第84話 ボードゲーム


 うるはが渋谷駅に着いたのは2時ぎりぎりだった。


 以前に来夢と新宿で待ち合わせしてふらふらしてた時に色々声をかけられたのがめんどうくさかったのでなるべく1人の時間は避けたかった。


 ハチ公前で時計を見ると1時55分


 たくさんの外国人観光客もいてかなりのにぎわいだ。



 少し待っていると来夢が現れた。


 来夢は黒系のスーツにこげ茶系の革靴、それと少し紫が入った濃い黒のロングコートだった。


 「待たせたかな?」


 「ううん!今来たところだよ」


 「高梨の今日の服装めっちゃかわいいじゃん!」白に統一されたうるはの服装をほめてくれる。


 「そうかな?そんなこと言ってくれるの神無月君だけだよ、それに神無月君のコートもおしゃれだし、高そう」


 「え?このコートかあ・・まあそれなりに高かったかなあ?」


 「さすが部長さんだね」


 「そう言ってくれると嬉しいよ、それはそうと買い物行こうか」


 「うん」



 来夢は左手を伸ばしてうるはの右手とつなごうとする。うるはは素直に握り返した。


 来夢にくっついて少し歩くと巨大な雑貨屋に着く。


 「パーティーゲーム買おうと思ってさ」


 来夢とうるはでボードゲーム置き場を見て回る。


 クイズゲーム


 カードゲーム


 逃げた泥棒を追いかけるゲーム


 推理ゲーム


 色々あるがなかなか決まらない。



 「あ!これは?」そう言って来夢が手に取ったのは数字と絵柄を使った簡単な麻雀のようなゲームだった。奥が深そうでいて見た目もかなりいい。


 「うん!それでいいと思うよ」


 お会計を済ませ渋谷駅方面へ向かう。


 田端にはKフライドチキンのお店がないので渋谷のお店に入ったがすごい混みようだ。


 夢奈には5時には着くと約束したが大丈夫なのだろうかとうるはは心配になる。


 来夢は事前に予約していたらしく番号を伝えると店員はすぐにテイクアウト用に袋に入ったチキンを渡してくれた。


 「すぐだったね!」


 「うん、夢奈のほうもピザ注文してると思う」


 「手際いいなあ、さすが神無月姉弟だ」


 手荷物も増えてしまったのでクリスマスで賑わっている渋谷から離脱することにして山手線に乗る。



 神無月家には夕方の4時を少し回った頃には着いた。


 「おかえり、と、いらっしゃいだね」夢奈が出迎える。


 夢奈は黒いニーハイのソックスにぎりぎりまで短い黒のショートパンツ、それと右肩が大きく開いている薄いベージュのセーターを着ていた。


 「お邪魔します」うるははそう言って靴を脱ぐ。


 うるはと夢奈は相変わらずお互いの戦闘力を確かめ合うように服装をチェックしている。見えない火花が散っているようでもあった。



 「はい、これ」そう言って来夢はチキンを夢奈に渡す。


 「ありがとー!やっぱりクリスマスはこれだよね!ピザもあと30分くらいで届くと思うよ」夢奈はアプリで宅配の動きをチェックしている。


 「一斗さんは多分5時には仕事終わると思うから6時過ぎにはこっちに着くんじゃないかな?」


 『はーい』うるはと夢奈の声が重なる。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る