第5話 苦い恋と甘い恋と(超改訂)
音無を見ながら赤くなってしまう自分が居る。
強く俺に宣言した音無は俺に笑みを浮かべながらそばに有ったウサギのオモチャを手に取り見つめる。
この玩具可愛いね、と言いながらニコッとする。
そんな姿に.....俺は顎に手を添える。
それから考えている事を告げた。
「.....音無」
「何かな」
「具体的にどう惚れさせるの?.....その.....俺を。俺は傷だらけなんだ.....が」
「知っている。全てね。.....だから先ずはイチャイチャする事かな。私は.....先ず君に気に入ってもらおうかなって」
「そ、そうなんだね」
「うん。だってそれしか無いと思うよ。具体的には」
その笑顔を浮かべたまま。
ウサギのオモチャを手に取ったままレジに向かおうとする。
俺はそれを見つつポケットに慌てて手を入れて財布を出した。
それから、出すよ、と言った。
音無は目を丸くしながら、え。良いよ、と否定しながら首を振る。
自分の趣味だから、とも言いながら。
だけど。
うん。
「これはお礼だよ。音無。意味に対してもそうだけど」
「え?私に対してのお礼って何.....?」
「ああ。.....君が俺を気に入ってくれたお礼というか。そして.....相談に乗ってくれたお礼も兼ねて」
「.....そうなんだ。.....じゃあその.....半分ずつで.....お願いしようかな。断るのも何だし」
「本当は.....全額出したかったけど.....君が絶対に断るかなって」
「うん。そうだね。当たり前だよ。私の物品なんだから」
それから俺達は半分ずつ出しあってからウサギのオモチャを購入した。
どうやらこれが気に入ったらしい。
可愛らしい白いウサギだ。
純白無垢な感じの.....である。
店員に袋に包んでもらってからそのまま俺達は玩具屋を後にしてから。
それから空を見上げると完璧に晴れ渡っていた事に気が付く。
雨が降っていたとは思えないぐらいに、だ。
晴れ晴れとしている。
まるで俺の気持ちの様に、だ。
「今日は何だか空には歓迎されているみたいだね」
「そうだな。俺達を神様は見ているのかもな」
「ねえ。田中くん」
「何?」
「私の実家って.....その。.....ひだまりっていう喫茶店を営んでいるの。だから今度.....是非来てほしいかも」
「.....え.....そうなんだな」
少しだけ俺は赤面しながら.....音無を見る。
音無も赤面しながら笑みを浮かべる。
何だかその。
割と本気でお呼ばれの様だった。
俺は、良いの?、と聞いてみる。
すると音無は、良いに決まっている、と笑顔をまた浮かべた。
それから赤い顔のまま俺をジッとみてくる。
そして穏やかな顔を見せる。
「私の彼氏なんだから当たり前じゃない?」
「そ、そうだね。分かった。じゃあ行くよ」
「うん。是非。.....ずっと待ってるからね」
あ。そういえば。
と音無は悲しそうな顔をした。
それから、この後。ピアノのレッスンがあるの、と俺を悲しげに見てくる音無。
俺はその姿に、そうなんだ。じゃあ送ろうか、と言う。
音無は、有難う、と言ってくる。
あ。決して貴方とデートを別れたいって訳じゃないからね、と何だかかなり強く言ってくる音無。
俺は苦笑しながら、大丈夫、と言う。
「そんなに心配しなくても大丈夫。音無。用事が有るなら仕方ないから」
「分かってるなら.....良いけど」
「俺、自信が持てたんだ。君のお陰で」
「.....え?そうなの?」
「うん。そうだ.....これはきっと自信だ。君のお陰だよ」
俺は暫くは大丈夫だと思う。
音無に言いながら.....俺は笑みを浮かべる。
そんな音無はその顔にキョトンとしながらも。
すぐに切り替える様に笑みを浮かべてから、うん。今の田中くんならそれなりに乗り越えられそう、と言ってくれた。
それから音無は真横を付いて来る。
ウサギの入っている袋を揺らしながら。
「でも決して無理はしないでね。.....私と一緒にこの世界を歩もうね」
「確かに。.....有難うな。音無」
「うんうん。.....さて。.....それじゃ先ずは好きなってもらう.....今の目標はこれだね。とても大切かも。アハハ」
「そうだな。で?行動目標は?」
「手を繋ぐんだよ。先ずはね」
「そ、それは.....え!?」
いきなりすぎやしませんかね。
と思い音無を見ていたが。
手を繋ぐの、と頬を栗鼠の様に膨らませて言ってくる音無。
それから柔らかそうな手を差し出してきた。
俺は赤面しながら握る。
頬を掻きながらそのまま手を繋いだ。
すると音無はビクッとしながら俺の手を見た。
それから柔和になる。
「ゴツゴツしているね。男の子の手って.....やっぱりゴツゴツだね」
「だね。まあ自覚無いけどね」
「と言うか.....そんなに恥ずかしい?.....私も恥ずかしくなっちゃうんだけど」
「結構.....来ますよこれは」
「そうなんだ。.....うふふ。じゃあ私の魅力伝わるかな。最初だけど」
それから俺に再度、何十回目か分からないが笑みを浮かべてから。
じゃあ行こうか、と濡れた道を歩き促す音無。
そうしてから俺達は一歩一歩を歩み出した。
未来に向かっての様に、だ。
何だか手を繋ぐっていうのがとても恥ずかしいのだが。
勘弁してほしいと思うが.....でも本当に暖かい。
手も胸も何もかも暖かい気持ちだ。
すると音無が俺を見てきた。
それから聞いてくる。
「ねえ。田中くん」
「どうした?」
「.....君が初恋の相手だったら良かったな」
「.....」
かなり複雑な感じがした。
思いながら心を複雑にする。
だけど音無は、田中君。そんな顔しないで、と言ってくる。
そして俺をジッと見てくる。
過去は過去だから、とも。
「私は.....良かった。アイツと別れられて」
「.....」
「田中くんを好きになった。.....過去の事を忘れるよ」
「.....音無.....」
とても今が一番幸せ、と言いながら音無はニコニコする。
俺はその姿を見ながら頬を掻く。
全く.....音無は恥ずかしい事を言うばかりだな、と思いながら。
だけど.....悪い気はしないのは何故だろうな本当に。
茨城と違うからか明確に。
「音無」
「何かな」
「俺を好きになってくれて有難う。君なら.....きっと」
「.....うん」
そうして俺達は手を繋いだまま帰宅した。
家の近くの分かれ道で別れる。
それから歩いて帰宅すると、黒部綾香(くろべあやか)、12歳という.....小学校高学年の従姉妹が居た。
俺の家の玄関先でウロウロして見渡している。
何やっているんだコイツは。
また俺の家のお菓子を狙っているなこの褐色の小動物め、と思いながら俺は盛大に溜息を吐きながら綾香に声を掛けた。
すると綾香は俺を見てきながら見開いてから、あ。お兄、と声を発してくる。
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