雪歩が過去の壁を壊す時
第18話 揺れる世界と椋の怒り
昼休みの昼食中。
椋がこう言ってきた。
私は.....貴方が別の学校に行った事.....とても嬉しかったと同時に悲しかったんだ、とポツリと呟く様に、だ。
俺はその事に、そうだね、と言いながら椋を見る。
椋は、でもこうして付き合えた。それはとても幸せな事なの。私にとっては、と言葉を発してくる。
そして、貴方がやっぱり好き、と言いながら俺を見上げてくる。
赤い顔で、だ。
「好きになるって不思議だね。.....私はかけっこだけで貴方に惚れた。.....本当に不思議だよ。.....でも好きになって良かった」
「俺も君の事.....大好きだ。そんな優しさで包んでくる君が、だ」
「以心伝心だね」
「何もしなくても伝わり合うよ」
そして俺達はクスクス笑った。
それから笑顔でまたイチャイチャする。
そうしてから教室に戻ろうとした時。
俺は目の前から歩いて来る女子を見て驚愕した。
何を驚愕したかと言えば.....コイツは。
☆
「何アンタ。田中じゃん」
「.....お前.....茨城じゃないか.....!?」
「.....この学校だったなんてね。それにアンタも。髪引っ張った事忘れてないから」
「それはお互い様でしょう。.....貴方のやった事はもっと酷いから」
へえ?言う様になったじゃない、と言って来るこの女。
コイツは.....茨城泉(いばらきいずみ)。
ロングヘアの癖にお淑やかさは無く口答えが悪い。
そして俺は冷や汗が出る。
顔立ちも嫌に整っているが.....、と思いながら茨城を見る。
コイツだけは会いたくなかったな.....今になってまさかだった。
転校して来たって事か.....。
「.....何故貴方がこの場所に居るの」
「私、転校して来たんで。.....それで居るんだけど。何か?」
「ああそう。.....じゃあ行こうか。田中君」
「そうだな」
言いながら歩くとすれ違い様にこう言われた。
アンタの様なゴミクズがこんな場所に居るとはね、と。
その言葉に1番にキレたのがなんと田中だった。
そして首藤も一緒だ。
「偶然とやって来てみたらお前さん.....どっかで見た顔だな」
「それな。首藤」
「は?誰?」
俺は田中。
んでこっちは首藤、と紹介しながらも。
まあどうでも良いけどそんな事は、と言いながら真顔になる田中と首藤。
それから、そいつイジメんなら容赦しないからなお前、と言う。
かなり喧嘩腰だ。
ちょっと待て知っているのか?この女を。
「まあ知ってるぜ。.....お前は雪歩を振った女だろ?それもやり方がクソ最低な。最低な野郎だと思っていたけど割とガチに最低だな」
「おーそうそう」
「は?初対面の女に対してマジに何言ってんの?アンタら。だっさ」
「そっくりそのまま返すぜ。お前の方がダセェんだよ。大体イジメとかする馬鹿が情けない」
田中と首藤と茨城はバチバチと火花でも出しそうな感じだ。
俺は慌てながらその2人を止めようとした時。
止め止め。くっだらない、と言いながら茨城が声を出した。
それから俺達を睨む。
そして、キモい奴にはキモい奴が絡むんだね、と言いながら去って行く。
田中が鬼の形相で、は?、と威圧する。
「俺達は少なくとも良いけどな。.....その2人を馬鹿にするんならマジに容赦しねぇからな。イジメすんなよ。.....お前の事フルボッコにするぞ」
「.....女とはいえ容赦はしない」
「はっ。まあ良いけど」
言いながらそのまま吐き捨てる様に去って行った茨城。
俺はその姿を見ながら盛大に息を吐く。
そして胸に手を添える。
心臓が脈打っていた。
激しく、だ。
「.....大丈夫?田中君」
「ちょっと怖いかも」
「.....じゃあ私が握ってあげる。手を」
「うん.....」
ったく忌々しいクソ顔を見てしまった、と笑みを浮かべる田中。
それから、確かにな、と言いながら首藤は背後を睨む。
そして、まあ安心しろよ。俺達居る限りは絶対にお前に手出しはさせないから、と笑顔を浮かべた。
つーかさせるかよ、と言いながらも、だ。
「.....保健室行くか?」
「.....大丈夫だよ、首藤」
「.....本当か?.....なら良いけど」
「.....田中も有難うな。マジに」
いや。全く問題無いけど、と田中は笑顔になる。
それから、だけどクソ忌々しいな、と言いながら俺達は帰る。
そして手の震えを.....椋が支えてくれた。
イジメ.....か。
あの女がまた俺達の前に来るとは、な。
偶然にも程がある。
思いつつ、だ。
クソッタレ、だ。
☆
幸せをぶっ壊す様な奴には会いたくないものだな。
思いながら俺は放課後を迎える。
今日は進路指導とかあって疲れたな。
そう思いながら田中と首藤を見る。
田中は、今日はどうするよ、と話している。
「.....今日は椋と一緒に帰ろうかな」
「.....そうか。.....クソ女に会わん様にな」
「俺達も気を付けるが」
「.....有難うね。お前ら」
「掃除当番もあるし。俺は残るから先帰ってくれ。首藤」
「あいよー」
言いながら俺達は別れつつそのまま帰宅.....出来なかった。
何故なら帰り道の目の前に茨城が居る。
ニヤニヤしながら立ちはだかっていたのだ。
なんだコイツは次から次に。
「貴方しつこいんだけど。茨城」
「.....はっ。随分と強くなったじゃない。アンタ」
「いやいや。強くなったんじゃないけど。大人になったんだよ」
「.....それはつまり私がクソガキって言うの?アンタ本当に生意気ね」
真顔で言う茨城。
挑発にも程がある。
俺は少しだけ睨みながら茨城を見ながら自律神経の乱れを感じた。
暑くなってきてしまう。
困ったものだ。
「行こうか。雪歩君」
「そ、そうだね」
言いながら俺達は歩き出したが。
その道を茨城が遮る。
生かせない、的な感じで、だ。
その事に段々と椋が腹を立てて来ているのに気が付いた。
「.....退いて」
「退かない。っていうかアンタら付き合ってんの?ださっ」
「.....茨城!もうその辺にしてくれよ!」
俺は必死に頼み込むが。
茨城は退かない。
このクソ女、と思いながら居ると.....茨城が退いた。
それから俺達を見てくる。
「まあ丁度良い機会だし教えてあげる。.....アンタら本当に付き合いが似合ってないから」
「.....」
そんな感じでケラケラ言いながら茨城は去って行った。
俺は心臓の脈打つ鼓動を感じながら.....必死に抑える。
いけない.....かなりドキドキする。
思いながら椋を見ると。
椋はかなり怒りながらの中だったが俺を心配してきた。
「私達がいれば.....あんな奴大丈夫だから。.....君を絶対に守るからね」
「本当になんであんなのに初恋が向いたのか不思議だよ。今となっては」
「.....そうだね。.....でもあんな女はもう忘れよう。.....私だけ見て。大丈夫だから」
「.....うん」
でも心臓が痛い。
肋間神経痛の様に、だ。
困ったものだな。
考えながら俺は.....去る茨城の背後を見ていた。
馬鹿野郎の背中を、である。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます