さよならは時を告げる 第1話
Ⅰストーリー 幕末 国と君を想う
時は幕末、国を想い翻弄奔走する中で輝きを放つ物語り
沖田さん、もう、無理されなくてもいいです
大丈夫だよ、サチヨさん
心配です
大丈夫だから
いえ、外は雪もう無理です
おやめになられて下さい
行かないといけない所があるからね
行かないで下さい、沖田さん
サチヨさん、それ以上言わないで下さい
僕も辛くなります
討幕派への奇襲をかける前の想いであった
そういえば、サチヨさんと出会った時のは雪の中でしたね
沖田さんが橋の上から空を見上げていました
そうだったね
かんざしが落ちる音がして
僕は気づいたんだよ
さびしく響く音に
空を眺めているサチヨに
実は僕も空を眺めていた
あの時は何を考えていらっしゃったのですか
僕がどうしていいのか
わからなかったんだよ
自分自身が
そうおっしゃっていましたね
私にも気持ちが伝わってきました
もう人を斬るのはやめて下さい
お願いです
どうして優しい沖田さんが人を斬る必要があるのですか
それは仕方ないじゃないですか
僕も本当は斬りたくない
人を斬るために剣術をしている訳ではない
でも、時が僕を待っているんだ
仕方ないんだよ、サチヨさん
私より新選組の方が大事ですか
それは・・・
ごめんなさい、聞いては行けないことを聞いてしまいました
いや、それは
でも、これ以上は言えない
サチヨさん、それでは
待って下さい
サチヨさん
僕は行かないといけない
沖田さん
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
Ⅱストーリー 謎
ヒュー
ひゅー
ひゅー
ザザザザー
ううう
あなた様
俺は誰だ
また、私は行ってしまったかもしれない
空しいものだ
この世は空虚なものか
深い悲しみが私を襲うのだろう
ここも雪か
俺はいったい誰なんだ
ここは何処だ
お侍さま
どうかされましたか
大丈夫でしょうか
サチ
サチではないか
いえ、私は里江と申します
そうか、ここは何処だ
歩ていたら突然倒れられました
しかし、すぐ目が覚めて
今ここにいます
そうか
よければ、お食事でも召し上がっていかれませんか
いいのか
はい
心配になったものですから
どちらからお見えになられたのですか
それがわからない
私は里江と申します
宿屋もしておりまして、丁度部屋が空いております
よければ、しばらく休んでいかれたらどうでしょうか
ありがたい
どうしてそこまで俺にしてくれる
いえ、なんとなくです
あの人に
誰だ
いえ、独り言でした
申し訳ありません
丁度、隣の部屋に名のあるお侍様もお泊りになられています
今は具合が悪く静かになさっておられますが
なにかのご縁があるかもしれません
そうか
宿屋の縁側にて
お二人とも大分よくなられましたね
お前は誰だ
いや、それはいう事ができない
そうか
あなたこそ誰ですか
それがわからん
お互いさまですね
そうだな
私にはあまり近づかないほうがいいです
何故だ
それは言うことが出来ません
そうか
あなたの目は鋭いですが
なぜか寂しそうな目をしていますね
そうか
お前は女みたいな顔だな
まあ、よく言われますけどね
名前を言えぬということは
何のためにここにいるかも教えてくれないな
そうですね
あなたこそ
俺は全くわからない
何のためにここにいるのか
いま、どうしていますか
だいぶ良くなりました
もしかしたら
心配してくれているんじゃないかな
早く帰って食べたいな
優しい笑顔をみることができるのかな
でも、もう近づかない方がいい
そうだよね
せめて食べたいな
やさしい笑顔を見ながら
もう、あの頃はこないね
幸せだったあの頃は
サチ
どうしている
俺は誰だ
サチという名前しかでてこない
何故だ
何故、思い出せない
俺は誰なんだ
なぜか背中が熱い
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
Ⅲストーリー 昭和高度成長期 悲しみの汽笛
雪解けの中に咲く二つの花が舞い散る行方とは
ほら、口元にお米がついていますよ
あ、本当だね、すみれさん
取ってあげますから
ありがとう、お弁当が美味しかった
私は大作さんが美味しそうに食べて下さるのが嬉しかったです
楽しかったです
すみれさんのお弁当が食べたいな
蕎麦はいつも食べているから
作ってあげましょうか
本当
はい
どうですか
美味しい
本当に美味しい
うれしいです
また、お弁当が食べたいな
はい
幸せでした
幸せは来ないのですか
もう
そんな事はないですよね
大作さんの優しい笑顔が見る事ができますよね
そうですよね
でも、そろそろ汽車に乗らないといけない
大作さん、どうしても行かれるのですか
仕方ないかな
雪が降って来たね
落ちたらすぐ消えてしまう
僕達もそうだったのかな
今からを象徴するようにね
でも
どうしたの
雪は降り続ければ氷になります
氷のような冷たい私を温めて頂けないのですか
それは
そうですよね、御免なさい
もう出発するのに
手紙を書くから・・・
はい
ほら
どうしました
悲しみの音が聞こえて来た
汽車の汽笛の合図だよ
そろそろ行かないとね
やはり行かないで下さい
そういう訳にはいかないんだ
また、必ず帰ってくるから
最後に大作さんの胸の中に
ほんの少しだけ寄り添っていいですか
余計に辛くなるじゃないか
いえ、飛び込んでいきます
すみれさん、離したくないよ
そろそろね、じゃあ
待ってください
ごめんね、乗り遅れる
大作さん
ボオー
シュッ シュッ シュ
大作さん、待って
すみれさん
そんなに手を振らないで
そんなに走って追いかけて来ないで
あの時見たいに怪我をするよ
追いかけてくるのは汽笛の音だけでいいから
結局、手紙が渡せなかった
渡せる日がくるのだろうか
大作さん・・・
待って下さい
Ⅳストーリー 現代 孤独とその裏側
孤独の中に咲く花はあるのだろうか
華やかな世界にも孤独があった
貧しい中にも幸せがあった
現代
キャー
里山佑介チャンピオンよ
ほら
本当
そうそう、イケメンだし
今、ボクシングで世界でも注目を浴びているのよね
この間の世界戦は、一億円のファイトマネーだったそうよ
ええ、本当
キャー、お金持ち、結婚できたらな
無理、無理、サインだけでも貰おうよ
そうね
すみません、サイン頂けませんか
ああ、いいですよ、これでいいですか
はい
キャー、紳士的で優しい
フィリピンにて
パパ、お腹すいた
ああ、ごめんね
あの木のバナナを取ってくるから
うん
ほら、どうだ
美味しい
パパはボクシングも強いけど優しい
でも、お腹が空いたな
バナナも美味しいけどメロンが食べたいな
メロンは緑色なの
きっとおいしいんだろうな
食べてみたい
パパ
待っていて
パパが世界チャンピオンになるから
そうなったら、メロンだけじゃなくて
ステーキや豪華な料理を食べさせてあげるよ
本当
本当だよ
長里ジムにて
会長、今日もスパーリングはないのですか
ああ、それが、お前が強すぎてな
怪我が怖くてスパーリングパートナーがいないんだよ
今は二つ上の階級の選手を探しているから待ってくれ
お前はもう、世界のデビルだからな
本当は、お前はデビルという名前だが優しい性格だ
しかし、興行的には仕方ないんだよ
だから、ボクシング協会もデビルという名前が売りなんだ
デビルという名はやめて欲しいですね
まあ、仕方ないさ
興行だからな、我慢してくれ
お前が強すぎるからそういう名前になるんだよ
所詮、金なんだよ
わかりました
そのうち試合になりそうな対戦カードを組むから
ライト級じゃ、お前の相手になりそうな選手は見当たらないな
階級を上げる方法もありだな
その必要はないですよ
なぜだ
これ以上に強くなりたくないですから
そんな事じゃ駄目だろう
帰ります
フィリピンにて
パパ、来月はフィリピンの国内タイトル戦に挑戦だね
ああ、ラモン、必ず勝つさ
パパの強いパンチでやっつけるよ
うん、パパ
パパ、怪我をしないでね
ああ、ナナ
大丈夫だよ
そうよ、あなた
大丈夫、フィリア
国内タイトル戦にて
ポートレック、いよいよだな
お前は決して才能はあるとは言えないが努力型だ
天才より努力が勝る
根性があるしな
打たれ強いしハードパンチャーだ
今回のチャンピオンはテクニシャンだが必ず勝つ
はい、絶対に勝ちます
家族のために
家族のために戦うんだ
自宅にて
どうして泣いているの、ナナ
お弁当が持っていけないから
いじめられるの
そうか
ナナ、ごめんな
ナナがいじめられるのはパパのせいだな
パパのファイトマネーが少ないから
他の仕事をしたいけどボクシングに集中したいんだよ
必ずフィリピンのチャンピオンになるから
そうしたら豪華なお弁当を持っていけるよ
みんなにもいじめられないからね
うん、頑張ってね
応援しているからね
ああ、任せて
それじゃ、行ってくるね
でも、パパ
やっぱり行かないで
怪我をするかもしれないでしょ
大丈夫だよ
ナナ
心配しなくてもいいからね
だから、必ず勝つからね
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