最終話 君達の未来に幸あれ

この世界は何時でも輝いて見える時もあれば。

輝かない時もある。

だからこそ面白いんだと思う。


でも光と影。

俺は陰の方が嫌いだ。

だから俺達はみんな動いた。

その影を打ち壊す為に。

幸嶋麻里子の件だが。


俺達は温泉に行ったりして羽を伸ばし。

全てにおいてしっかりと物事を見据えてから。

そのまま今に至っている。


俺達は最後の難関に挑んでいた。

何をしているのか。

それは簡単だ。

産婦人科で幸嶋麻里子を見守っていた。

出産の準備に入ったのだ。


結論から言って俺達で支え合っていこう、という形になった。

大切な命を素朴にするのは如何なものかな、と思ったのだ。

この世に生を授かった時点で産むべきだ。


そう判断されたのだ。

俺はその意見には賛同だった。

幸嶋はなかなか難しい顔をしていたが。


「.....でも今となってはこの判断で良かったかもな。正直不安しか無いけど」


「不安であるのは当たり前だよな。俺だって不安だよ。何も見えないし」


「.....だな。有難うな。意見を出してくれて」


そんな会話をしながら。

俺、椋、幸嶋、茨城は産婦人科に居た。

出産を見守りたいが.....それは如何なものかな、と思ったのでただ待っている。

もう既に戦いが始まってから3時間は経っている。

俺達は少しだけ不安の色が見えていた。


「.....大丈夫かな」


「そうだな。でも大丈夫だと思うぞ。きっと」


「そうだね。アタシもそう思う。アイツならきっと頑張ってくれるって」


「有難うなみんな」


幸嶋だけはソワソワしていた。

当たり前だろうな。

不安で仕方が無いと思う。

こういうのは遭遇すらした事が無いけど。


でも分かるコイツの気持ちは。

考えながら俺は外を見たり通行人を見たりする。

死んだりしないだろうか、という不安がある。

俺は考えながら頬杖をついている幸嶋を見つめる。

どうも頭がショートに近付いている様に見える。


「俺さ。飲み物を持ってくる」


「.....え?じゃあ私も行こうか?」


「いや。幸嶋を見守っていてくれ」


「分かった。気を付けて」


それから俺は飲み物を取りに行った。

この病院は自由なので飲み物のおかわりとかは自由の様だ。

俺はその事を考えながら適当に入れて持って来ると。

みんなその場所から居なくなっていた。

つまり.....!?


「!」


俺は目の前の分娩室を見る。

そして飲み物を置いて近付くと。

そこには.....産まれたばかりの赤ちゃんと。


幸嶋麻里子が寄り添っていた。

俺はその姿を見ながら笑みが溢れる。

みんなホッとした様な感じだ。


「無事に産まれた」


「.....ですね」


「良かったな。幸嶋」


「.....4時間も経ったけど頑張ったな。麻里子」


そして俺達は笑顔を浮かべながら麻里子を見る。

麻里子は目に涙をかべていた。

それから、皆さん有難う御座います、と言う。


そうしてから運ばれて行く麻里子。

俺達はそれを見送ってから幸嶋を見る。

幸嶋は崩れ落ちた。


「マジに良かった」


「ああ」


「首藤とかに報告しないとな」


「そうだね」


首藤達も報告を待っている。

その為に直ぐにメッセージを飛ばさなければ。

思いながら俺は携帯を持ってからそのまま外に向かう。


そして思い思いに電話を掛けて出産の事を伝えた。

するとみんなホッとした様な感じで言う。

おめでとう、と。


『良かったよマジに』


『安心したぜ相棒』


「.....だな。有難うな首藤。田中」


『良いって事よ。しかし良かったけど.....まだ戦いはこれからだな』


『そうだな。確かにな。何処の馬の骨が妊娠させたか調べないと』


「.....確かにな」


俺は真剣な顔をする。

その事についてはまだ何も進展が無いもんな。

俺は考えながら顎に手を添える。

そして前を見据える。

すると背後から声がした。


「大丈夫?」


「ああ。椋」


「.....何だか複雑な顔をしていたから」


「そうだな。これからの事を考えていたんだ」


「ああ。そうなんだね」


そうだね、と複雑な顔をする椋。

それから唇を噛む。

俺は顎に手を添えたまま考える。

すると、まあでも今は祝うべきじゃないか?、と茨城がやって来た。


「.....無事に出産を終えたんだし」


「確かにな。今は祝うべきなのかも知れないけど」


「お前は正常な判断が出来ると思っているけどな。雪歩。だから考えてみろ。今はそんな馬の骨の事で悩んでもしゃーねーって事を」


「.....確かにね。その通りだよね。.....雪歩くん」


「まあ確かにな。今はとにかく何もかもを忘れて祝うか」


考えながら俺達は産婦人科に戻る。

そして親子が居る病室に向かう。

それからガラス板から先の方を見る。


そこに麻里子と産まれたばかりの赤ちゃんが寝ている。

俺はその姿をホッとした感じで見ながら。

椅子に腰掛けている幸嶋を見る。


「みんななんて?」


「お祝いだって言ってたぞ」


「そ.....そうか。有難いな」


「ああ」


余計な事は言わずに。

俺は、と思いながらガラス板の先を見る。

そしてさっき買った飲み物を幸嶋に渡した。

ポケットの中に入れていたものだ。


「.....ああ。サンキューな」


「これで良かったんだよな?お前の好きなの」


「そうだな」


ミルク紅茶。

俺はそれを渡したのだ。

それから俺達は飲み物を飲み始める。


そして一息ついた。

そうしてから俺は幸嶋を見る。

みんな飲み物を飲んでいた。


「.....本当にお前らには感謝しかない」


「俺達は何もしてないぞ。麻里子が頑張ったんだ」


「いや。お前らのお陰だよマジに。産む.....決意をさせてくれたのは」


「そんなに責任を背負うなよ。幸嶋。アタシも悪いしな。今回は」


「そ、そうだよ。幸嶋くん」


あくまで悪いのは何処ぞの馬の骨だ。

まあ簡単に言えば.....麻里子も悪いのかも知れないが。

だけどそれはこっち、あれはこっち、だ。

考えなくてはいけないだろう。

思っていると椋が寄り添って来た。


「ねえ。私にも赤ちゃんが出来たらこんな感じで祝福されるのかな」


「オイオイ。話が早いだろ」


「ふふ。でも.....何時かは欲しいよね。赤ちゃん」


「.....確かにな」


俺達は寄り添いながら目の前の幸せそうに寝ている2人を見る。

そして将来の設計図を組み立てていく。

まだ終わりは見えないけど。


でもきっと将来は明るい筈だ。

そう信じながら.....俺はみんなを見よう。

この世界は幸せな筈だから。


fin

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罰ゲームの選択で学年一の美少女に告白したりしました。その後に付き合う事に.....なりました。え?冗談だよね? アキノリ@pokkey11.1 @tanakasaburou

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