第37話 幸嶋麻里子の兄と椋と雪歩と

大学生と言えばまあ単に学校に通っていれば良いってもんじゃない。

それは知っての通りかもしれないが。

単位とか計算しながら.....ついでに言えば俺は臨床心理士を目指しているのでその為に臨床心理学持論、臨床心理面接持論とか取らないといけない。

これは必須科目なので、だ。

まあ簡単に言うなら非常に面倒臭い。


因みに椋は何故俺と同じ大学にしたのかと言うと。

色々な意味で医者になりたいそうだ。

医者になって.....患者に接したいそうだ。

自分の頭はこのぐらいにしか使えないだろう、という事もあって医者になりたいそうである。

やっぱり椋は凄いなと思う。


流石は俺の彼女であり。

将来の婚約者であり。

そして.....優しい家族の元で育った女性だな、って。

そんな感じで凄いなって思う。

俺は思いながら大学のキャンパス内を歩いていると。


「雪歩くん」


「椋。どうした?.....用事は終わったのか」


目の前からTシャツにジーパンにキャップを被った薄化粧姿の椋がやって来る。

因みにこのキャンパス内では有名な話だ。

俺と無垢の関係性は、だ。

あまりにも有名な話で外まで漏れている様だが。

思いながら椋を見る。


「雪歩くんに早く会いたかったから切り上げたの」


「いや。そんな事をしなくても会えるじゃないか。君の将来に関わるかもしれないぞ?」


「.....いや。これで良いの。私は雪歩くんの彼女だから」


話ながら椋は和かな感じを見せる。

それから、そういえば今日は幸嶋くんは一緒じゃないの?、と聞いてくる。

因みに幸嶋くんというのは麻里子。


ああこれだけの説明じゃ分からないかもしれないが妹、幸嶋麻里子の兄である。

幸嶋康介(ゆきじまこうすけ)。

つまり不良のあの娘達の麻里子の兄だ。

偶然この大学で出会ってから.....今に至る。


幸嶋は医者を目指している。

因みに麻里子だが.....真面目系になってしまって今は高校に真面目に通っている。

人ってのは変わるもんなんだな。

あのモヒカンが.....ねぇ。


「でも本当に変わるもんなんだね。人って」


「.....まあビックリなもんだよな。今思っても」


「.....ふふっ。ね」


「佐藤はこれからドイツ語の勉強とかするらしいから。.....俺と君だけだ」


「じゃあ.....食堂に行かない?」


それは良い考えだな。

俺は思いながら.....歩く。

そうしていると目の前から大学の先生がやって来た。


あれは.....田中祥保(たなかさちほ)先生だな。

30代の女性の教授である。

長い黒髪と白衣が特徴的。

俺達を見ながら笑みを浮かべる。


「相変わらずに熱いね。2人ともに」


「はい。激アツですね」


「おや?君はパチンコでも打った事があるのかね?」


「パチンコって.....」


「私はギャンブラーだからな」


ギャンブラーを告白するなよ。

思いながら俺達は顔を引き攣らせながら教授を見る。

相変わらず.....だな。


教授は、まあ休みの時にしか行かないが、と言ってくる。

いやそういう問題じゃない。

俺は顔を引き攣らせながら見ていると。


「まあ冗談はさておき。.....君達の事は常に気に掛けているからね。私が」


「.....」


教授は知っている。

何を知っているかというと。

遠山が死んだ事件の事を、だ。

何故知っているかというと。


遠山の親戚に当たる。

つまり叔母が.....この人だから。

だから知っているのだ。

彼が死んだ時も葬儀に出たそうだ。


「.....やれやれだよ。全く。彼は結局何も変わらずして死んだしな」


「.....彼は.....まあその。不良だったしですね。.....教授に変えれる様な性格だとは思いません」


「君達はその意味でこの学校に来たのだろう。救える命があればという感じの為に」


「そうですね」


「です」


全くアイツという男は。

今も生きていればぶちのめすぐらいだ。

どこまで迷惑を掛ければ気が済むのか、という感じで怒る。

死んだ本当にクズな人間を思い出しても仕方がない。

それにアイツは最低だったしな。


「.....まあ何かあったら私の部屋に来たまえ。その時は歓迎する」


「はい。教授」


「ですね」


そして、うむ、と言いながらそのまま書類を持つ手をまた変えて。

そのまま、では失礼する、と言って去って行った。

俺達はその姿を見送ってから見つめ合う。

それから前を見た。


「遠山.....何で性格が壊れたんだろうね。あんな良い人が居たのに」


「よく分からない。.....だけど今言えるのは.....あの人を見ていると本当に救いようが無かったのか、という感じだな。やっぱり」


「そうだね。.....うん」


「.....そんな事を考えてもアイツはクズだったからどうしようも無いんだけど。でも.....何か.....何か引っ掛かるんだよな確かに」


「.....私はやっぱり君が好きだな」


「.....いきなりどうしたんだ?」


何時迄も優しい君が大好き。

と言いながら俺を抱き締めて来る椋。

それから笑みを浮かべた。

俺はその様子に恥じらいながらも笑みを浮かべる。

全くこの娘ったら、と思いながら。


「.....君の方が医者には向いていると思うよ」


「そんな事は無いからなぁ」


「そんな事あるって」


「.....」


俺たちはクスクスと笑い合いながら居ると。

やれやれお熱いな、と声がした。

背後を見るとそこに幸嶋が立っている。

クールな感じのイケメン。

幸嶋は、終わったんだけど今良いかな、と声を掛けてくる。


「どうした?」


「まあ取り敢えずお茶でもしないか?」


「.....3人で?良いよ」


「麻里子の事についてなんだが.....かなり悩みがあってな」


「.....?」


俺達は顔を見合わせてからそのまま幸嶋を見る。

幸嶋はかなり複雑な顔をしていた。

何だろう、と思いながら俺は顎に手を添える。

それから食堂にやって来る。


すると衝撃の事実がその食堂で明らかになった。

お前らだから話す、と言われたのだが.....なんと.....。

麻里子が妊娠しているかもしれない、という事をであるが。

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