久々の赤いきつね

ymahyper

12月第3週の土曜日のお昼ごはん

 今日は12月第3週の土曜日で、仕事は休みだ。

朝起き窓を開けると、眼前にはいつも通り辺り一面の銀世界が広がる。

雪がしんしんと降り注ぎ、路面を侵してゆくのが分かる。

僕はストーブを点け、朝ごはんのお茶漬けを食べながらある事を考える。

「お昼は何を食べよかな」

しかし週末という事もあって、家にはあまり物が無い。


 だが毎週土曜は、あのスーパーに行く事が決まっている。

そういえばボルシチを食べたいな、この季節はやっぱり鍋だな、風対策に柚子茶が欲しいな、なんて着替えながら考えていると、テレビから警報。

どうやら、ここいらに暴風雪警報が発令されたらしい。

しかし日曜も天気が悪いらしいので、やはり今日行く事に決めた。

僕はスノーブラシでマイカーから雪を下ろし終わると、例のスーパーへと向かった。


 僕は去年のこの時期に事故を起こした経験がある。

相手とは和解出来たが、これをきっかけにより慎重に運転する事にしている。

11月の中盤にはタイヤもワイパーも冬用にしている。

そんな事をいつもの様に考えながら運転して10数分たつと、いよいよスーパーの看板が見えてきた。


 さて、着いたぞ。

車から降り、自動ドアからエントリー。

籠を手に来週分の食料を買い漁っていると、ある物が目についた。

赤いきつねと緑のたぬきだ。

僕は両方共手に取り、籠に入れた。


 僕は会計を済ませ、車へと向かった。

車にはそれなりに雪が積もっていたので、またスノーブラシで雪を下ろした。

赤いきつねと緑のたぬきのどちらを今日食べるか、そんな事を考えている内に家に着いた。

腕時計を見ると、針は11時20分を指していた。


 手洗いうがいをした後軽く掃除をすると、もう昼を食べるには相応しい時間になっていた。

今日の昼をどちらにするかはまだ決まらない。

この二つは僕の好きなカップ麺ワンツーを飾っているが、食べるとなると割と久しぶりだ。

ええい、ままよ。

今日の昼は赤いきつねに決まった。

実は赤いきつねの方が1位なのだ。


 スープの素と電気ケトルで沸かしたお湯をかけながら、僕は昔を懐かしむ。

中学生の頃は赤いきつねとごはんを一緒にして食べていた事や、残り汁にご飯を投入した事等が思い出された。

しかし今は赤いきつね単品でいこう、等と思っていると赤いきつねが完成。


 「いただきます」

蓋を開けるとグッドなスープの香りが部屋中に広がる。

この香りを堪能しつつ七味唐辛子を油揚げに散布。

ツルツルと麺を味わい、ゴクリとスープを飲み、油揚げに食らいつく。

その繰り返しで赤いきつねの水かさが少しずつ減っていく。

それに反して、しっかりとした満腹感が腹を満たしていく。


 「ごちそうさまでした」

昼食は呆気なく終わった。

しかし、この満足感と充実感はそう味わえるものではない。

明日の昼食は緑のたぬきだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

久々の赤いきつね ymahyper @ymahyper

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ