第28話 色付く世界と椋とのお家デートの計画と
茨城が恋をした。
その相手は.....田中だ。
つまり俺の友人である。
俺は顔を引き攣らせながらだったが、変わったな茨城も、と思ってしまった。
嬉しいっちゃ嬉しいのだ。
茨城が.....そんな感じなのが、だ。
思いながらの帰り道だ。
椋から電話が掛かってきた。
『ゴメンね。まさかそんな事を楓が計画しているなんて思ってなかった』
「うん。.....でも大丈夫だ。俺は働く事を決めたよ。ひだまりでね。良い人達ばかりだしね」
『.....そうなんだ。.....ふふっ。嬉しいな』
「ああ。.....所で椋」
『何?雪歩君』
肝心だが、勉強を教えてもらいたいんだけど、と椋に言ってみる。
丁度.....小テストが近いのである。
その為に椋に教えてもらいたいと思っていた。
すると椋は、うん。当たり前だけど良いよ、と言ってくる。
そして、じゃあ雪歩君の家で教えてあげよっか、と言う。
「.....それはお家デートって事かな」
『そうとも言えるね。アハハ』
「分かった。じゃあお家デートしようか」
『でも雪歩君のお勉強が目的なのは本当だよ。.....雪歩君の事.....色々あったからちょっと心配』
「.....勉強の面は大丈夫だと思うけどね。.....でも何だか気になる部分はあるから。.....見てくれると嬉しいかも」
分かった。じゃあ何時が良いかな、と俺に言ってくる椋。
俺はその言葉に、うん。じゃあ.....明日でも、と答える。
明日は土曜日なので、だ。
椋は、うん。じゃあ分かった。行くね。.....とびっきりの服で、と言ってくる。
赤面しながらも俺は、有難う、と答えた。
それから電話を切る。
「.....?」
そして目の前を見ると。
綾香が.....居た。
それも見知らぬ少年と一緒に、だ。
む!?もしや危険な目に.....、と思ったのだが。
あれは違うな、と思った。
何故なら綾香は赤くなっている。
そうか.....綾香も恋をしているんだな、って思える。
声を掛けるのはマズイか。
「.....綾香も恋を.....か。.....良い恋になったら良いけど」
俺は思いながら笑みを浮かべる。
そして歩いて行く綾香の背を見た。
俺は別方向から帰るつもりで踵を返す。
すると、ちょ!お兄!、と声がした。
ビックリしながら背後を見ると。
そこに少年と綾香が居た。
「お兄。見掛けたなら声を掛けてよ」
「い、いや。邪魔するのは悪いかって思ったんだよ」
「そんな事無いよ。.....あ。この男の子と会うの初めてだよね。私の彼氏」
少年は頭を律儀に下げた。
それから髪の毛を弄って整えながら。
俺を真っ直ぐに見てくる。
好青年な感じで、だ。
それから、初めまして。お初に預かります。お兄さん。僕は西島雄大(にしじまゆうだい)と言います、と笑顔を浮かべる。
圧巻された。
「.....お、おう」
「ちょ。お兄。圧巻されちゃ駄目だよ」
「いや。泣けてくる感じだね」
「.....何が?」
「お前も成長したんだな、って思ってしまったんだ」
もー。お兄。小学生が彼氏持ったら良くない事なんてないよ、と言ってくる。
高学年は恋をするんだから、とも。
でも悲しいよ俺。
だってあの綾香だぞ。
昔は、お兄ちゃん、と呼んでいた綾香に彼氏ってお前。
涙が出る。
シスコンとかじゃ無くて時代を感じる。
俺は苦笑しながら綾香を見る。
「綾香。.....何時から付き合い始めたんだ?」
「.....そうだね。この前からかな。私が告白したの」
「本当に綾香は恋のマスターだな」
「そんな事無いよ。お兄」
恥ずかしそうにする綾香。
俺は西島君を見る。
それから頭をゆっくり下げた。
綾香はお菓子を要求してくるけど.....それでも良い女の子だ。.....君なら任せれそうだね。西島君。.....頼んだ、と笑みを浮かべる。
「.....お兄さん.....」
「綾香。俺の事はもう良いからな。服装選びとかしてくれて」
「そう言うわけにはいかないよ。お兄。.....デートプランとか考えれるの?」
「.....う.....」
全くね。お兄には私が居ないと駄目だね、とニヤニヤしてくる綾香。
煩いなこの子供。
思いながらも、確かにね、と答える。
それから俺は綾香と西島君を見る。
「でもお似合いだよ。2人共。.....本当にね」
「有難う御座います」
「お兄。有難う。.....で。今日は椋さんに会ったの?」
「.....椋は今日は居ないが.....まあ衝撃的な話ならあるぞ。後でしてあげよう」
「え?それって楽しみだね」
いや。割と本気で衝撃だったからな。
思いながらクスクスと茨城の事を思い出す。
そして苦笑した。
その後に俺は綾香を見つめる。
「じゃあな。綾香。デート中なんだろ?」
「いや。そんなんじゃ無いけど.....」
「まあまあ。言うな。.....じゃあな。邪魔者は去るよ」
「もー。お兄の馬鹿」
そして俺は慌てる綾香を他所に。
そのまま西島君に頭を下げてから去る。
別方向に、だ。
ちょっと遠回りになるけど。
折角のデートを邪魔したく無いしな。
「.....今日は良い日だな。.....いや。何時もか」
それから俺は空を見上げる。
夕焼けの空を、だ。
そしてそのまま帰宅した。
で。
綾香が俺が帰って来たあとにこの家に来てからドロップキックを打ちかましてきた。
何で!?、と思いながら直ぐに綾香を見る。
綾香は口を歪めて頬を膨らませている。
やれやれ.....。
「いきなり何するんだよ綾香」
「何だかドロップキックを打ちかましたくなったから。お兄がムカつく」
「おう.....そうか」
「まあでも。.....お兄。応援してくれて有難う」
「気にする事は無いんだが.....その代わりと言ったはなんだけど」
今度は椋と家デートするんだが.....また教えてくれないか色々と、と綾香に言葉を発して向く。
綾香は目を丸くしていたが、ふむ。お菓子4つ分ですな、と答えてくれた。
それで良いのか、と思ったがまあ綾香だしな、と思いながら頷く。
分かった、と言いながら、である。
それから俺はお菓子を出した。
綾香に金貨の様に渡す。
そんな綾香は確かに頂戴しました、と俺にニコッとした。
その綾香を見ながら聞いてみる。
「恋人の西島君。良い人じゃないか。.....良かったな。綾香。良い人が見つかって」
「うん。とても良い人だよ。お兄みたいに。.....私の事.....しっかり見てくれるんだ。裏表全部。だから彼が好き」
「.....そうか。.....まあ彼氏なんぞ早いかって思ったけど良い彼氏だしまあ良いかって思ったよ。ハハッ」
「そうなんだ。フフッ。.....でも本当に有難うね。お兄」
「ああ。.....気にする必要は無いから。大丈夫だよ」
それから俺達は見つめ合いクスクスと笑い合ったりした。
すると綾香は真剣な顔で、お兄。お家デートと言ったら2人が接近出来る機会だから、と向いてくる。
俺はその言葉にハッとした。
うん?よく考えたが綾香もお家デートするのか、と言ってみる。
綾香は、ふぇ?、と呟きボッと赤面した。
それから両腕を振り回してくる。
「も、もう。お兄!.....揶揄わないで」
「俺は至って真面目に聞いているよ。アハハ」
「もう。お兄の意地悪。バカ」
「ハハハ」
そしてそんな本日も。
綾香によって色々なデータをめいいっぱい叩き込まれた。
場合によるが、全てをお兄から求めない方が良い、という感じで、だ。
俺は頷きながら説明を真剣に聞いた。
それから実行の準備を進め始める。
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