第79話 ヴァーチャルな海へ
通話が終わった後ジーンズにパーカーとダウンジャケットといった格好に着替えてうるははスーパーに買い物に行く。
家を出るときに山ちゃんの家の方に大きく手を振る。
望遠モードで見ると山ちゃんは小さく手を振っているようだ。
スーパーまでは歩いて10分くらいの距離だが今日はずっと雨がぱらついている。うるははちょっと大きめの赤い傘をさす。
スーパーでサラダパスタとお茶とみかんを買って家に帰る。
帰り際にポストを見ると請求した専門学校の資料が届いていた。それをエコバックの中に放り込んで家の中に入る。
サラダパスタを食べながら資料をぺらぺらとめくる。
保育士さんかあ。
子ども
子ども
神無月君とか子ども欲しいのかな?
え・・やだ・・なんで神無月君・・・。
うるはは1人で顔を赤くしてパスタをすすった。
部屋に戻るとログイン情報を隠してゲームにログインする。
ハクが千鳥格子のコートで待っていてくれた。
うるは(うらら)の今日のアバターは以前に新宿で買った白のファーコートだ。
“どこに行くの?”
「ハクが選んで欲しいな」
“じゃあドライブに連れて行ってあげようか?”
「え?車あるの?」
“レンタカーだけど10000メム出してくれる?”
「いこいこ!!」
滝野川の家から少し歩いたところに置いてある車をメムで借りる手続きをする。
車の外見はヨーロッパのスポーツカーを意識しているようなデザインだった。
うるはが助手席に座るのをハクがエスコートしてくれる。
街や道路は現実世界と同じつくりだが交通量は圧倒的に少ない。
ハクの運転でみるみるうちに加速していく。
首都高に乗り横浜方面へ。順調に車を走らせる。
「ねえハク」
“ん?”
「大好き」
“ありがとう、僕も大好きだよ”
うるはは頭をハクの肩に重ねるように傾ける。
「海!」
“そうだね”
車から横浜の海が見え始める。
周囲もいつの間にかカップルが多い。プレイヤー同士のカップルは少数でほとんどがプレイヤーとAIのカップルだ。
TRUE LOVE 3 はDNA登録をすることでゲーム内で自分の遺伝子情報を反映させた子どもを作ることも可能だ。
うるははそこまではしようとは思っていないが。
公園には子どもを連れたカップルまでいる。
うるははカップルや子どもたちを助手席からぼーっと眺めていた。それだけで何時間でも飽きないような気がする。
1時間くらいした頃かハクがカラオケでも行こうかと言い始めた。
「いこいこ!」
車でカラオケ店まで行きメムを支払う。
ハクの歌はAIとは思えないほど人間のそれと変わらなかった。
一曲ごとに交代で歌う。
うるははJ-POPやボカロ曲、アニソンなどから好きな曲を入れていく。
途中リアルでトイレ休憩やお茶などを飲みながら3時間くらい
ハクとのバーチャルデートが終わった頃には夕方の6時になっており陸翔が帰ってきていた。
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