雪の幻影

赤い雪 第4話

ファーストストーリー　幕末　消せない雪への想い

土方さん

サチヨさんか

沖田さんは大丈夫でしたか

それが・・・

それが・・とは

沖田さんが斬られるはずはありませんよね

沖田さんは強いですよね

そうですよね、土方さん

そうですよね

実は不意打ちを受けてな

ある所で治療を受けている・・・

会いにいきます

いや、お前は町人だから会うことは出来ない

どうして町民だとお会い出来ないのですか

そういう時代なんだよ

沖田さんは助かりますよね

目は開いているのですよね

話しかけたら返事をするのですよね

大丈夫ですよね

もしかしたら、助からないかもしれない

そんな

だから行かないで下さいと

沖田さん・・・

サチヨさん

俺達は常に死と隣り合わせなんだ

心の準備をしていてくれ

出来れば会わせてあげたいところだが

さっきも言ったように仕方がないんだ

わかってくれ

沖田さん

どうして・・・

あれだけ言ったじゃないですか

どうしてあれだけ行かないで下さいと言ったのに・・・

沖田さん

雪が外に舞っています

お別れも雪なのですか

本当に消えてなくなるのですか

でも、消えないですよね

私は沖田さんの姿を消す事はできません

追い求めることしかできません

でも

お会いして手を繋ぐことすらできません

それが出来たら

少しでも温めてあげられるのに

沖田さん・・・

実は沖田はな・・・

そう、サチヨさんに言ってあげたいけどな

仕方ないだろう

土方

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Ⅱストーリー

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＊セカンドストーリー　昭和高度成長期　染まりゆく悲劇

なぜか、僕は蕎麦屋に行ってしまった

友恵さんの事が気になったのだろうか

すみれさんは居ないはずなのに

僕の心はどうなっているんだ

友恵さんがすみれさんの影として

僕の目に写っているのだろうか

わからない

でも、すみれさんに会いたい

駄目だ現実に戻らないと

すみません、会計をお願いします

はい、大作さんでしたね

２５０円になります

じゃあ、500円からね

はい

ありがとう

あ、お釣りを渡していない

急いで渡さないと

大作さん

待ってください

お釣りをお渡ししていませんでした

あ

大丈夫、怪我はない

痛い

病院へ行かないと

すみれさん

すみれさんとは誰ですか

いや

ちょっとした知り合いで

それより僕の背中に乗って

恥ずかしいです

いいから

はい

どうして

あの時と同じだ

大作さん、有難うございました

いえ、気にされないで下さい

翌日

お仕事が終わりましたら

私のお店でお蕎麦を召し上がりませんか

友恵さんの気持ちで十分ですよ

いえ、私の気持ちがすみませんので

それじゃ、言葉に甘えるかな

はい

すみれさんという方は大作さんの恋人なのではありませんか

そうです

そんなに私に似ているのですか

そのままです

私がすみれでは駄目ですか

それは・・・

ごめんなさい

会って間もないのに

いや、うれしいよ

でも複雑かな

そうなのですね

ああ

ビールでも飲みませんか

いや、申し訳ないよ

大丈夫ですよ

ありがとう

美味しいですか

久しぶりにビールを飲んだよ

美味しいね

よろこんで頂けて良かったです

友恵さんも少し飲みませんか

いえ、お酒は飲めません

時が記憶を呼ぶ

すみれさん

ここの食堂は美味しいね

ビールを飲もうかな

すみれさんも一緒に飲まない

いえ、お酒は飲めません

すみれさん

すみれさんの事が忘れられないのですね

私でよければ、すみれと思って頂いても構いません

でも、友恵でもいいです

友恵さん・・・

工場にて

すみれさん

どうしているんだろうな

すみれさんとそっくりな女性がいるんだよ

僕はどうしても、すみれさんに見えてしまってね

何をボーっとしている

はい

ああああ

痛い　痛い

うああああ

大丈夫か大作

おい、大作の腕が機械に挟まれたぞ

急いで機械を止めろ

はい

カリン

あ、お茶碗がテーブルから落ちてしまった

大作さん、元気にされているのかな

何事もなければいいですけど

すみれさん

外は雪だよ

僕は雪空を見ている

そこに見えるよ

すみれさんの笑顔

でも・・・

僕の右腕はない

あるのは傷口からしたたる血かな

降り積もる雪が赤く染まっていく

仕事もろくに出来なくなった

工場から、少しばかりの見舞金をもらったけどね

すみれさんのような白い世界に包まれたい

僕が包むことが出来なくなったから

すみれさん

すみれさん

すみれさん・・・

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サードストーリー　現代　溶けないお土産

フィリピンにて

どうしたの、あなたらしくないわよ

そうだね、頑張るよ

家族のためにね

そうよ、あなたは努力家だから

きっと勝てるわよ

ああ、そうだな

今度、日本に行こうかと思っているんだ

世界チャンピオンのデビルもいる

僕の力は通用するかも知りたいしね

そうよ、頑張って

さびしいけど、大丈夫よ

家族は心配しないで

私が守るから

ありがとう

必ず、世界チャンピオンになるよ

パパは日本に行くの

ああ

お土産が欲しいな

ナナは何がいいかな

う～ん

アイスクリーム

アイスクリームは溶けてしまうだろう

じゃあ、日本のお人形がほしいな

僕はプラモデルが欲しいかな

わかった、買ってくるから

ナナもラモンもちゃんと宿題をするんだよ

うん

わかった

頑張って

あなた

ああ