大学生になった春

第36話 茨城、田中に告白する

そのパーティーから丁度2年経った。

俺は医療関係の大学に入学して.....椋も同じ大学に入学した。

まあ唯一違うのは椋は首席の合格だ。

因みに田中と須藤は近隣の大学に入学。

交流は続いている。


その中で。

綾香と西島君はそれなりの仲になった。

そして田中と茨城だが.....そのままである。

相変わらず茨城は片想いのままの様だ。

俺は苦笑しながらその光景を見る。


「それにしても卒業してから.....何だかずっと夢の様な感じだな」


「まあ確かにな」


「それはまあ.....うん」


俺と田中と首藤はひだまりに集まっていた。

因みに今日は椋は習い事。

茨城は部下の青嵐さんとかと遊びに行っている。

母様の美咲さんがやって来た。

なーに夢とか言っちゃってんのよ!、と言いながら。


「まだまだ甘い夢は続くよ!甘い夢が!」


「.....いや。続く方がおかしいのでは?」


「そろそろ取り敢えずは現実に戻りたいっす」


「だな。でも戻りたくも無いな」


「夢もへったくれも無いね〜」


そうしていると奥から高校生になった楓さんがやって来た。

ニコニコしながら、だ。

楓さんは今高校1年生の.....なんというか。

高校は洗顔で突破して生徒会の書記をやっている。

おおう天才は.....天才なんだなって思う。


「また来てくれて有難う御座います。皆さん」


「ここが居心地が良いからな」


「だな。.....お陰で授業出たく無くなる」


「いや。駄目だろ。単位は取ろうぜ」


つーか大学って面倒だよな。

自分で科目決めないといけないし単位の計算もしないといけない、と言いながら須藤が後ろに倒れて言う。

俺は、確かにな。計算はしないといけないしな、と言いながら苦笑い。

田中は、俺ら頭悪いから大丈夫じゃねーか?計算しなくても、と言い出す。


「良くねぇよ。何言ってんだよコラ」


「計算めんどーい」


「そうだーい」


「.....アンタ達.....」


美咲さんが苦笑い。

そうしていると奥から、やあ。遅くなってごめんね、と一吾さんが顔を見せる。

その手にはハンバーグセットとかある。


俺達が注文したものだ。

この後にまた講義を受けないといけないのだが。

その合間に来たのだ。

何せひだまりの料理は美味しい。


「.....そういやお前、今日はシフト無いのか?」


「ああ俺?そうだな。無いよ」


「でもこの後はたんまり働いてもらうわよ」


「.....勘弁して下さい.....」


たんまりって嫌だな。

俺は顔を引き攣らせて考えていると。

ガチャッ、とドアを開く音がした。

それから店内に、よお、と入って来る。

茨城だ。


「げ。田中も一緒.....」


「悪いか?田中君が一緒で」


「.....い、いや。別にそんな事は無いけどよ」


ジャンパー姿の茨城。

コイツは今、働いている。

将来も見据えたが家の為に働きたいと言い出したのだ。


それで今は介護施設で働いている。

俺は、本当に変わったもんだな、と思いながらその姿を見る。

昔とはえらく。


「んで?今日はシフト無いの?お前」


「無いよ。一応、休み取った」


「.....そうなのか」


「ああ。.....その。.....元気にも会いたかったし」


「.....なんで俺だけ下の名前で呼ぶのか?」


しかし思っていたがコイツは何時になったら気が付くのか?

俺は苦笑しながら首藤もみんなも苦笑する。

実のところは俺以外はみんな知っているのだ。

田中に対して茨城が恋をしている事を。

でも鈍感すぎて伝わらない。


「.....良いじゃねーか。別に」


「.....???.....まあ良いけど。座ったら?」


「.....そうだな。座れよ。茨城」


「おう」


でも良いダチにはなった。

茨城とは、だ。

男友達の様な関係性が有るのだ。

俺は注文する茨城を見る。

コーヒーか。


「.....で?何しに来たのお前」


「青嵐が行ってやって下さい!!!!!、とか言うから来たんだけど。何で?」


「.....それはお前に配慮しているからだろうな」


「.....は?.....あ」


「そういうこった」


真っ赤になる茨城。

俺はその姿を見ながら田中を見る。

田中は???を浮かべている。

いやー.....マジに鈍感。

俺は顔を引き攣らせた。


「.....でももう良いかもな。学校卒業したし」


「.....?」


「.....なあ。元気」


改めて茨城は田中に向く。

そして真っ赤に赤面しながら立ち上がる。

まさかコイツ、と思いながら首藤達と目を丸くして見る。

それから茨城は押し黙る。

え?、と田中は呆然とした。


「.....はい?なんですか」


「お前が好きだ!元気ぃ!!!!!」


「.....ああ。成程.....てぇは!!!!!!!!?」


「.....叫ぶなよ.....」


「確かにな.....」


田中に好きと遂に伝えた茨城。

突然の大声に田中はビックリしてずり落ちた。

俺はその態勢を立て直す田中を見る。


その態勢を立て直すのを手伝いながら俺は茨城を見る。

茨城は、鈍感だから!もうこれしか無いから!、と言う。

滅茶苦茶に赤くなりながら、だ。


「.....ちょ。ちょっと待て。何故に俺!?」


「お前が好きだから。仕方が無いだろ!2年前から好きなんだ!」


「うっそだろお前.....」


「周りはもう気付いているのに!お前だけ!気付かないから!最悪!」


「雪歩!?首藤!?お前ら.....!?」


「お前が気付くまでと思ったら。2年も掛かりやがってこの鈍感」


「そうだそうだ」


田中は顎が落ちそうな程に愕然としている。

そりゃそうだろうけど。

でも気付かない方が悪い。

思いながら見ていると田中は、でも信じられないんだが、と言った。

信じさせてやろうか、と茨城は田中の肩を掴む。


「.....!?」


「「「「!!!!?」」」」


そしてそのまま茨城は田中の唇にキスをした。

俺達は、あらまぁ、と言いながら見る。

楓さんも口元に手を添えて真っ赤になる。

俺はそんな楓さんを見てから俺は田中を見る。

田中は唖然としていた。


「お、お、お前!?」


「.....私はこれだけ好きだ。だからお、お前と付き合いたい!」


「マジかよ.....」


「だ、ダメか?」


「.....駄目って訳じゃねぇけど.....俺なんか好きになってどうするの?お前」


「だって好きだから。お前が」


「.....!」


やれやれ、と思いながら俺と首藤は顔を見合わせる。

それから田中に抱き付く茨城を見る。

茨城は、お前が好きだから.....お願い、と頼んでいた。

そんな田中は、分かった!離れてくれ!付き合うから!、と大騒ぎ。

美咲さんが、若いって良いわねぇ、と言い出した。


「私もそんな感じだったわ!昔!キスをいきなりしたの!」


「そうだったな。美咲」


「.....お母さん.....それは.....」


「まあ有り得そうだな。.....美咲さんなら」


愕然として赤くなる楓さん。

落ち込むというか、言うな、的な感じだ。

俺はその言葉に苦笑い。

そして俺達は笑いながら見ていた。


こうして.....田中と一応.....茨城は付き合う事になる。

田中は、付き合い方が分からないんだが!、と言っていたが。

全く.....幸せってのは良いな本当に.....だ。

何時まで経っても。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る