白き想い 第2話

Ⅰストーリー 幕末 斬れない心


闇が時を覆っていた



サチヨさん、ごめんね

やはり


沖田、覚悟はいいか


はい、局長


相手は討幕派の中でも強者ばかりだ

その辺の雑魚ではない

中には人斬りで有名な剣客である桐沢宗光もいる

奴が要人を暗殺したのは数知れない

沖田がいかに剣が優れていようとも

勝てないかもしれない

その時は己の命と引き換えにしてでも斬れ

俺もそのつもりだ


そのつもりがよさそうだな


ああ、斎藤


上には4人いるとの情報があった

どうやって攻めるかだな


そうだな

土方

桐沢の強さはどの程度か

見たことがないからな

噂だけにしか過ぎない


局長は知らなかったのですか


何がだ

土方


芹沢が瞬時にして斬られたことを


なに

いつだ


たった、今日だ


あの芹沢がか

土方


ああ


それは奇襲でやられたのではないのか


いや


実は俺も見たんだ

状況として不利だったから遠ざかったが

正直な所、俺には勝てる気がしない


なに、そこまで


沖田ですら

どうかわからないぞ


そうか、わかった

土方


だから、奇襲という訳さ


そうだな


ああ

斉藤




やつらは、太平屋の二階に集まって倒幕の打ち合わせをしているだろう

おそらく、酒でも飲んでいるだろうから

油断しているところに奇襲をかける

わかったな


はい


沖田

サチヨさんへの想いは整理したか

お前の辛い気持ちはわかっているつもりだが


はい、土方さん


よし、行くぞ


沖田、どうした

ボーっとして空を見ているんだ




サチヨさん

僕はなんて意気地なしなのかな

初めて出会った時と同じように空を見上げている

あの時は雪が舞っていたけど

これからは血が舞うんだよ

白と赤か

僕は白が好きだな

サチヨさんの透き通るような白い肌

会えるかな

もう一度会えるかな

相手は京の町で最も強いと言われいる男だよ

その男と戦わないといけない

もちろん、僕も強いよ

新選組でも一番ではないかとも言われている

でも、怖いんだ

斬られることより

サチヨさんとも会えなくなるのがね

本当に情けないよ

サチヨさん




沖田


はい、局長


女は忘れろ


はい


よし

俺と沖田がまず二階の部屋に突入する

土方と斉藤は階段の下で待て

そこまで俺たちが誘導する


局長、下まで逃げるのですか


ああ、それが作戦だ

まともにいったら勝てないだろう

相手らは4人、我我も4人だが


それほど


そうだ、沖田

桐沢はそれだけ強い


そうだな


沖田、そういうことだ

行くぞ


はい




俺達が京の町を守るんだ

そのためなら斬られてもいい覚悟でいく



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Ⅱストーリー 謎





・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

Ⅲストーリー 昭和高度成長期 列車の揺れる心


僕に集団就職という波が押し寄せていた 

果たして、僕は時に引き寄せられ

海の底に行かなければいいが


お母さん、待っていてね

頑張ってお金を稼ぐから

高い薬も買えるよ

きっと良くなる

僕がどれだけ、お母さんに可愛がられたことだろうか

夜に高い熱をだしたら

おんぶして病院に連れて行ってくれたよね

今でも覚えているよ

お父さんは酒飲みでさ

お母さんはどれだけ苦労したか分かるよ 

病気になって痛かっただろうし

さぞかし辛かったよね

ぼくも幼い頃はやんちゃだったから

お母さんを困らせたね



青と白の世界が待っていた

今は汽車の窓から海が見える

海と砂浜が


記憶が僕を呼んでいるよ

すみれさんと、よく海へ行ったね

波打ち際まで行き、二人とも膝元までびっしょりになって

それでも波をかき分けながら走ったよね

まるで無邪気な子供のようだった

あの時に見えたのは海ではなくて

すみれさんだけだよ

すみれさんはどのような気持ちだったのかな

僕と同じ気持ちだよね

そうだよね

きっと

思い出が僕を追いかけてくる


ガタン ゴトン


汽車が揺れている

僕の心も揺れているよ

出発して良かったのかなってね

駅を出発してからすみれさんが段々と遠くなっていく

僕は遠い地で働く

離れていても、すみれさんへの気持ちは遠くならないよ

近いうちに帰ってくるよ



大作さん

また会えますか

思い起こすと

大作さんに初めてお会いした時を思い出します

もちろん覚えていますよね

私の蕎麦屋で蕎麦を食べていましたけど、悲しそうでした

気がかりでしたので気になっていましたけど

他のお客さんもいるにもかかわらず

思いつめたようにしてお支払いをせずに

お店から出て行きましたね

びっくりしました

でも、私は逃げたとは思いませんでした

そう思えませんでしたから


お客さん、待って下さい

お会計が済んでいません


あ、そうだったね


痛い


大丈夫



私が転んで怪我をしてしまい

大作さんがおんぶして

病院まで連れて行ってくれましたね

私は慌てて走って来たのでお金を持っていませんでしたけど

大作さんが病院代とお蕎麦のお金を払ってくれました

お支払いを忘れるくらい疲れていたのですよね

私は骨折して入院になりました

次の日に病院の庭に咲いている花を持ってきてくれて

蕎麦屋でお金を払わなかったことも謝っていました

私は嬉しかったです

なんとなく、その時の気持ちが伝わってきたからです

大作さんの表情が気になっていました

私もあの頃はいろいろありましたから

おかげで、私も元気になりました

大作さんの子供のような笑顔を見ることができたからです

大作さんはどうだったのですか

きっと同じ気持ちですよね

遠くの地でお蕎麦を食べることがあったら

私の事も思い出してくださいね


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

Ⅳストリー  現代 しあわせのメニュー


国内試合戦の当日にて


ポートレック、練習通りやるんだ 


わかっています

必ず倒します


相手はテクニシャンで距離を取って戦うからな

いかに中に入って攻めるかだ


はい


よし、そろそろリングインだ



会場の外では-----



よし、俺はチャンピオンのタークルンボーに賭けるぞ

フィリピン随一のテクニシャンだからな


いや、ポートレックの強打と打たれ強さもあるぞ


俺はタークルンボーかな



ゴングがなる



カーン



ポートレック、距離をつめて打て

そうだ


おお、ダウンしたけどポートレックが勝ったぞ


まさかな


ほらみろ

ポートレックが勝っただろう



自宅にて------



ナナ、パパはフィリピンのチャンピオンになったぞ


本当、やったあ


今日はレストランに行こう


あなた、おめでとう


だけど、フィリピンのファイトマネーは少ないから

高級なレストランには行けないんだ

ごめんね


そこのレストランで十分よ

あなた


パパ

すごいよ

これがメニュー表か

初めて見たよ 


そうだ、サモン

そこに書いてあるものを

好きなだけ食べていいぞ


パパ、アイスクリームがある

食べていい


わ~い

アイスクリーム

甘いのかな


ああ、甘いぞ


好きなだけ食べていいぞ

ママはこのステーキを食べてみたら


いえ、あなたが世界チャンピオンになってから食べます

必ずなれます

信じていますから

でも・・・


どうしたの、フィリア


怪我だけはしないでね


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