第4話 椋の過去と雪歩の過去と(超改訂)

丁度虹の掛かっている雨上がりの空を見上げる。

それから濡れた黒い感じのアスファルトを見てみる。

そして俺は.....横に立っている音無を見た。


音無は嬉しそうに.....先程撮ったプリクラを見ている。

ゲームセンターで撮ったプリクラであるが。

ニコニコしながら見ている。

まるで無邪気な子供の様に、だ。


「有難う。田中くん。嬉しいよ」


「別に構わない。俺は貸出有料とかじゃ無いからな」


「アハハ。君は.....本当に面白いね」


「まあ.....それじゃ無いとやっていけないぐらいだからね」


アスファルトは涙の跡の様に濡れている。

しかし心はそこそこに晴れやかだな、と思う。

思いながら.....俺は音無を見る。

それから音無は、はい、と切り取ってから渡してきた。

プリクラを、である。


「約束通り半分こ」


「あ。有難う。音無」


「うん。.....だって約束だから。全然大丈夫だよ」


「.....」


俺はその表情に、音無、と言ってみる。

それから音無を見た。

音無は、何?、と笑顔で嬉しそうに俺を見てきた。

そして俺に向いてくる。


言い出せないこの気持ち。

良い加減に現した方が良いと思う。

だから、と思ったのだが。

歩いていると俺達はとある店の前を通り掛かる。

そして音無はショーウィンドウを見て、わぁ、と声を出す。


「あ。このお店.....面白そうだね」


「ああ。この店か」


「え?知っているの?」


音無は俺に聞いてくる。

ちょっと嫌な思いでしか無いが.....でもまあ.....音無が寄りたいなら仕方が無い。

音無は、寄ってみたいな、という目線を俺に向けてきていた。


俺は納得しながら、寄ってみようか、と笑みを浮かべる。

懐かしく思いながら。

このお店の関連する最悪の気持ちを押し殺しながら。


その中で音無は笑みを浮かべて頷いた。

それから俺達はその店に寄る事にした.....のだが。

内装が変わってない事に胸が苦しくなる。

やはり嫌気が差してしまう。


「やれやれ」


「.....どうしたの?」


「.....いや。何でもない。言い辛いんだけど初恋を思い出してね。そして茨城という女を思い出した」


「.....!.....そうなんだ.....」


「うん。碌な思い出じゃ無いけどね」


「.....そうなんだね.....」


音無は少しだけ複雑な顔をする。

何か知っている様な顔だが。

バツが悪そうな顔をした。


俺は?を浮かべて音無を見ていたが。

音無は、ハッ、として首を振る。

それから、大丈夫だよ。田中くん、と言ってきた。

何を思い耽っていたのだろうか。

笑みを浮かべる音無。


「どうあっても私は違うから」


「え?」


「私は田中くんの事.....そんなに簡単に振ったりしない。田中くんが心から好きだから。.....だから絶対に振ったりしない。こんな良い人.....絶対に居ないから。過去も未来も」


強い口調で我を忘れたかの様な口調で俺に言葉を発してくる音無。

それから強く俺を見てくる。

俺は見開きながら音無を見つめる。

何が彼女をそうさせているのか分からないが。

音無は強い眼差しだった。


「音無.....」


「ずっと好きだった君だからね」


「え?.....ずっと?それはどういう.....」


「言葉通りだよ。ずっと好きだったよ。貴方が中学校の時代に戻って来てイジメられた時もずっと見ていた。.....知っているよ」


「.....嘘だろ。え?」


いや。これは嘘じゃないよ、と言ってくる音無。

俺はビックリしながらその言葉を聞きつつ見開く。

それから、俺が最悪な目に遭ったのは小学校から中学校時代だったけど.....その事を知っているのか?、と聞く。

すると強く頷いた音無。


「田中くんの中学時代は半分だけ知っている」


「.....」


「実はこの玩具屋.....も知っている。噂に聞いたから」


「何処まで知っているんだ.....!?」


俺達は玩具屋で見渡す。

やはり結構.....色々なモノが置かれているな。

ブリキのオモチャとか.....今時は珍しいモノが、だ。


俺達が知らないモノまで置かれている。

その光景に懐かしく思いながらも。

複雑な感情で見ていた。


「私ね。遠山という初恋の男と付き合って.....破滅したの。色々と。.....それでその後に君を好きになった」


「.....そうなんだね.....」


「小学校時代も凄惨だって聞いている。.....引っ越したんだよね?確か」


「まあ.....そんな感じかな」


「そうなんだね。.....私は.....」


そこまで言いながらオモチャを見る様に手に取る音無。

俺はその姿を見ながら聞いた。

一体.....俺の何処に.....惚れたんだ、と。

すると音無はオモチャを置きながら笑みを浮かべる。


「私は貴方の一生懸命な姿を知っている。だから好きになった」


「た、たったそれだけで?」


「女子は単純だからね。私は.....怖かったけどね」


言いながら赤面しながら複雑な顔をする音無に。

俺は何も言えなくなる。

今さっきから君が考えている事を当てようか、と言ってきた。

俺は、!?、と思いながら顔を上げる。

すると音無は柔和になった。


「たぶん『告白なんかしてしまって』って悩んでいるんだと思う」


「え?まあその.....た、確かにそうだけど.....何故それを.....」


「これは友達同士のゲームの罰ゲームで告白したんだよね?話は聞いていたよ」


「.....そ、そうです.....」


駄目だな.....全て見抜かれていた。

俺は青ざめながら.....音無から顔を逸らす。

それから申し訳無い感じになる。


そうだ。

俺は付き合えない。

過去が怖いから、もあるが。


困った.....音無の顔が見れない、と思っていたのだが。

予想外の言葉が音無から出た。

こんな言葉が、だ。


「じゃあ惚れさせてみせるよ」


「.....え?」


「せっかく付き合ったんだから。.....私は貴方を惚れさせてみせるから。好きな相手を」


「.....音無.....!?」


「.....告白が嘘でも。気持ちが篭ってなくても。.....片想いの相手からの告白は嬉しかった。心から付き合う事が出来たのだから。.....だから君に好きって言ってもらいたい。.....本当の気持ちを込めて。だから頑張るよ。私は.....中学時代からの片思いを寄せるよ。発揮する」


「.....!」


言いながら音無は満面の花咲く様な笑顔を浮かべた。

俺はその姿に.....真っ赤になる。

何でこんなに健気で.....一輪の花の様に可愛いのだろうか。

それに比べて俺は。

思いつつ唇を噛んで俯いた。

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