雪の幻影

切なくとも優しい歌 第7話

ファーストストーリー　幕末　悲しい酒

江戸の宿屋より--------

サチヨさん、今から京へ帰るよ

待っていてね

京にて--------

土方さん

サチヨさん、どうされましたか

やはり会えませんか

りんごは食べてもらえましたか

それは・・・

どうしたのですか

いや

沖田さんは元気にされているのですか

ああ・・・

サチヨさん、沖田は今は江戸にいる

近藤さん

土方もうよかろう

どうして、江戸に

それは言えない

元気なのでしょうか

沖田が元気がないと思いますか

そうですね

江戸の何処ですか

それも言えない

申し訳ない

教えて下さい

どうしてもというなら

宿屋を探してみればどうだ

それ以上は言えないのだよ

わかってもらえないと思うがそういうことなんだ

はい、今から江戸に向かいます

一人で行くのか

はい

局長、大丈夫ですか

そうだな、土方

俺が行こう

斉藤かお前が行ってくれるか

暇をつぶしていたところだ

サチヨさんと言ったな

はい

明日の朝に出よう

心配するな

俺はあの二人とは違う、必ず会わせてやる

有難うございます

斉藤それは

まあいい、土方

聞かなかったことにする

江戸からの帰りにて-------

サチヨさん、待っていてくれているかな

でも駄目だよね、僕のそばにいるのは

そうだよ

でも、会いたい

どっちなんだ、僕の気持ちは

馬鹿だな僕は

本当に馬鹿だな

沖田さん

待っていて下さいね

私が行きます

沖田さんのそばへ

でも、沖田さんは私と会ったら辛いですか

辛いですよね

辛いのは私もです

それでも、沖田さんに会いたいです

サチヨさん

何を考え事をしている

申し訳ありません、斉藤さん

斉藤さんは沖田さんがいる宿をご存じなのですね

いや、局長と土方しか知らない

どうして

理由はない

暇なだけだからだ

暇だが、サチヨさんを守ってやる

その程度だ

斉藤さん

遠かりし

あなたを想う

来る夢は

サチヨさん

さっきも言ったが大丈夫だ

必ず会わせてやる

桐沢、ちょっとした情報が入ったのだが

どうした

沖田の女が江戸に向かっているらしい

ただ、護衛にあの斉藤がついているとの事だ

そうか

女を条件とするか

桐沢、ひとつ受けてもらえないか

気が向かんな

まあ、そういうな

斉藤と戦えるのはお前くらいだろう

じゃあ、今日は俺の悲しい酒に付き合え

わかった、桐沢

セカンドストーリー　昭和高度成長期

遠き想いに僕はいた

大作さん

あれ、すみれさん

ふふふ

やっと目を覚ましてくれたのですね

どうして

お昼に大作さんが耳かきをしてほしいと言われたので

私の膝で耳かきをしていました

そうしたら、いつの間に寝ていらっしゃって

疲れていたのですね

そうだったの

はい

覚えていないな

いびきをかいていなかった

いえ、すやすや

子供みたいに寝ていましたよ

お昼から、今まで

はい

もう、夕方じゃない

足が痛かったでしょ

はい

でも、大丈夫ですよ

大作さんの横顔をずっと見る事が出来ましたから

それに・・・

どうしたの

いえ

家に帰ったら、すぐ顔を洗って下さいね　

どうして

紅の印が残っているかもしれません

とにかくお願いします

紅の印とは

なんでもありませんから

すぐに洗って下さいね

わかった

すぐにですよ

どうして

いいから、お願いします

すみれさん

どうしました

すみれさんの頬が少し赤いかな

気のせいです

夕日が当たっているからだと思います

大作さん

どうしたの

私は最近ですけど俳句を勉強しています

ちょっと読み上げてもいいですか

もちろん

でも、やっぱり恥ずかしいかな

大丈夫だよ

すみれさんの声が聞けるだけで十分だよ

本当ですか

ああ

どうしようかな

読んでみて

はい

夢のなか

探して欲しい

愛しきひと

あ、間違えました

五・七・五じゃないですね

俳句ってそういう決まりがあるの

はい

じゃあ

夢のなか

探して欲しい

私かな

僕はいつも探しているよ

すみれさんをね

あ、間違えました

ちょっと待ってください

寄せる波

帰る波にて

心あり

え、どういう意味

教えません

意地悪だな

そうならないといいですけど

意味がわからないな

ごめんなさい

始めたばかりですから

いいよ

僕なんか国語は苦手だし

そもそも漢字が書けないから

大丈夫ですよ

寄せる波を

いつの日か

待つ私

あ、字数がおかしいですね

大丈夫だよ

意味はわからなかったけど

でも、返してくれるかな

はい

その日がくるのを信じているよ

はい

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

＊サードストーリー　現代

ほら

どうした咲子

お薬が一つ減ったの

良くなったのかな

もちろんだよ

よかったね

うん

お兄ちゃん、今度

お兄ちゃんと病院に行きたい

とても、いい先生なのよ

そうだね・・・

最近は練習が忙しいからね

行けたら行こうね

うん

和樹さん

もう、ボクシングは辞めた方がいいんじゃない

いや、辞めない

どうして

悔しんだよ

佑介に勝てないのが

それはわかるけど

所詮、才能が無いと言いたいんだろ

それは仕方ないでしょ

そんなことはないけど

じゃあ、約束して

何を何かな

佑介さんと1Rだけスパーリングをして

立っていられなかったら

もう辞めて

やっぱりもういいだろう

約束したでしょ

和樹さん

佑介さん、お願いがあります

お願いとは何かな

智子さん

和樹さんと1Rだけスパーリングして

それは構わないけど

この前と同じ結果だよ

そうだよ

そうなんだよ

これ以上、俺を苦しめないでくれ

やめた方がいいよ

智子さん

結果は変わらないから

力の差がありすぎるんだよ

わかった、佑介やろう

ヘッドギアなしでいい

駄目よ和樹さん

それは

智子が言い出したことだろ

そうだな

和樹、ヘッドギアなしでやろう

わかった

本気で倒すけどそれでいいのかな

ええ

悔しかったら来い、和樹

言われなくともわかっている

よし

カーン

行くぞ、本気で

来い

バシ　バシ　ボン

ううう

バシ　バキ

やめて、お願い

まだだ

やめて、和樹さん

お願い、倒れて

食事には和樹さんとしか行かないから

わかったよ

終わり　終わり

馬鹿野郎、智子

智子さん、ごめんね

和樹さん、大丈夫

しっかりして

お願い

救急車を誰か読んでくれ

わかりました、里山さん

和樹、これが現実なんだよ