第10話 髪型を変えてみようかな(超改訂)

俺達の関係性はかなり特殊だ。

何故かと言えば.....俺を心から好きになってくれている音無。

しかしその反面俺は音無を好きになってない。

まだ好きになれない感じなのだ。

俺は.....もどかしい感じだった。


一体この状態はどう説明するべきなのか。

思いながらの俺は顎に手を添えつつ考えながらの.....翌日。

高校というか学校に登校する。

何というか昨日は結局、緊張した感じでそのままファミレスでデート?の様なものは終わってしまい。


音無の妹ともあまり顔合わせとか出来なかった気がする。

緊張してしまい、である。

挨拶抜きとは申し訳無い感じだ。

しかしそれはともかく。


「ふあ.....」


とにかく眠い。

そんな感じでゆっくり歩いていると、おはよう、と声がした。

俺はビクッとして振り返ると.....そこに音無が笑みを浮かべて立っている。


相変わらずのクールな感じだが.....何だか柔和な感じに見える。

何というかクールビューティー的な感じといえる。

つまり.....その。

これは昨日言われたまんまの通りだった。

昨日この様な事を言われたのである。


『ねえその。田中くん。もし良かったら学校ではなるだけ他人同士でいこう』


『え?それはどういう意味だ?』


『私達がイチャイチャしていたら嫉妬する人も居て面倒臭いからね』


『ああ。成程ね。確かにね』


という感じである。

俺は昨日の事を思い出しながら音無を見つめる。

音無は赤面しながら髪の毛を触る。

それから少しだけ微笑む。


そういえばやけに髪の毛を弄っている.....と思ったら。

何か髪の毛にリボンが着いているではないか。

気が付いてほしかった様である。

俺は見開きながら笑みを浮かべる。

それからリボンを見た。


「その赤いリボン.....似合ってるね」


「そ、そうかな。有難う。気が付いたんだね」


「そんなにアピールしたら気が付くよ。アハハ」


それもそうだね、と言いながら音無は笑みを浮かべる。

そしてそのまま音無は嬉しそうに静かに歩いて行く。

やれやれ。


他人同士で居るって言ったのはそっちなのにな。

俺は考えつつその姿を見送って遅めに歩く。

すると田中と首藤が背後から俺の肩に手を回して来た。


「よお。で。.....音無と何か進展はあったかな?」


「そうそう。進展だぜ」


「進展は無いな。仮にも俺達はそんな仲じゃ無いからな。まあでも楽しいよ」


「???.....それって楽しいか?」


楽しいっちゃ楽しい。

だけどそこら辺はそれなりに秘密にしておこう。

思いながら取り敢えず俺はこう答える。

疑問符だらけに思っている首藤と田中に向きつつ。

実はな、と言いながら。


「音無に彼氏役を演じて欲しいって言われているんだ」


「.....彼氏役?それってどういう意味だ?お前に彼氏役.....?」


「劇団員なんだ。音無は。丁度.....演劇クラブに入っているってな」


これはまあ嘘八百なのだが。

というか周りに聞かれたら、こういう嘘はどうかな、と音無に言われたのだ。

音無のその嘘にはかなり納得出来た。

何方にせよ習い事を結構している様だしな。


なのでその嘘を取り敢えず吐いた。

すると田中も首藤も納得した様に頷いたがまた疑問符を浮かべる。

でもそれが何故お前?、的な感じで、だ。

俺はその様子に、都合の良さげじゃないかな、と言う。

すると、成程。都合が良かったのか、と納得した様に頷いた。


「やれやれ。.....お前もそこそこに災難だな」


「災難だな」


「.....そうだね。災難だと思う」


田中にも首藤にも仮にも申し訳無いが。

取り敢えず女子の嫌がる所は見たくないしな。

それで納得してくれ。


仲の良い奴らにこう話すのも気が引けるが。

思いながら俺は苦笑いで田中と首藤とそのまま他愛無い話をした。

それから高校に登校する。

遅刻寸前だった危ない。



そして高校に登校するとスマホにメッセージが入って来た。

音無から。

こんな事が書かれている。


学校で広まらなかったら良いけどね、と。

俺はその事に、だな、と返事を書いてから送信した。

すると直ぐに返事が。

どうやら待っていた様だ。


(田中くん。えっとね。私ね。髪型変えようと思うんだ)


(え?変えるのか?髪型を?)


(まあ正確に言えばイメチェンして君に見せたい感じかな)


俺は教室に入りながら前を向いたまま俯いている音無を見つつ。

そのまま気に留めない感じで椅子に腰掛ける。

田中と首藤は俺と別れてから職員室にそのまま行っちまったのでこれはチャンスだな、と思っている。

煩い連中が居ないので。

考えながら返事を高速で打った。


(音無が髪型を変えるとそれなりに可愛いだろうね。ついでに言うならそんな事を言うとは思わなかったよ)


(そんな事無いよ。女の子だしね。私も)


(音無が髪型変えるの見たいな。是非)


(うん。じゃあ変える)


(こっそり変えてみたら良いかもね)


俺達はその様な何気ない会話をする。

それから音無と目配せをしながらスマホを見る。

スマホの画面を打つ手は弾んでいる様に見えるな。


音無は本気で嬉しそうな感じでニコニコしながらスマホを見ている。

俺はその姿を柔和に赤くなって見ながら俺もスマホの画面を見る。

するとこんな文章がきた。


(どんな髪型が良いかな?)


(まあ俺はロングでもショートカットでもどっちでも好きだよ)


(そうなんだ。じゃあ最も好きなのは?)


(え?最も好きなの?)


(うん。君が一番好きな髪型にする)


何というか赤くなる俺。

それから周りの駄弁っている女子達を見ながら答える。

そうだな、と書きつつ。

そして考えてハッとして答えた。

文章を打つ。


(もしかしたらだけど俺は.....その。清楚が好きかも。清潔感ある結っている髪型が一番)


(え?そうなの?じゃあ結ぼうかな。清潔感ある感じでポニテにしよう)


(うん。しかしそれで良いのか?)


(だって好きな男の子のご要望だからねぇ)


(そうか)


そんなに直に色々と言われると恥ずかしいのだが。

思いながら俺はスマホを見ていると。

教室のドアがガラッと開いてから田中と首藤が、ったく戸川のやつ巫山戯やがって、と入って来たので慌てて音無と同じ様にスマホを仕舞う。

でも内容は伝わった様だ。

早速だが音無は髪型を弄っているしな。


でも何故、昔の事もあるとはいえこんな一生懸命な音無を好きにならないのか。

その様に思わずにはいられない感じだ。

音無はこんなに一生懸命俺に接しているのに。


思いつつ.....俺は少しだけ悲しくなったが。

首を強く振って打ち消し。

そんな田中と首藤にそのまま接した。

田中と首藤は、ああ。聞いてくれよ雪歩.....、などと言ってくる。

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