第75話 ドンドンドン!
父は出て行った後どうしていたのかなどとは聞かなかった。
まるで一斗が出ていったことなどなかったかのように自然に接している。
一斗も特に自分から家出のことを話はしなかった。
「部屋はあるのか?」
「ある」
「そうか」
短い会話だけが続く。
「これは渡しておく」そう言って和樹は家の鍵をテーブルに置く。
「あ、うん」一斗は鍵を受け取ってキーケースに収める。
「いつ泊ってもいいからな、その時は陸翔と同じ部屋だ、陸翔もいいな?」
「うん!!いいよパパ」
その後12時半くらいまで食事をして一斗は帰ることになった。
庭先に停めてあるスポーツカーに乗り込む。
「いつでも遊びに来いよ」
「うん」そう言うと電気自動車は音もなく走り去った。
一斗が帰ってからうるはは片付けを陸翔と一緒に手伝いその後自分の部屋に戻る。
そうだ、と思い出したのは来夢と話した保育士のことだった。
一斗が前向きに進んでいるように自分も努力したいと思った。
専門学校の資料請求をすると図書カードがもらえると書いてあったので何校か資料請求をしてみる。
その後来夢と夢奈にお兄ちゃんが無事に挨拶できたことを報告する。
“良かったね高梨、ところでクリスマスイブだけど2人で遊びに行かない?”来夢
うるはは相当に悩んだ。
“少し調整しないと分からないかも”うるは
“分かった、俺の方は他の予定は入れないから”来夢
“うん”うるは
神無月君
お兄ちゃん
夢奈
私
お兄ちゃんとは結婚できない、夢奈だって弟とは結婚できない。
そうしたらもう結論は出ているようなもの。
でもさ、多分私も夢奈も同じところで悩んでいて。
今日のお兄ちゃんかっこよかったなあ・・・。
もしお兄ちゃんに告白されたらどうしよう?
お兄ちゃんが告白してくれるなら・・・私。
お兄ちゃんが私に告白?ドンドンドン!事件ですようるはさん!
などと1人でツッコミを入れていた。
そう言えば神無月君はクリスマスイブと言っていたが夢奈はどうするつもりだろう?
もしかしてお兄ちゃんと2人??
確かめたい、けど、怖いような・・。
そうだ!結愛のところはどうなっているんだろ?
あ、でも今日は練習の日か、“元気?”とだけ打ち込んでおいた。
「うるは、涼葉ちゃんが来てるわよ」母親の声がする。
色々考えているうちにアポイントなしで涼葉が遊びに来たようだ。
「いらっしゃい」玄関まで出迎える。
「お邪魔じゃなかったかな?」
「ううん、まあ上がって」
うるはの部屋に2人で上がる。うるはは白のブラウスに黒のジーンズのままの恰好だ。
涼葉は制服を着ている。
涼葉の学校の制服はブレザーにネクタイでスカートかスラックスかは選べた。
涼葉はどっちも持っていて気分によってスカートにしたりスラックスにしたりしていた。今日はスカートだった。
「模擬試験受けてきたんだ」
「へー!涼葉は今回も良かったんじゃないの?」
「自己採点は悪くないけど、記述問題の点数は分からないかな」
「そっか」
「それより、その恰好どうしたの?」
「あ、うんお兄ちゃんが来てさ」
「え?一斗さんが?!!」
「うん」
「大丈夫だった?」
「うん、お父さんとうまく話してた」
「そっかあ良かったじゃん!」
「良かったよぉ」そう言って涼葉に抱き着く。
「よしよし」うるはの髪の毛をなでる涼葉。
「ねえ・・クリスマスイブ、神無月君に誘われたんだ・・・どうしよう?」
「来夢君に?良かったじゃん!行ってきなよ」
「でもさ、お兄ちゃんはどうするのかなって夢奈とか」
「その2人もデートしそうだよねえ」
「どうにかならないのかな?」
「うーん・・・4人で遊ぶとか?」
「4人かあ・・・」
「4人でいけないことしちゃだめよ?」
「え・・・」うるはは顔が真っ赤になっていた。
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