【50万pvありがとう!】わたしは美味しいご飯が食べたいだけなのだっ!~調味料のない世界でサバイバル!無いなら私が作ります!聖女?勇者?ナニソレオイシイノ?~
第60話 私の世界では普通に使ってました!
第60話 私の世界では普通に使ってました!
「なんっじゃこりゃーー!」
私は薬草畑で、ありえない光景を目にして叫んだ。そりゃもう力の限り叫んだので壁の向こうの王宮から宿舎に至るまで響き渡った。
一瞬やっちまった、と思ったけど目の前の光景の方が“やらかした”事案だったので無かったことにした。
一体どうしてこんなことに?
自問自答しても“アレ”しか思い当たらない。
昨日の出来事全てを思い出してもこんな事になる原因は私しかいない。
「……ありえない」
私は一言呟いて、目の前の現実から目を背けるために顔を覆い膝を着くのであった。
ジーザス……っ!
*************
現実逃避からしばらく崩れ落ちたまま。
このまま悩んでいても仕方ない。
とりあえず立ち上がろうと地面に手を着いたと同時に後ろから声を掛けられる。
「ケイ!? どうされました!?」
「団長さん……いや、その……」
息を切らせた団長さんご到着~!!オワタ。
「あの! ケイさんのすごい叫び声が聞こえたけど何事ッスか!?」
ミッシェルも来た~!なんで。
団長さんにはさっきお茶を持っていったしその足でここに来たから、多分団長室から走ってきたんだろうと予測出来るけど、ここまで来るのにどんだけ急いだんだろう?結構距離あるのに数分で来たよね?
ミッシェルは私に話し掛けたけど団長さんが居るものだから顔を青くして膝を着いてしまった。
それをやんわりと団長さんが断り、普通にしていいと言われ、ようやく立ち上がった。
そして興味津々とばかりに薬草畑と私を交互に見ながら話し掛ける。
「ケイさんの叫びも凄かったッスけど、なんスかこの草畑!!」
「それは私が聞きたい……ってかミッシェルなんでここ居るの?」
「なんで、って……ここ、第二宿舎の裏庭ッスよ?第一宿舎寄りではありますけど」
な ん だ と?
通りで第一宿舎から遠いなぁ、と思ってた!!
「うわー、じゃあ後でライオネルに挨拶しとかないとだ!」
「いえ、その必要ありません。私が許しているので」
「え? あ、はい……」
私がライオネルの名前を出すと、団長さんの纏う雰囲気が少し変わった。ちょっと怖かったし、やらかした後なので素直に言うこと聞いとこ。
チラリとミッシェルを伺えばワサビ田が気になるようで一人で畑を見学している。
……自由だな。
だけど私が植えてる唐辛子やら胡椒などのこちらの世界では危険植物がたわわになっている畝を見付けると目を見開き、震える手で薬草を指さす。
「ケイさん……? あの、これ……」
「黙るんだ、私は魔法ギルド所属だ」
手の甲に魔力を流して誤魔化す為に無駄にポーズをつけて印を見せると、無理矢理納得させたのか青い顔をしつつ何度も頷く。
……察しのいい男はすきだぜ……?
団長さんはと言うと「よく育ってるなぁ」などと呑気に言いながら私の後ろに着いている。
まあ、この人は一緒に買いに着いてきてくれましたからね。そこら辺は承知の上でしょ。
「しかし、本当によく育ちましたね。……何かされました?」
――ドキッ。
「いや……えへへ、あはは……」
団長さんが訝しげにわさわさ育ってる畑を見て、あまりにも早い成長速度に(種買ったの三日前だしな)問い掛けられるも答えられる訳がなく、笑って誤魔化す。
……が、笑顔+無言のパンチを喰らった私は正直に白状するしかなかった。
「えっと、私の世界の方の……成長薬をぶっ刺して……浄化の魔法も追加したら、こんな感じになっちゃいました……っ」
そう、私が昨日畑にぶっ刺したのは成長薬……活力剤ともいう。よく見る、緑のアンプル型のやつだ。それを畑などにぶっ刺しておいたのだ。
そして畳み掛けた“浄化”魔法にちょっと思念を混ぜたらこんな結果になった、という訳だ。
自分でもmamazonの物がこんなに早く効くとは思ってなかったし、多分こんなに早く成長したのは活力剤にも魔法がかったから、と推測。
そんなこんなを団長さんに話したら笑顔のまま固まってたからちょっとやべぇんじゃないかな、と一人焦る私だったが、そんな雰囲気をクラッシャーしてくれたのはなんとミッシェルだった。
「なんか難しい事わかんないっすけど、処分どうすんです? 焼き払います?」
「なっ!? 処分しないよ!このまま存続だよ!加工したり調理して食べるの!」
「食べる……ん、スか? え……?」
はい、出ました。
異世界人変なもん食う、の顔ー!
私の世界じゃニンニクも生姜も唐辛子も胡椒も普通に使ってました!!!
そりゃもう当然のものとして!!
辛党はこれがなきゃ始まらないくらいだよ!
「むきぃー! そんな顔するなら今日のご飯は薬草畑の物ばっか使ってやるーー!」
ミッシェルのドン引き顔がめっちゃムカついた私は固まってる団長さんをほったらかして必要な薬草などを手当り次第摘んで食堂へと向かったのであった……。
*************
「……で、なんでミッシェルも着いてきてんの?」
ただいま第一宿舎の厨房なう。
私の隣にはミッシェルと目の前には先程摘んできた薬草が数種類。
ちゃっかりついてきたミッシェルはこれまたちゃっかりエプロン(余ってたやつ)を着て厨房に居る。
「えー?だってケイさんその薬草使うんスよね?」
「そうだけど?」
「……俺、前からちょっと薬草に興味ありまして……」
「本音は?」
「ケイさんがやらかす事に興味があります!」
「よろしい」
さらっと息を吐くように嘘を吐くミッシェルを小突けば直ぐに本音を吐露したので、ドヤ顔で許した。これは私とミッシェルのじゃれ合いだと思ってもらって。
いつもの三人組とルーはまだ午前の訓練中なので厨房には私とミッシェルの二人きり。
少し早いけどもう昼の準備をしようと思う。
とりあえず薬草をミッシェルに洗っててもらい、私は食料庫に。
作るものは決まってる。
あらかた材料を持って来たら薬草を洗い終わったミッシェルが興味津々とばかりに私の後ろでウロチョロしてるけど邪魔じゃない位置を保ってるところが心得てる騎士たるところか。
ミッシェルの視線をガンガンに浴びつつ鶏肉(なんの鳥か知らない)を適当な大きさに捌く。骨付きのが出汁が取れるので部位的にはもも肉、手羽元、手羽先の辺りを中心に。
捌き終わったら塩をして少し置いておく。その間に、スペシャルな調味料を作るのだっ!
「さてさて、ニンニクと鷹の爪……は乾燥させてないけどいけるっしょ。みじん切りしマース!」
「うっわ、くっさ!いった!うぎゃー!」
「ミッシェルうるさい」
ザクザクと小気味良い音を立てて薬草……ニンニクと鷹の爪を切ってる私の後ろからひょっこり顔を出すもんだから刺激臭でミッシェルが過剰反応する。
私は慣れているから大丈夫だけど、嗅いだことないこの国の人には劇物だろう。
分かっていながら顔を出すなど……ミッシェルはマゾなのか?
悶えてるミッシェルを無視して私は鍋の中に酢と砂糖と水を入れて沸騰させる。
そこにさっき切ったニンニクと鷹の爪を入れてから、瓶をどどんと取り出す。
「……それ、なんっスか?」
「スペシャルな調味料その1」
「いや、違くて……具体的な中身っスよ!なんかグロテスクなんスけど!?」
「スペシャルな調味料その2を作るためのスペシャルな調味料その1」
具体的に答えてやらず、私は淡々と調味料をこさえていく。ちなみにスペシャル調味料その1は前にこさえていたナンプラーだ。
生の魚介類が手に入りにくいアズール国は魚の塩漬けというものがあるのだ。それを応用してナンプラー……いわゆる魚醤を作った、という訳だ。
それを加えてからひと煮立ち。仕上げに片栗粉でとろみを付ければなんちゃってスペシャル調味料の出来上がり。熱いうちに瓶に入れて保存用も出来た。スペシャルな調味料その2もとい、スイートチリソースの出来上がりだ!
ここから一気に行くよ!
鍋に鶏肉を入れて軽く焼き目をつけたらスペシャル調味料……ではなく、スイートチリソースと酒、醤油、みりんもどき、砂糖、水、そしてニンニクを入れてからひと煮立ちさせる。煮汁が少なくなってきたら肉に絡ませていけば……はい、もう完成。
煮詰める時に甘辛い匂いがするもんだから、ミッシェルがウキウキしていたし、出来上がる頃には丁度よく訓練を終えた騎士たちも集まってきた。
ニンニクのなんとも言えない食欲そそる匂いに騎士たちも大興奮。嗅いだことない匂いだけれどニンニクの匂いは男の人絶対好きだよ。
これにサラダとパンを付けたら今日の昼食は出来上がり。
「あの刺激物がこんないい匂いになるんだもんなあ……料理ってすげぇっス!」
「でしょ?……それにね、今日の昼食はひと味違うよ?」
ニヤリと笑う私に、待ってる騎士たちもそばで見ているミッシェルもハテナが浮かんでいる。
私はおもむろにパンを割り、ほぐした鶏肉、サラダを挟んでいく。そして挟んだ具に煮汁をかけ、仕上げにマヨネーズをぽとっ。なんちゃってバインミーの完成だ。
「はい、サンドイッチ……いや、バインミーをどうぞ、サラダの中のパクチーは好き嫌い分かれるから嫌いな人は残してね」
そう言って騎士たちにも配っていく。
やっぱりパクチーの反応は様々だったけどね。好きな人はとことんハマるパクチーは採れた分だけはけていった。
「う、うまっ! ケイさん、これめっちゃうめぇよ!特にこの薬草がアクセントになってて……薬草がたっぷりの方がうめぇ!」
ミッシェルもそのうちの1人だったみたいでパクチー山盛りにして食べてたよ。
私はその様子を見ながら満足した……んだけど、何か忘れてるような?
「……あー!!!!」
「うぉっ!? ど、どうしたんすか!?」
いきなりの大声にミッシェルがバインミーを頬張りつつ聞いてくる。ぎぎぎ、と首をミッシェルの方へと向ける私。
「……団長さん、畑に置き忘れて来たんだった……」
「!?」
ミッシェルが、ぽとっと頬張っていたバインミーを机に落とした。
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