第8話 椋と雪歩とガンバと(超改訂)

メッセージデート。

音無のファッションの写真を送ってきて俺が色々と見たり決めたりするメッセージデートを終えての丁度土曜日になった。

その日、俺はファッションを決めてもらっている。


誰かといえば.....綾香に、だ。

綾香は眉を顰めて首を捻りながら、うーむ、と悩んでいる。

そして何かを決意した様に笑顔を見せた。

それから俺の手を握る。


「全く駄目。お兄。買いに出よう」


「え?買いに出るとは?」


「このファッション駄目。全然気に入らない」


「そ、そうですか?.....しかしその.....お金が.....」


「そういう問題?女の子の家に行くんだよね?それは駄目だよ。ノーだよお兄」


眉を思いっきり顰めて怒っている様な綾香に俺は、あ。はい、と返事しながら。

そのまま自室に居たがそのまま綾香に手を引っ張って行かれる。

取り敢えず私の知っている服屋さんに今から行くよ。


そこなら安価だし.....中古品だけど、とも言う。

俺は慌てながらも綾香に向いた。

これは伝えないと。


「綾香。すまんな。折角の土曜日なのに」


「良いよ。お菓子の為ならなんでも。アハハ」


「いや.....何でも釣られんなよ?お菓子で。変な事とか」


「そんな訳ないでしょ。お兄だからだよ。変態」


ジト目で俺を見てくる綾香。

いやこれは本当だしな。

綾香が何でも釣られては困るのでね。


俺は思いながら苦笑する。

そしてそのまま俺は引き摺られる様に外に出た。

雪の日に出たくないと拗ねる子供を連れて出る様に、であるが。


それから綾香の行きつけだという洋服屋に向かう。

その場所は家から15分ぐらいの商店が並ぶ場所だ。

俺は周りを見渡していると綾香が言葉を発した。


「通なお店だよ。ビアンコってお店なんだ」


「よく知ってるなお前さん」


「まあ行きつけだからね。.....私もそれなりにモテるしぃ?あはっ」


「ああ.....そうですか.....」


綾香は、ニシシ、と言いながら笑う。

俺はその姿に少しだけ固い笑みで、やれやれ、と思いながら歩く。

すると丁度、お店に到着した。


中古のサーフボードっぽい看板に、ビアンコ、と書かれている。

それを見つつカランカランと鳴るお店のドアを開いてから。

目の前を見ると男性か女性か分からない店員さんがやって来た。


エプロンをしており銀髪の短髪で。

そして耳たぶに銀のイヤリング。

化粧をしている.....が。


女性か?男性か?

全く分からないのだが.....。

と思っているとその店員さんが言葉を発してきた。


「いらっしゃいませぇ。ですぅ。.....アレェ?綾香ちゃんじゃん」


「こんにちは。猪熊さん」


「もー。猪熊って凶暴だしぃ?猪熊って呼ばないでって言ったじゃない。その苗字嫌いなのー。私はいーちゃんだってぇ」


猪熊という呼び方が凶暴。

成程なと納得しながら俺は苦笑した。

するといーちゃんさんというその店員が俺に気付いた様に向いてくる。


それから目を輝かせた。

あら?彼氏ぃ?、と言ってくる。

綾香は苦笑いを浮かべながら、そんな訳無いよー。私の従兄弟です、と答える。

いーちゃんさんは、残念だわぁ、と口を尖らせて言う。


「でもそうなのね。.....あ。もしかしてそのお方とデートコーデお探しぃ?」


何も言ってないのに凄い推察力だな。

俺はビックリしながらそのまま見ていると。

綾香が、うんうん、と笑みを浮かべて頷いた。

それから俺をチラ見してからいーちゃんさんを見る。


「いーちゃん。.....お兄に合う服をコーデをしてほしいんです」


「うんうん。分かったよぉ。コーデねぇ」


「宜しくお願いします」


「良いわよぉ。良い感じの男の子の良い感じのコーデにするわよぉ?」


それから昨日とは打って変わって今回は俺のファッション大会が始まった。

あれやこれやの感じで着せ替え人形状態の俺だったが。

その中で10回程やって綾香といーちゃんの意見が共同で頷く服装があった。


それはコーチジャケット的なコーデ。

パーカーである。

俺は袖を見ながら前を見る。

あらあら。若いって良いわねぇ、と言ういーちゃんさん。


「うんうん。結局はお若いからラフな感じが似合うわねぇ」


「そうですね。.....どう?かなり良さげだね。お兄」


「そうかな?有難う」


「うん。心から良いわぁ。私も惚れそう。格好良くなったわね」


その言葉に、アハハ、と苦笑いを浮かべた。

いーちゃんさんは笑みを浮かべつつ、でも本当に似合っているわよぉ、と褒めてくれてから拍手をくれた。

その言葉に、有難う御座います、と言いながらそのまま綾香に聞く。

値段が気になるのだ。


「綾香。これ幾らなんだ?」


「これは全部合わせても3000円」


「あ。じゃあ買おうかな」


「毎度有難うねぇ」


かなり安いな。

4枚の服でその値段か?

思いながら俺はビックリする。


するといーちゃんさんは更にこんな事を言い出した。

でもまあ更に知り合い値引きで2800円で良いよぉー、と。

俺は更に驚愕する。

悪いんだが.....それって何だか。

大丈夫なのだろうか。


「デートの服って事だよねぇ。頑張ってねぇ」


「良いんですか?本当に」


「良いの良いの〜。アハハ」


「アハハ。まあこう言う感じの人だから。お兄。受け取っちゃいなよ」


「.....ふむ.....」


何だか安すぎな気がするが。

でも.....まあ良いか取り敢えずはそう言っているんだから。

思いながら俺は、じゃあ下さい、と言う。

それからマネキン買いしてから俺はいーちゃんさんを見る。


「いーちゃんさん」


「うんうん。何ぃ?」


「例えばの話ですが.....いーちゃんさんはどんな服装でデートに出ますか?」


「.....私ぃ?.....そうだねぇ。ラフで全てに勝てる服装かなぁ」


「そうなんですね。.....成程」


納得しながら袋に畳んで詰めてくれた服を受け取ってそのまま代金を支払う。

それから俺はいーちゃんさんに頭を下げた。

短い間だがお世話になったいーちゃんさんに有難う御座います、と言う。


いーちゃんさんは、気にする事ないよぉ、と笑顔で言ってくる。

それから、私は全然良いけどデート頑張ってねぇ、と言ってくれた。

俺は苦笑いで頬を掻きながら.....頷く。


「はい。有難うです」


「私は心から応援してるよぉ」


手を見送りの際にブンブンと振ってくるいーちゃんさんに苦笑い。

そしてそのビアンコという店舗を後にした。

それから横の綾香に向く。


綾香は首を傾げて俺を見てくる。

俺はそんな綾香に、お礼がしたいな、と言う。

綾香は一気に目を輝かせた。


「お礼!?じゃ、じゃあパフェ食べたいかも!」


「子供だねぇ。アハハ」


「いや!子供じゃないもん!!!!!」


「アハハ。うんうん」


もー。お兄の馬鹿、という綾香と一緒に俺はファミレスにお礼としてのパフェを食いに行く事にした。

俺も食べようかなパフェと考えているとその寄ったファミレスで.....音無と目が合った.....というかまさかの音無。

俺は愕然とする。


目を丸くしていると。

横に立っていた綾香がその音無を見て何かを察した。

そしてニヤッとして逃走する。

マジかよ、と思いながら慌てる。

音無の方も一緒に居た女性らしき人がどっかに行って赤面で慌てていた。


「.....」


「.....」


どうしたものか、と思って赤面して突っ立っているとスマホが震えた。

そこには綾香から、ガンバですぅ、と文字が。

俺は緊張して手汗をかく。


助けてくれよ、と思ったがこうなった以上はどうしようも無いな.....。

取り敢えず、と思いながら意を決して喉を鳴らした。

それから音無の居るファミレスに入る。

そして音無の元に向かった。

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