第74話 5人の食卓
12月21日日曜日
朝うるはが起きると一斗はまだ通話をつなげていてくれた。
「あ、おはよう、お兄ちゃん」
「おはよ」
「ずっとつなげていてくれたの?」
「ああ、おはようって言おうと思ってさ」
「お兄ちゃん、そんなに優しかったら女の子が離れていかないよ」
「そうかな?」
「うん」
「そろそろそっちに行く準備するから切るぞ」
「あ・・うん」
「ハク、今何時?」
“7時45分だようるは”
「ん、ありがと」
洗面所に行って顔を洗う。
1階から母親がご飯食べなさいと呼びかける声がする。
1階に下りると両親がそろっている。陸翔もご飯は済ませたみたいだ。
パンケーキとイチゴが出されたのでちょっと嬉しかった。
それでもこの後の一斗の挨拶を考えると少し重たかった。
ご飯を食べるとなんとなくテレビを見ている。
びっくりしたのはテレビCMだった。
【No GOD】の社名が大きく画面に映っていた。
「あ、これお兄ちゃんが就職したところ・・・」
「そうなのか?」和樹が手元のノートパソコンをいじりながらテレビを見る。
「うん・・・」
和樹は手元のノートパソコンで会社名を調べているようだ。
「不動産か・・・なるほど・・・」
9時前になると着替えるために一度部屋に戻る。
制服にしようかとも思ったが白いブラウスに黒のジーンズにした。
鏡の前に座り化粧を始める。
派手になりすぎないように・・と。
30分くらい時間が余ってしまったがゲームするにも中途半端なので曲を聴くことにした。
ハクにお願いして落ち着いた感じの洋楽を流してもらう。
ベッドに仰向けになって上を向く。
ゴーグルには南太平洋の海岸が流れている。
ハクは
「お兄ちゃん、お父さんと喧嘩しないかな?」
“大丈夫だよ、うるは”
「ほんと?」
“2人とも大人になっているんじゃないかな”
「そうだといいけれど・・・」
10時を少し過ぎたところで呼び鈴が押される。
こずえが玄関まで出て一斗を迎える。
一斗は黒のスーツにうるはがプレゼントしたシャツとネクタイで来てくれた。
「いらっしゃい一斗さん」こずえが明るい声で出迎える。
「お邪魔します」
「お兄ちゃん!」そう言って陸翔が一斗の足に絡みつく。
「おう、陸翔」頭をなでる。
リビングには和樹とうるはが待っていた。
「お久しぶりです」少しぎこちなく一斗が挨拶をする。
「ただいまだろ、一斗」
「ただいま」
そのやりとりを見ただけでうるはは涙があふれる。こずえもキッチンの方で涙を流している。
「ママ、とりあえず何か出してあげて」和樹がキッチンの方に声をかける。
昨日買ってきて置いた食材は先ほどまで調理しておりすぐにテーブルに並べられる。
メイン料理はパエリア
カップに入ったフライドチキン
小分けされた明太子パスタ
シーザーサラダ
イチゴ
パイナップル
バナナ
マンゴー
バニラアイス
ポテトチップス
板チョコ
ポップコーン
おにぎり
5人では絶対に食べきれない量だ。
5年間の空白を埋める家族5人の食卓だった。
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