第17話 椋の添い寝

椋と昨日から俺が告白して付き合い始めた。

俺はその事を田中と首藤にも知られていた.....のだが。

そんなこんなの大忙しで俺は翌日を迎える。

丁度今日からだがこの日から夏服だった気がする。


今日だが進路会というものがある筈だ。

これは何かといえば.....将来の事を考える為の会。

職業選択をしたり大学進学を考えたりする会の事である。

つまり.....簡単に言えば、俺達の将来はどういうのになれるのか、という事だ。


そんな事を考えながら曖昧に起きてみる。

そして盛大に欠伸をして前を見ている.....と。

横に何かあった。

それは.....目を擦って分かる。

こ。これは.....!?


「む、む、むく!?」


右の方角。

丁度壁側じゃない方。

夏服の制服に変わっている椋が寝ている。


素肌が綺麗な二の腕を露出して、だ。

スヤスヤと言いながら気持ち良さそうに、だ。

俺の寝顔を見る感じで横になっていた。


これは一体!?、と思いながら布団を吹っ飛ばしながらの真っ赤になりつつ慌てる。

すると椋がまるで浮いている鼻風船でも壊すかの様に目をゆっくり覚ました。

その可愛い寝顔をコクリコクリと動かしながら、だ。


目をゆっくり擦りながら結んだ髪を触りつつ。

そのまま小さな欠伸をしながら起き上がる。

そして俺をニコッと見てきた。


「おはよう。.....雪歩君.....」


「お、おはようございます.....どうしたの。椋.....!?」


「私?.....だって恋人だからイチャイチャしても良いじゃないかなって」


「.....そ、そうだけど.....うん.....」


ずっと寝ていたのか?

かなりビックリしたのだが。

思いながら俺をニコニコして見てくる椋を見る。

椋は笑顔を浮かべながら唇に人差し指を立ててウインクする。

そしてこう言ってきた。


「もしかしたら君にキスしちゃったかも」


「.....え.....!?」


「ウフフフフ」


「え!?どっちかな!?」


「ナイショ。アハハ。うん」


言いながらベッドから降りる椋。

それから、朝ご飯出来ているよ、と笑顔を浮かべる。

私が作ったからね、と言いながら。

俺は、え?え?、と思いながら赤面する。

まるで新妻の様な.....そんな感じの衝撃である。


「雪歩君。.....実は私ね。起こしに来る事にしたの。その。恋人になったから」


「え.....そんな夢みたいな話.....」


「あは。夢?.....夢じゃないよ?だって.....私は貴方の側に寄り添う為に居るから」


「.....!」


そんな言葉って恥ずかしいのだが。

思いながら頬をボウッと火が点いた様に赤くする。

ガスコンロに火が点いた様に、だ。


するといきなりだが笑みを浮かべてクルッと椋は一回転した。

そして、ねえ。私の髪の毛見た?、と俺に向いて笑顔を浮かべる。

髪の毛.....そういえば俺の好みの結び方になっている。

俺は柔和な笑みを浮かべる。


「.....可愛い.....よ。椋」


「可愛い?う、嬉しい」


「そ、そう.....うん」


言いながら俺達は俯いてモジモジした。

そういえば、と切り出す椋。

それから柔和な顔になりながら俺に笑みを浮かべる。

そして腰に手を回した。

えっとね。今日もお弁当作ったから食べようね、と手を差し出してくる。


「一緒に食べるのが楽しみだから」


「.....そ、そうだね」


「配慮してほしい時は言ってね。雪歩君」


「うん。.....あ。えっと.....」


「?」


「田中と首藤も知っているんだ。.....俺達の関係」


その事に、あ。そうなんだ、とだけ反応した椋。

そんな顔は全てを知っている様なそんな顔である。

え?俺だけが知らなかったのか?

と思う様な落ち着き様である。


「首藤君と田中君から話さないで、と言われたの」


「そ、そうなんだね.....あの2人はそんな事まで.....」


「うん」


「うーん.....何だか複雑な気持ちだね」


「本当に祝いたかったんじゃないかな。それも心の底から」


まあ確かに。

そうなんだね、と言葉を発して苦笑する俺。

それから、それなら仕方が無いか、と言いながら溜息を吐いた。

そして椋は口元に手を添えてクスクスと笑う。

俺はその顔を見て、まあいっか、と思わずに居られなかった。


「.....じゃあね。.....また後でね」


「そうだね。降りて行くよ」


「うん。待ってるよ。ずっと」


そして満面の笑顔でそのまま俺の部屋から去って行く。

その顔は本当に嬉そうだった。

因みにこの後の話だが.....父親も母親も全て了承済みだった様だ。


何がといえば俺と椋の関係性である。

椋が許可を取っていた。

良いのか悪いのか.....。



「でも学校では私と君は別々の方が良いよね。きっと」


「そうだね.....大騒ぎになりそう」


「.....私はそんなの望んでないけどね.....」


「仕方が無いんじゃないかな。うん」


玄関から出てからの事。

とても美味しかった椋のご飯を食べてからの事だ。

溜息を吐きながら困惑している椋。

俺はその姿を見ながらまた苦笑した。

それから.....歩いていると。


「おや。ぶち殺す対象がいらっしゃる」


「そうですな。田中殿」


「.....お前ら.....」


言いながら田中と首藤は椋を見る。

それから頷き合って笑みを浮かべた。

人が居ない事を確認して頭を2人共下げながら、だ。

俺は、?!、と思いながらその姿を見る。

田中と首藤はこう言った。


「音無。.....ソイツを頼みます」


「.....そうですね。俺も強くお願いします」


「.....田中.....首藤.....」


「分かってる。田中君。首藤君。言われなくても」


この人は.....一生を歩むって決めた人です、と言いながら俺を見上げてくる椋。

それから田中君と首藤君の言葉も重く受け止めたいから。

雪歩君の事を知っていたら教えて、と笑みを浮かべる。

その事に田中と首藤は頷いた。


「幾らでも教えます。弟の様に思ってましたんで」


「年下扱いか!?まさかの!?」


「相棒は相棒だけど.....年下みたいな感じだからな」


「酷いな!?」


でもまあどっちでも良いけど.....とにかく頼みます。

音無、と言いながら顔を上げた。

それから2人はマジな感じだったがその次に笑みを浮かべる。

コイツらは何も変わらないな。

俺が助けられた5年前からずっと、だ。


「.....お前ら。有難うな」


「おう。ったりめーよ。門出だぜ」


「そうだな。田中」


言いながら笑みを浮かべて2人は鼻を鳴らす。

俺は溜息をまた吐きながらだったが。

その姿を見つつ柔和になった。

それから、じゃあ行くか、と笑顔を浮かべる俺。

そして歩き出した。


「そういえばお前.....」


「もうロケットペンダントしてんのか?早速」


「.....そりゃそうだよね。大切なものだからプリクラ入れてね」


俺は言いながら2人に笑顔を浮かべた。

そして顔を見合ってから、そうか、と言いながら笑みを浮かべる。

それから、ペンダントって何?、と聞いてくる椋に説明する。

椋は、アハハ、と涙を浮かべながら笑った。


「.....田中君も首藤君も相変わらずだね。そんな面白い事。私も呼んでほしかったかもしれない」


「.....まあそうだよね」


「正確には祝わないといけないからな」


「そうそう。まあ闇に包まれて消えてほしいもんだ」


「.....最低だね.....」


応援しているのかしてないのかどっちなんだろうか。

思いながら俺は額に手を添える。

それから3人を見た。

幸せな日だな、と思いながら晴れている大空を見上げつつ、である。

今日も良い日だな、と思いながら。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る