第35話 椋の誕生日会とバイト始動

7月14日になった。

今日は土曜日であるのだが。

遂に俺は本格的にひだまりで働きだした。


俺はひとしきりに準備をして覚悟を決める。

さて、と思いながら、であるが。

そして目の前のエプロンを着けている椋を見つめる。


「準備は整った?」


「.....そうだな。少しだけ緊張するけど」


「.....うん。じゃあ.....パーティーだね」


「.....そうだ.....え?」


俺は驚きながらだったが。

その中で店へのドアを開ける椋。

それから俺は目の前を見る。

そこには、楓さん、茨城、綾香などが居る。

何やっているんだコイツら。


「今日は秘密にしていたけどパーティーを開く様にしたの。実はね。丁度.....雪歩くんも働き出したから.....良いかなって思って」


「.....内緒ってそれは酷いな。.....でも嬉しい。凄く嬉しい」


「アハハ。喜んでくれて有難う」


そして見ていると.....クラッカーを鳴らした。

ハッピーバースデー!、と言いながらみんながである。

椋は、エヘヘ、と照れながら頬を掻く。

それから、みんな有難う!、と笑顔を見せる。


「お姉ちゃん。今日まで頑張ったね」


「.....そうだね。色々あったけど。でも.....本当に有難う。みんな」


そんな感じで話が進む.....が?

今日はバイトはどうなるんだ?、と思っていると。

一吾さんがやって来た。

それからこんな事を言う。

今日は午後からのオープンにしたんだ、とである。


「.....君達が使うかと思ってね」


「.....相変わらずですね。一吾さん」


「私は採算など求めてないからね。.....ハハハ」


「.....」


そんな一吾さんの顔を見ていると。

美咲さんがケーキを持ってき.....ウェディングケーキの様な感じだった。

何.....!?、と思いながら見つめる。

ニヤッとして美咲さんは、このケーキはバースデーケーキじゃ無いわよ、と言い出してきて、ウェディングケーキよ!、と言った。

オイオイ!?


「ウェディングケーキってお母さん!?結婚する訳じゃないから!今は!」


「良いの良いの!いずれは結婚するのだから!」


「早すぎだと思う」


茨城も珍しくツッコミを入れる。

すると横から田中が、まあそうだな、と突っ込んだ。

その瞬間に茨城はビクッとしてそのまま逃げる。

え?、と田中は反応した。

田中.....お前も大変だな、と思いながら田中を見る。


「何だ茨城の今の反応?」


「.....アハハ.....まあお前も大変だなって感じだ」


「へ?」


「鈍感〜」


「へ?」


姫子ちゃんがニヤニヤしながら田中にそう言う。

田中は、???、を浮かべながら、何だよお前ら?、と言ってくる。

俺はそんな言葉に、まあお前が気付くまでは何も言えない、と言いながら俺は苦笑しつつ見る。

田中は、なんだよ〜、と言いながら苦笑する。

それを見ながら俺はそのまま、ハハハ、と笑う。


「でもまあそれは良いけど.....ウェディングケーキっちゅーのが良いな。結婚かー」


「はえーよ」


「そうだね.....。確かに.....」


困ったもんだな、と思いながら美咲さんを見る。

美咲さんは、それから!、と何かを取り出す。

それは.....婚約指輪だ.....!?

俺達は真っ赤に染まる。

美咲さんはニコニコする。


「どうせ結婚するなら!これがベスト!」


「ベストって.....美咲.....」


「お母さん.....やり過ぎだよ.....」


「アハハ」


その結婚指輪はツインだった。

何方も金属で出来ているらしい。

俺はその事に椋と顔を見合わせて頬を赤くする。

周りは.....祝福モードだった。

茨城も笑みを浮かべている。


「それじゃ.....みんなからの誕生日プレゼントだね!」


「え!?楓.....!?」


「私達みんなプレゼントを用意したの!それぞれでね」


「.....それって何処に.....?」


「この家の中に置いてる。.....後で見たら良いよ。椋」


「.....お父さん.....」


すると茨城が一歩を踏み出した。

それから椋を見る。

椋は少しだけ硬直していたが。


眉を顰めるのを止めて茨城に対峙する。

心配しながら見ていたが。

茨城は、その。悪かったな、と言い出す。

それから手を差し出す。


「音無。.....アタシは.....アンタと田中に酷い事をした」


「.....良いよ。そう思ってくれて感謝しかない。私は.....アンタを許さなかったけど.....考えたの。.....貴方は.....変わったって。だから私も変わろうって」


「.....私の罪は消えない。.....アンタ達にした事も。.....だから反省するけどその中でもアタシは.....アンタ達にこれだけは。.....おめでとうって言いたい。.....今日はおめでとう。誕生日」


「.....!.....変わったね本当に。貴方も」


「アタシは変わらないよ。クズだから。.....でも田中に救われたから。.....私は今度は恩返しするべきなんだ」


そして決意した様に周りを見渡す。

周りのみんなは真剣な顔で見ていた。

茨城を、だ。

その中で茨城は頭を思いっきり下げる。

そして、アタシを信じてとは言わない。だけどもし良かったら見守ってくれ、と言い出した。


「.....まあそう言うなら」


「そうだな。首藤」


「.....だね」


「うん」


茨城は涙を浮かべる。

そしてそのまま一筋の涙を流した。

それから.....笑みを浮かべる。

有難う、と言いながら、である。

俺達は顔を見合わせて頷いた。


「.....見守るさ。俺達は」


「ここまでやってくれたんだから。.....感謝しかないよ」


「.....アンタら.....有難う」


取り敢えずは.....何というか。

話が進みそうだな。

俺達は笑みを浮かべながら茨城を見る。

茨城は頭をまた下げながら.....涙を流した。


「よーし!そうなるとパーティーの始まりだよぉ」


「まあ.....そうだな。美咲」


「ノリが弱い!」


「.....いや。お母さんのノリが強すぎなんだと思う」


全く、と言いながら楓さんは苦笑い。

そして俺達は頷き合ってから笑みを浮かべる。

それから.....パーティーが始まった。


俺の事と椋の祝いの事で、だ。

本当に幸せなこったな。

そう考えながら俺は周りを見つめた。

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