第20話 敵対する事だけが全てじゃない

ひだまり、と言う店は椋の為に創った。

その事を.....楓さんから聞いてから。

俺は一緒に談笑している一吾さんと.....母親の美咲さんを見る。

本当に幸せな家庭なんだな、と。

そう思える様な感じだ。


「お父さん。お客さん居ないけど大丈夫なの?」


「今日は貸し切りにしたからね。大丈夫だよ」


「そうそう。貸し切りにしたの」


「貸し切りって.....大丈夫なんですか?」


俺は慌てる。

すると楓さんが、大丈夫ですよ。お兄さん。.....お母さんとお父さんは何時もこんな感じですから、と苦笑する。

でも生計は立っていますから、とも。

笑みを浮かべて話した。


「そうだよ。雪歩君。.....お父さんはこんな感じだから」


「そうだね。.....僕はほぼほぼ営業目的でこのお店をやっている訳じゃないからね」


「うーん.....」


えっと。

大丈夫なのだろうか、と思いながら俺は苦笑い。

でもこの一家はニコニコしている。

ケーキとコーヒー美味しかったな.....、と思う。

こんな感じだから美味しいのかもしれないけど、だ。


「雪歩くん」


「.....はい。何でしょうか」


「君は椋の何処を気に入ったんだい」


「.....椋は.....俺の過去に一緒に向いてくれたんです。.....だから好きになりました」


「あら素敵ね。.....いっちゃんとの過去を思い出すわぁ」


もー。お母さん、と苦笑いを浮かべる楓さん。

それから、良いじゃない。ロマンチックな出会い方だったのよ?、と言ってくる。

不良から守ってくれたのよ。いっちゃんが、と笑顔を浮かべる美咲さん。

そして頬を赤く染める。

懐かしいわぁ、と言いながら、だ。


「そんな出会いとはちょっと違うけど.....貴方達の恋愛もロマンチックだと思うわよ」


「.....そうかな。お母さん」


「そうよ。.....椋。良かったわね。大切にして下さる.....貴方を想ってくれる人が現れて.....お腹を痛めていたあの頃.....が.....懐かしいわ」


涙を浮かべながら泣く美咲さん。

本当にここまで色々あったわね、と言いながら椋を見る。

それから笑みを浮かべた。

椋は涙を浮かべながら唇を噛んでから涙を拭う。


「お母さん。有難う」


「ひだまり、が出来てから本当にひだまりの様に話が進むわね。あなた」


「.....そうだな。確かにね。脱サラで大変だったけど.....この日の為にあったのかもしれないね。このお店は」


「.....お父さん.....」


君は本当に無口だった。

でも君と一緒に居てくれる雪歩くんのお陰で.....笑顔が絶えなくなったね。

と言いながら一吾さんは柔和になりながらコーヒーを飲む。

そして笑みを浮かべた。


「お父さんにもお母さんにも迷惑を掛けたから。その分幸せになるから」


「.....そんな事は気にしなくて良いよ。大体、娘を守るのは親の役目だからね」


「そうね。.....いっちゃん」


笑顔を浮かべる美咲さん。

当然。楓が幸せになるのも願っているよ、と柔和な顔で楓さんに接する一吾さん。

楓さんは少しだけ恥ずかしそうにモジモジする。

そして、えへへ、と笑みを浮かべた。

それを見ながら俺に向いてくる一吾さん。


「.....雪歩くん。.....君は苦労した顔をしているね」


「そんな事は無いですよ。俺は平凡に生きています」


「.....それは無いね。僕は分かるんだ。君が.....苦労したんだろうね、という事がね」


「!」


「椋はそういうのを支えるのが心底得意だ。.....だから君の事を死ぬまで想ってくれるよ。きっと」


私達の娘だから、と肩を寄せ合う2人。

椋は、恥ずかしいよ、と言いながら赤くなる。

俺はその姿を見ながら.....笑みを浮かべた。

こんなに良い家族なんだな、と思いながら、だ。


「どんな困難でも乗り越えるだろうね。君達なら」


「.....それは無いよ。お父さん。無理もある」


「そうなの?」


「うん。.....雪歩君の.....振った女が.....雪歩君をイジメているから。まただけど」


「.....その子も現れたなら何かあるんじゃないかな。気持ちに」


お父さんは優し過ぎるよ、と言いながら怒る椋。

絶対に許せないもん、と話しながら、だ。

すると美咲さんは、貴方もやっぱり変わったわね、と頷く。

私なんかでは役に立たないかもだけどその子と心から腹を腹を割って話したらどうかな、とも言葉を発した。


「その子もきっと闇を抱えていると思うから。敵対だけが全てじゃないから。.....話をしてみるのも1つの手かもしれないわ」


「.....でも酷い事をしているんだよ?.....ソイツ」


「貴方なら話が出来るわ。椋」


「そうだね。.....でもそれでも無理だったら僕達に言うんだ。.....君を雪歩くんを楓を守る為なら何でもするから。大人に頼って」


「お父さん.....」


きっと貴方と雪歩くんなら出来るわ。

と笑顔を浮かべる椋のご両親。

俺は.....顎に手を添えた。


そうかもしれない。

今まで気が付かなかったけど.....アイツもきっと闇を抱えている。

そう.....思ってしまった。

これは優しさじゃないと思う。


「.....有難う御座います」


「.....?.....何がかい?」


「一吾さんと美咲さんの言葉の言う通りだと思います。アイツと.....過去を向き合ってみます」


「そうね。.....貴方は私の息子の様な感じだわ。うふふ」


言いながら笑顔を浮かべてから。

柔和になる2人。

そして俺は茨城の事を.....考えた。

アイツと.....話をしてみよう、と、だ。

椋も何か納得している様だった。

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