第二話 ようこそ終末

 

 朝、猛烈な寒さで目を覚ました。寒くて寒くて寒くて、夢の中でも凍える夢を見たぐらいだ。


 窓を見る。冬でもないのに雪が降っていた。今は九月十二日の筈だ。確かに夏とは言えないものの、それでも少し早すぎるんじゃないだろうか。


 窓を開けーーるのはやめて、テレビなどで情報収集する事にした。ここで窓を開けたら凍死する気がする。寒さに慣れてないのだ。


 まあ、私が二ヶ月近く眠ってただけかもしれないし。しかしそうなると何で私が生きているか疑問だが、それでも日常をまた過ごせるのならどうでもよかった。


 結論から言うと、嫌な予感は的中した。


 パソコンは接続できない。テレビはつかない。エアコンはぎりぎり、動く。ラジオもザーザー音が聞こえるだけで、人の気配はしなかった。


 どうしよう。どうしようもない。パニックになった私は、再び寝室に戻った。


 そうだ。寝よう。寝たらまた元通りになるかもしれない。これはただの夢で、現実の私はまだ寝てるんだ。そうに違いない。


 そうして、何の気無しに窓を見る。一切の情報機器が使えない今、窓から見る外の様子だけが救いだった。


 人が、歩いている。と言うより、歩いていた。その人は冷たい空気に当てられたのか、冷たい空気が内臓にあてられてもがいていた。


 胸や、お腹辺りを、血が出るまで引っ掻いていた。目を逸らして見なかった事にしたいのに、目は張り付いたように動かなかった。そしてそうやって出た血も凍っていっていた。


 やがて動かなくなるまで、私はその人を見ていた。まるで、なんだっけ?ああ、

 小説か何かのようだった。私はそれに美しさを見出してしまっていた。


 …眠ろう。きっと眠れば、元通り。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る