椋の誕生日が来るのと自覚する心

第12話 お姉ちゃんの誕生日が近いんです

甘過ぎる様な。

そんな気がしてならない。

思いながらも.....お弁当を美味しく頂き俺達は戻って来た。


すると早速だが田中と須藤に絡まれる。

お前さんよ.....もしや音無と一緒だったのでは?、と。

俺はその事に一瞬だけビクッとしたが首を振った。

それから答える。


「そんなんじゃない。音無とはこれ以上でもそれ以下でも無い関係だよ」


「.....本当かな?首藤殿」


「怪しいでござるな。田中殿」


「.....違うって」


そんな感じで疑われながらだったが。

俺は何とか乗り越えた。

丁度だがチャイムが鳴ったから、だ。

ホッとしながら胸に手を添えつつ.....俺は放課後を迎える。

それから、今日は用事があるから、と言う椋と別れて.....田中と首藤と一緒に帰ると.....玄関先に見た事のある制服姿の美少女が居た。



「初めまして。私は.....音無楓(おとなしかえで)と申します。この前は色々あって私の自己紹介が出来なかったので.....。宜しくお願いします」


「君は確か.....椋の妹さんだね」


「そうです。お姉ちゃんがお世話になっています」


音無楓さんという少女と玄関先でそう話す。

楓さんにはこのまま上がってもらおうと思ったのだが楓さんは、いえ、と話しながらそのまま断った。

丁重な感じで、だ。


俺は目を丸くしながらも、じゃあこの場で、と話す。

見た感じの印象は黒のボブヘアーにお淑やかな感じの少女だ。

身長は俺より少しだけ低い感じか。

平均身長よりかは高いかもしれないが。

笑みが絶えない美少女だと思う。


「えっと私が家に上がると誤解されると困りますので.....お姉ちゃんに」


「.....君は丁重だね。楓さん」


「私は折角.....良い人を見つけたお姉ちゃんを応援したいんです」


「いや。良い人って.....俺はそんなに良い人に見えるかな。恥ずかしい」


「十分に良い人だと思います。お姉ちゃんを.....大切にしてくれそうです」


そんな言葉を発する楓さん。

それからクスッと笑いながら.....俺を見る。

俺は、?、を浮かべて楓さんを見た。

楓さんは、それにしても.....好みが一緒です、と答える。

俺はますます、???、と浮かべる。


「貴方は私が好きになりそうなタイプです」


「.....そ、そうかな」


「はい。お姉ちゃんは本当に良い人を見つけました。貴方はきっと.....お姉ちゃんの闇を祓ってくれると思います」


「.....椋に何かあったの?」


「そうですね。.....えっと。お姉ちゃんが話をしても良いって.....言ってましたので。.....お姉ちゃんですが初恋の人に裏切られたんです。まるで弄ぶ様に.....お姉ちゃんは初恋を砕かれました」


俺はその言葉に眉を顰めた。

それから、そんな事があったんだね、と話す。

楓さんは頷いてから、本性を見抜くって大変ですよね、と苦笑した。

でも貴方の場合は違います。その男とは。.....だからきっとお姉ちゃんを大切にしてくれます、と笑顔を浮かべる楓さん。


「.....私はあの日。ファミレスに居た日ですが.....お姉ちゃんはデートプランを練るのが下手くそだったんです。だから私がデートプランを練りました。.....でも申し訳無いのですがその中で貴方を疑っていました」


「.....そうなんだね」


「.....はい。.....でも貴方は違う。その男と魅力が違います。.....私は貴方と出会い幸せでした」


「告白みたいな事を言うね.....でも有難うね」


だからお姉ちゃんの事.....宜しくお願いします。

と満面の笑顔で俺に頭を下げてくる楓さん。

俺はその姿に罪悪感を感じていた。

彼女は一生懸命に俺を好いているのに.....も関わらず、だ。

思いながら.....楓さんに話す。


「実は.....ゴメンね。俺はまだ君のお姉さんを好いている訳じゃ無いんだ」


「え?」


「.....俺も恋には臆病で.....それで.....何も考えれないんだ。実は君のお姉さんが一生懸命に俺を惚れさせようと頑張っている」


「そうだったんですね.....」


だから君にお願いがある。

と俺は顔を上げて真剣な顔をした。

それから頭を思いっきり下げる。

俺は椋を好きになりたいと思っている。だけど.....君にも協力してほしい。この闇を祓う為に、と。

椋の様に闇を祓いたいんだ、とも。


「.....お兄さん.....」


「俺は一生懸命な椋を好きになりたいと思っている。.....だけど想いが.....まだ伝えられない。.....だから君の力も要るんだ」


「.....分かりました。それじゃ協力します。先ず.....お姉ちゃんを知って下さい。お姉ちゃんという存在の全てを」


「有難うね。楓さん。後もう少しで掴めそうなんだ。全てを」


はい。分かりました、と笑顔を浮かべる楓さん。

俺はその姿を見ながら頭をまた下げる。

それから楓さんを見ていると。

楓さんはこう言い始めた。

先ず.....好きなモノは何かを聞いてプレゼントし合ったらどうでしょうか、と。


「大切ですよ。因みに.....お姉ちゃんの誕生日が近いです。.....お姉ちゃんは何も話さないタイプなので.....知らないと思います。7月5日です」


「そうなんだ!肝心な情報を有難う!」


「それからお姉ちゃんは.....ウサギが好きです。特に白いウサギが、です」


「確かにね。それは知ってる。.....じゃあそこから発展させようかな」


そうですね。

と笑みを浮かべる楓さん。

それから、このお店のチラシもあげます、と鞄から何か取り出す。

そして俺に渡してきた。

そのチラシは.....ウサギのファンシーグッズの有る様なお店のチラシ。

つまり.....ヒントだ。


「後はお兄さんのお力しか無いですが.....頑張って下さい。私は.....応援します」


「君が居て良かった。有難う。楓さん。後で行って来る」


「はい。.....でもちょっと聞いて良いですか?.....何故.....貴方はお姉ちゃんを好きじゃないのにお姉ちゃんを大切にしようと?」


「昔のスクールカウンセラーの先生に教わったんだよね。出会いを大切にそして貴方を大切にしてくれる人を大切に、と。.....だから一生懸命な彼女を応援したい」


「.....」


お兄さん。貴方は.....本当に私達の父母と同じ様に優しいですね、と満面の笑顔。

そして、じゃあ.....立ち話も何ですので、と去ろうとする楓さん。

俺は頭を下げた楓さんに言う。

君も優しいよ十分、と。

楓さんは、有難う御座います、と口角を上げた。


「私は幸せを祈ってます」


「.....君のお願いに応えれる様に頑張るよ」


「.....有難う御座います。では失礼します」


そして楓さんは去って行った。

俺はそのウサギの店のファンシーグッズ類の写真を見ながら。

よし、と意気込んだ。

すると背後から声がした。

お兄。お助けは要らんかね、と。


「うわ!?いつから居たんだ綾香!」


「半分聞いたよ」


「.....いやいや.....恥ずかしいな.....」


「お菓子の為なら聞き耳でも何でもするからね。.....お兄。助けは要らんかね?」


ニヤニヤする綾香。

それから俺は見開いていたが。

頷きつつ.....綾香の助けを借りる事にした。


そして.....椋の好きなウサギのお店に向かってみる。

誕生日のプレゼントと。

日頃の感謝のプレゼントを求めて、だ。

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