最終章 その世界が最悪だとしても

歩み出せる世界

第27話 茨城の恋愛と何これ

「お兄さん」


「.....何だい?楓さん。俺を呼んでから」


小テストを終えた感じの7月10日。

因みに来週辺りにホームパーティーをしようという形になった日。

俺は楓さんが相談に応じて欲しいと言われたのでそのままひだまりにやって来た。


コーヒーをご馳走になりながら楓さんを見る。

楓さんは俺に柔和に向いてくる。

因みに椋だが今日は習い事があるらしく今は家に居ない。

その為に家に居るのは俺と楓さんとご家族だけだった。

そんな楓さんは俺に向いてくる。


「お兄さんに唐突に相談ですが.....ひだまりで働きませんか」


「え?このひだまりで働く?.....それは多分構わないけど俺は高校生だけど.....良いの?」


「はい。高校生で働いちゃいけないって事はこのお店には無いですよ」


「そうなんだね。.....じゃあそれならお手伝いの意味で働きたいかも」


「有難う御座います。実は.....従業員を募集していたので助かります。レジ打ちじゃなくて接客なんですけど.....大丈夫ですか」


「全然平気だよ。.....寧ろ.....椋の居る場所にもっと近付ける。これは大チャンスだと思うからね」


そう捉えてくれるんですね。

と笑顔を浮かべる楓さん。

その姿を見ながら俺は、ついでに言うなら給料も要らないけどね、と言う。

俺はあくまでお手伝いという形で来ているから、とも。

楓さんは首を振る。


「働かざる者食うべからずの方針です。.....お給料は絶対に出しますよ。倍にして出しますから」


「有難いけど普通で良いよ。でも.....良いの?」


「.....はい。お姉ちゃんも望んでいますから。家族も。.....私の提案だったんですけど上手くいきそうですね」


「君の提案か。.....有難う楓さん」


「いえ。私は特に何も。提案しただけですから。.....後はお兄さんが決めるだけでしたからね」


笑顔を浮かべながら俺を見てくる楓さん。

俺はその姿を見ながら苦笑する。

そうしていると.....窓の外に見知った顔が立っていた。


手を振っているが.....。

何と派手な感じの上着を着た茨城である。

俺は目を丸くしながら楓さんに向く。

楓さんはニコッとした。


「相談が有るって聞きました。だから呼びました。.....その相談ですが.....茨城さんも有るみたいなんです。電話番号やメールアドレスをお姉ちゃんを伝にして聞いちゃいました」


「.....ああ.....そうなんだ.....ビックリした。何故、茨城がこの場所にって思ったから.....でもその相談って何?」


「.....茨城さんの恋です」


「.....は.....い?」


呆けて唖然とした。

茨城が.....えぇ!?!?!、と思いながら俺は愕然とする。

それは一体どういう事だ、と思っているとひだまりに入って来た茨城。


それから、田中、と言ってくる。

よく見れば.....姫子ちゃん?らしき女の子も一緒だ。

促す様にして茨城は前に姫子ちゃん?らしき女の子を押す。


「ほら。姫子。.....はじめましては」


「はじめまして!わたしはひめこです!」


「ああ.....初めまして」


「姫子ちゃん可愛いですね。茨城さん」


「ああ。アタシの大切な妹なんだ」


茨城は言いながら俺達を見てくる。

すると茨城は俺に向いて赤面をした。

まさか.....この反応は.....!?、と思ったのだが。

違った様である。

そして茨城は、た。田中。.....実はな。不動産を紹介してくれた田中の方。お前の友人の田中の件で相談が有るんだが、と言ってくる。


「え?田中?.....アイツに何の用事だ?」


「おねーちゃん。いえる?」


「.....じ、実は.....その。.....こ、恋をしたみたいでな.....お前の友人の田中に」


「そうか.....は?.....ホァ!?」


「その.....一生懸命な姿が良いなって.....思ったんだ。あ、アタシの為に一生懸命に動いてくれ.....るから」


赤くなりながらの告白。

マジかコイツ。

思いながら俺は目を丸くする。

アイツ.....田中っておま。

まさかの田中!?


いや。確かに良い奴だけど!?

そんな単純に恋って落ちるものか!?

俺はビックリしながらその事を聞こうと茨城を見る。


だがその時。

ヌッとテーブルの端から人影が。

その姿は.....エプロン姿の美咲さんだった。


「聞いたわよ?.....恋をしているんだって?」


「だ、誰だコイツ!?何だこのクソガキ!?」


慌てる茨城。

俺はその言葉に説明する。

ああ。成程。音無の、と納得してホッとする。


そして茨城を見ながら、フッフッフ、と美咲さんは言う。

それから、恋愛マスターの私に任せなさい、と言う美咲さん。

え?恋愛マスター?


「いや。ちょっとお母さん.....」


「フフフ。これでもお父さんを落とした私でもあるんだから。任せなさい」


「.....美咲さん.....流石に今回は無理でしょう」


「無理じゃないわ」


だが茨城を見て俺達は驚く。

茨城は、れ。恋愛マスター、と目を輝かせている。

いやいや正気かコイツ。

単なる椋と楓さんの母親だと思うのだが.....?

俺は顔を引き攣らせながら茨城を見る。


「茨城?あまり信用すると.....」


「あらあら雪歩君。貴方は黙ってなさい」


「あ、はい」


え?俺何で黙らされた?

考えながら俺は目をパチクリして額に手を添える。

それから見ていると。

恋愛マスターと名乗る美咲さんは椅子に座った。

そしてニヤッとする。


「悩める少女よ。この私が相談に乗ってあげるわ」


「ま、マジで!?れ、恋愛を!?.....た、頼みます師匠!」


なにこれ、と目を丸くしていた姫子ちゃんが呟く様に言う。

姫子ちゃん。大人ってのは不思議であって謎なのだよ、と思いながら俺はその姿を見ていた。

楓さんも、アハハ、と苦笑いを浮かべながら結託する2人を見ていた。

そして.....ヤシマ作戦ならぬレンアイ作戦が始まる。

うーん。.....というか俺要るのか?これ。

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