ダイナミック就寝
目が覚めると昼だった。昼だった、と言う表現は適切じゃないかもしれない。昼前だった。なんだか随分と寝ていた気がする。寝ていた筈の椅子から振り落とされ、硬い冷たい、床に寝っ転がっていた。
全身の痛みに耐えながら体を起こす。今日は大事な日なのだ。寝過ごさなくてよかった、と思った。
ラジオは依然として砂嵐を放っていた。けれど、信号が流れるまでそんなに時間はないのだろう。今日は冷蔵庫にある保存食で済ませよう。冷蔵庫から吹き出す冷気に、頭が覚めた。缶に詰められている保存食を取り出す。缶切りがなくても開けられる優れものだ。
…ラジオから離れなくては。ちょうどラジオから一番遠い押し入れに隠れる。襖を閉めるとそれなりに暗いが、ここでずっと過ごすわけじゃないので我慢する。
隠れながら食事を済ます。ちょっと味気ない。というか味が濃い。ご飯がいる、ご飯が。でも使える水はない。前々から災害用に買ってあった水だけだ。けれどそれは水分を取るために使いたいので、使わないでおいている。
そんなことを考えているタイミングで、音が鳴った。音というより、音波だ。いっそ外に逃げ出したくなるぐらいの爆音が鳴り響く。近所どころか全国に響き渡るような爆音だった。
「ーーーーっ!!ーーぅ、ぁ」
なんてことだ。私が何をしたのだ。このままでは耳なし芳一どころか全なし芳一になりそうなほどの音波が余すところなく響き渡る。
響き渡って、終わった。終、わった。それで安心してしまったのか、徐々に意識が薄れていく。駄目だ、しばらくはここにいないと。けれど、それまで一般の範疇を超える活動をしていなかった私には、それに抗う術はなかった。
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