなかったが
そうだったな
一緒に探そう
何処だ
どこだ
おい、あそこに
変な奴らに絡まれているぞ
佑介
なに
よし、今から助けるから
駄目だ佑介
そんな事をしたら
チャンピオンを剥奪されるぞ
いや、チャンピオンはどうでもいい
誰が妹を助けるんだ
お兄ちゃん
助けて
バシ バシ ドス
ううう
なんだ、お前はデビルじゃないか
やめろ
こんな事をしたら
わかっているだろう
妹の方が大事なんだ
バシ、バキ ドス
佑介、お前・・・
大丈夫、咲子
お兄ちゃん怖かった
もう、大丈夫だよ
いつでも、お兄ちゃんが守ってあげるから
どうするんだ、佑介
チャンピオンはお前にくれてやるよ
そういう問題じゃないぞ
大丈夫です
私と和樹さんが見ていました
正当防衛です
翌日
よかったな、正当防衛と判断してもらえて
そうかな・・・
八生さん
そうだ、僕の名前は
佑介だった
君の名前は
八生でした
よかったね、二人とも思い出して
はい
悲しいの
いいえ
じゃあ大丈夫だね
いいえ
どうして
いいえ
佑介さんでしたね
佑介さんは
わからない
私もわからないです
そうか
佑介さんはそばに誰かいますか
君だけしかいない
君は
わかりません
一緒に帰ろう
はい
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